シャンプーや化粧品、医薬品などの成分表示で、「シリコン」や「ノンシリコン」と書かれているのを目にしたことがある方も多いのでは? 私たちの身近にある多くの製品に利用されているシリコンは、現代の生活では欠かすことができません。最近ではデメリットがあることも分かってきました。
今回は、そんな「シリコン」の特徴や活用されているものだけでなく、最近多くの人に支持されるようになった「ノンシリコン」の重要性についてもご紹介します。
シリコンの特徴
まずは、「シリコン」の特徴について確認していきましょう。
シリコンとは元素記号「Si」で表され、日本名では「ケイ」素と呼ばれます。このシリコンを製品に利用する際には、ケイ素原子が酸素と結合してできた安定化合物の二酸化ケイ素から酸素をはがす形で単体のシリコンが作られ、その状態で製品に組み込まれます。
このシリコンは、実は土や岩石の中に多く含まれ、地球上では酸素の次に多い元素でもあります。しかし、そのままの状態では製品の製造に活用できないことから、純粋なシリコンにするためにこのような酸素をはがす作業が行われているのです。
人の手によって作られた純粋なシリコンは、1つのシリコン原子が4つの結合手によって周囲にある4つのシリコン原子と結合する構造となっています。このシリコンならではの構造は非常に安定していることから、精密機器をはじめとした高い安定性が求められる製品にもシリコンは利用されています。
スマホやPCに入っている半導体チップは、とりわけ高い安定性が求められる製品であり、ここにもシリコンが利用されています。このような半導体チップは、今やスマホやPCだけでなく冷蔵庫や洗濯機などの身近な家電にも広く利用されていることから、シリコン自体が私たちの生活には欠かせないものとなっています。
また、シリコンというと、シャンプーに利用されているというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。厳密にいうと、シャンプーに使われているのはシリコンではなく、シリコンをもとに作られる「シリコーン」です。このシリコーンは吸着性に優れ、髪をコーティングする働きがあるため、シャンプーにはよく使われているのです。
ちなみに、シリコンとシリコーンを混同される方も多いですが、シリコンはケイ素とも呼ばれる元素そのものであるのに対し、シリコーンはシリコンにメチルアルコールなどの有機化合物を結合させた特殊な化合物であるため、全くの別物となります。
また、シリコンがそのままの状態で利用されるケースは半導体チップ程度であるのに対し、シリコーンは用途が幅広く、さまざまな製品に利用されています。しかし、最近ではシリコンとシリコーンの区別をつけずにまとめて「シリコン」と呼ぶことも多く、同じものと考えるのが慣例化しているようです。
シリコン素材が活用されている物とは?
つづいて、シリコンが活用されている物をご紹介します。
スマホ
スマホに内蔵されている半導体チップは、シリコンが利用されている最も代表的な製品のひとつです。この半導体チップには高い性能だけでなく衝撃にも耐えられる耐久性も求められることから、その両方を兼ね備えたシリコンはまさにスマホになくてはならない素材といえるでしょう。
化粧品、医薬品
シリコンをもとに作られるシリコーンは、その構造を調整するとオイルのようになります。この状態になったシリコーンは、肌に塗ったときに伸びがよくてべたつきも少ないことから、化粧品に活用されることもあります。
また、シリコンをもとに作られるシリコーンの一種であるジメチコン(ジメチルポリシロキサン)は、人の体内にある消化器内に溜まったガスを処理する働きもあります。このことから、「ガスコン」のようなお腹に溜まったガスを体外に排出させる働きのある医薬品にも、シリコンは活用されています。
自動車部品
近年では自動車にも半導体チップをはじめとした精密機器が搭載されており、これらにもシリコンは活用されています。
また、シリコンから作られるシリコーンには、弾力性と耐久性を兼ね備えていることから、高い強度が求められる自動車にもシリコーンは広く活用されています。たとえば信越化学工業の信越シリコーンでは、シリコーンから製造したシリコーンゴム製の自動車部品の開発を行っており、今後はシリコーンが多くの箇所で活用された自動車が登場することも予想されます。
キッチン用品
シリコンをもとにして作られるシリコーンには、撥水性が高くて水回りでの利用にも適しているという性質があります。このことから、最近ではシリコーン製の柔らかいまな板や食器をはじめとした、キッチン用品への活用が多くなっています。
また、このようなシリコーン製のキッチン用品は、柔らかくて床に落としても割れたりしないという特性も。そのため、今後はこのようなシリコーン製のキッチン用品が、さらに増えていくことが予想できます。
ノンシリコンが支持される理由
簡単に入手できるにもかかわらず、耐久性や耐熱性が高く、半導体チップをはじめとした精密機器にも利用できるシリコンには、さまざまなメリットがあります。しかし、さまざまなデメリットもあることから、最近では分野によってノンシリコンへの支持が高まりつつあります。つづいては、ノンシリコンが支持される理由についてご紹介します。
環境負荷が大きいため
通常、下水道を通って下水処理施設に行きつく生活排水は、微生物によってそこに含まれている物質が分解・処理されています。しかし、生活排水の中に微生物の力では分解できない物質が含まれていると、それらを含んだまま処理された水は海や川へ排水されてしまうため、環境への負荷が高くなってしまうのです。
シリコンはこのような微生物の力では分解できない物質のひとつであることから、生活排水と一緒にして流してしまうと環境へ悪影響が及んでしまいます。このことから、最近では生活排水に含まれるシリコンによる環境への悪影響は環境問題のひとつとして考えられるようになっており、シャンプーなどにシリコンを使わない動きが活発になりつつあります。
シャンプーに含まれるシリコンには、デメリットも多いため
「ノンシリコン」と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、「シャンプー」という方は多いことでしょう。実際、最近ではシリコンが含まれていないシャンプーも数多く販売されています。
シャンプーに含まれるシリコンには、髪をコーティングしてダメージを軽減したり、水や汗を弾いたり、指通りを滑らかにするといった働きが期待できます。しかし、一方でシリコンの重みで髪がつぶれやすくなったり、肌に付着すると抜け毛や炎症を引き起こしたり、パーマやカラーリングの効果が薄れやすくなるといった点はデメリットもあるのです。
最近では、パーマやカラーリングを頻繁にしたり、頭皮や髪の健康状態を気にする人も多く、そのこともノンシリコンが支持される理由のひとつになっていると考えられるでしょう。
シリコンは幅広い用途のある素材
シリコンは、半導体から医薬品、そして身の回りの日用品にまで使われている素材として、現代社会を支えているといえます。シリコンがなければ、スマホもパーマも、もっと使いにくく不便なものだったのではないでしょうか。
地球上のどこでも手に入るシリコン素材は、安価でありながら使いやすい素材であったため、今やさまざまなシーンで活用されています。また、シリコンの欠点を補う形で、ノンシリコンという概念も登場してきました。これも、シリコンがあまりに重宝された結果といえます。
現代を支える素材としてのシリコンには、まだ可能性があるかもしれないと考えられています。
制作:工場タイムズ編集部