乙仲(おつなか)って何?
それでは最初に乙仲の言葉の意味と、乙仲と言われるようになった由来、乙仲業者の業務内容などについて見ていきましょう。
乙仲とは「海貨業者」の略称
今現在使用されている「乙仲」という言葉の意味ですが、これは「乙仲=海貨業者(海運貨物取扱業者)」という意味です。海運貨物取扱業者は、文字通り海運貨物を港湾地区で取り扱う業者で、輸出入業者の代わりに貨物を輸送するための手続きや取引などの手続きを行っています。海運のみを扱っている業者で、航空貨物の取り扱いは行っていません。
乙仲といわれる由来とは?
そもそもなぜ乙仲という言葉が生まれたのでしょうか。実はこれは日本の法律が関係しています。戦前の「海運組合法」では、海運貨物の業者を2種類に分類していました。ひとつは定期的に運ばれる船貨物の取次を行う「乙仲(乙種仲立業)」、そしてもうひとつは不定期な船貨物の取次を行う「甲仲(甲種仲立業)」です。
1947年になって海運組合法が廃止されているので、2018年現在はこのような分類はされていません。しかし今までの名残で海貨業者のことを乙仲と呼んでいるのです。
海化業者の業務内容
2018年現在、海化貨物業者は、港湾での荷役業務(輸出入の荷物の船積・荷下ろし・国内での運送手配)のほかに、通関やはしけ運送、貨物の鑑定や貨物の種類や量を確認・証明する検量や、どのような内容の貨物をどのような状態でどれだけの数量を受け渡ししたのかを確認して証明する検数、倉庫業などといった貿易業務を広く行っている会社が多いです。
通関業なども行っている会社もある
乙仲は海運貨物の荷下ろしに関する業務がメインですが、コンテナ貨物が増加していることで、純粋に港湾内だけの業務だけを行っている会社は減っています。代わりに通関業や国際輸送なども請け負う「フォワーダー業務」を行う企業が増えていることから、「乙仲=フォワーダー」といっても通じることが多いのが現状です。
乙仲と通関業者との違い
乙仲は海貨業者のことを指す言葉ですが、一部の人は通関業者のことも乙仲といっていることがあります。しかし乙仲と通関業者とは業務内容が異なります。ここでは通関業者の業務内容などについてみてみましょう。
通関業者は「港湾運送事業法」ではなく「通関業法」で動く
通関業者は乙仲とは全く業務が異なります。通関業者とは輸出入を行うときに税務関連の代理手続きを行う業者のことです。乙仲業者は「港湾運送事業法」という法律にのっとり、港湾エリア内で陸地と船舶の間で行われる貨物のやり取りについての業務となります。それに対し通関業者は「通関法」という法律の規定で税関に関する業務を行います。
通関業者の業務内容
通関業者の具体的な業務内容ですが、「通関業法」に定められた基準にのっとり、輸出入を行う人や業者の代理人となって、税関に行わなければならない申告業務を行います。自分自身でこの申告を行うこともできるのですが、申告内容はとても複雑で、申告漏れを起こす可能性が高いため、ほとんどの場合は通関業者に料金を支払って申告の代行をお願いしているようです。企業によっては自社内に通関業に関する部署を作り、輸出入時に自社で申告していることもあります。
通関業者が行っている業務の具体的な内容
通関業者の主な業務内容は通関に関する申告の代理手続きがメインですが、これにはさまざまな内容が含まれます。輸出入貨物には関税や消費税のほかに荷物の検査などで納付期限を過ぎてしまった税金の支いに対して罰金として科せられる、「重加算税」などの申告のほかに税金の納付業務もあります。
さらに過払いしたときには関税の還付請求、申告内容が間違っていた場合には更正や修正申告といった作業も行わなければなりません。さらに関税が減額されたり免除される場合にはその手続きも行います。
行政処分に対しての不服申し立てなども行う
通関業者は税関官署が行った行政処分などに対し、依頼人に不服がある場合には財務大臣や税関官署に対して処分を不服とする主張や陳述・審査請求などの代理作業なども行います。
申請するのは税関官署だけではない
通関は税金関係だけだと思っている人も多いですが、実は輸出入する商品によっては厚生省や農林水産省への申請が必要なものもあります。通関業者はこのような場合も依頼人に代わって、必要な申請書類を用意し、申告手続きを行います。
輸入代行業者とは異なる
輸出入に関する業務を行うことから、「輸入代行業者」と同じだと思われがちですが、通関業者と輸入代行業者では大きな違いがあります。輸入代行業者は国などの許可の必要がなく誰でもなることができますが、通関業者は税関からきちんと許可を得た上で、通関業務の代行を行っています。
乙仲とフォワーダーとの違い
貨物業で乙仲と混同されがちな「フォワーダー」ですが、こちらも通関業者のように、乙仲との大きな違いがあります。フォワーダーとはどんな業種なのか、詳しく見てみましょう。
フォワーダーは貨物利用運送義事業のこと
「フォワーダー」は英語なので事業内容にピンとこない人がいるかもしれません。フォワーダーとは、日本語に訳すると「貨物利用運送事業者」のことです。乙仲と同じように貨物輸送に関する業務を行いますが、国際輸送を専門に取り扱う業者で、「貨物利用運送事業法」に定められている規制を受けます。
昔は運送の取次や海運の仲介、航空代理店などのことを言っていましたが、現在は船だけでなく、航空便や鉄道・自動車などさまざまな手法を用いて貨物を運んでいる業者のことを言います。乙仲は港湾内だけで、陸と船舶の間だけの取引ですが、フォワーダーは荷物の集荷・配達まで行う輸送サービスを提供しています。
フォワーダーは運送方法の得意分野がある
フォワーダーはさまざまな手法を用いて国際輸送を行いますが、実は航空輸送に強い業者と海上に強い業者に分けることができます。航空輸送に強い業者のことを「エア・フレイト・フォワーダー」、海上輸送に強い業者のことを「NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier」と言います。これは日本語に訳すと「非船舶運航業者」という意味で「NV」と省略されることもあります。
フォワーダーにはさまざまな種類がある
運送貨物取扱業者には、実はブローカーも含まれます。ブローカーは自分の名義で運送契約の取次ぎなどを行いますが、基本的に運送の契約当事者にならないので、荷主に対して運送人としての責任が発生しません。乙仲や専門の会社に属さない自由な仲介業とされています。
この他にも複数の荷主から小口貨物を請け負って、まとめて大口の貨物にして発送する「混載業者」、船舶や航空機にプラスして陸上の運送手段と運送契約を1本化した「国際複合一貫輸送業者」、航空機を所有し、陸上運送業者と航空運送業者の業務を統合してドアツードアの輸送を行う「インテグレーター」といった業種もフォワーダーと呼ばれています。
フォワーダーの業務には通関業や梱包・倉庫業がない
乙仲の業務内容には梱包や倉庫作業が含まれていますが、基本的にフォワーダーの業務内容にはこれらの業務が含まれていないとされています。しかし幅広い顧客のニーズに対応している規模の大きなフォワーダーの場合、梱包や倉庫業、さらに通関業まで事業内容に含んでいるところがあります。
フォワーダーは自分で運送手段を持っていない
フォワーダーの特徴のひとつとして、自身は船舶や飛行機、貨物列車やトラックといった輸送手段を持たずに、荷主と契約して貨物の輸送を行うというものがあります。自ら貨物を輸送する手段を持っている事業者は「キャリア」と呼ばれます。
乙仲は幅広い定義で使用されている
「乙仲」という言葉は戦前の「海運組合法」により定められた乙種仲立業の名残で海貨業者のことを言うことが多いです。しかし現代では、コンテナ貨物が増加していることや、業者が通関業や国際輸送まで手掛け、複数の事業を行っているため、フォワーダーなどの業種も乙仲と言われることが多いです。乙仲という定義は幅広く解釈されているので、相手によって使い分けるとよいでしょう。
制作:工場タイムズ編集部