工場には大きな荷物を運ぶためのクレーンがあります。クレーンに関わる仕事は、運転する仕事以外もあるのは知っていましたか?
クレーンに荷物を掛けたり外したりする作業のことを「玉掛け作業」と言います。
今回は、安全な玉掛け作業をするための注意点を紹介します。
玉掛けには注意をしよう!
玉掛け作業にかかわらず、家事や勉強でもミスが起きやすいポイントを知っておくことは大切です。玉掛け作業のミスが起きやすいポイントをあらかじめ知り、実際の作業に役立てましょう。
事故はなぜ起きる?
クレーンによる事故はどんなものがあるでしょうか?また、そのような事故の原因は何でしょうか?
一つは、玉掛け作業に使う道具や備品の管理が正しくなされていなかった場合です。例えば、荷物を吊るすワイヤロープの保存状態は事故発生に影響します。保存状態が悪いとワイヤロープが腐敗・劣化し、吊荷を上げる途中で切れてしまう場合があります。
もう一つは、作業中の手順や方法が上手くいかなかった場合です。吊荷にワイヤロープを掛けるときに正しい巻き方でない場合、持ち上げる時点でロープがほどけてしまうと事故に繋がります。作業をする際には声掛けや手順の共有をしっかりとしておきましょう。
事故を起こさないために
知識や手順を学び、実行することができれば事故は防げます。そこでまず玉掛け関係の資格を取得することが大事です。玉掛技能講習や玉掛業務特別教育を受ければ、玉掛け用具や玉掛け方法などが理解できます。
資格を取得することに加え、実践的な知識やスキルも身に付けましょう。経験を積めば「これは危ないのではないか?」という予測が立ちやすくなります。できるだけ多くの現場を経験して、実践能力を身に付けることも事故を未然に防ぐための方法です。
安全に作業をするために
玉掛け用ワイヤロープのチェックをする
玉掛け用ワイヤロープが外れたり切れたりする原因の一つに、ワイヤロープが機械や道具に当たってすり減ることがあげられます。使用する前にワイヤロープに問題が起きていないかを確認しましょう。摩擦で溶けていたり、ねじれて痛んでいたら、たとえ些細な傷でも使用を控えることをオススメします。
ワイヤーと吊荷の間に当て物(麻の緩和材)をすると、ワイヤロープが長持ちします。保管するときは日光が当たるのを避け、高温・多湿にならない場所にします。また、粉のように細かいゴミなどが発生しロープが腐らないよう、場所の選び方と清掃方法に気を付けることが大切です。ロープの種類ごとに収納場所を決めて保管すると、作業とは別種類のロープ誤って使ってしまったなんて事態を防ぐことができます。
塩害対策をする
海中での作業や海岸で玉掛けを行う際には、塩水がかからないように対策をしましょう。塩害の発生しやすい場所ではメッキのワイヤロープを使います。アルミ合金系のワイヤロープは、塩分によってアルミ合金が溶け出して、フックの部分の力が下がってしまうからです。
台付け用ワイヤロープを使用しない
台付け用ワイヤロープは、吊荷を固定したりや荷物を締めるためのものです。荷物を吊り上げる用途で使用すると吊荷を傷つけてしまう恐れがあります。
安全係数は6以上に
安全係数とは、作業の安全度を数値にしたものです。「玉掛け用ワイヤロープや吊りチェーンがどれだけの荷重に耐えられるか」と「吊荷によって掛かる最大の重さ」から安全係数はわかります。安全係数を計算する表を用いて数値が6以上になるようにロープや積荷を調整することが大切です。
日常の保守点検
道具の劣化が原因となる事故を防ぐには、日常の保守点検が大切です。
玉掛け用ワイヤロープ
ワイヤロープの摩耗や変形、さび、腐食、緩みの確認をしましょう。折れやヨレのことをキンクと呼びますが、キンクの発生しているワイヤロープは使用を控えましょう。またワイヤロープを圧縮加工した合金が摩耗していないか、傷ができていないかもチェックします。変形や広がりがないかどうかを確認できたらワイヤロープの使用をすることが大切です。
玉掛け用吊チェーン
チェーンと接合部分のリングに分けて確認をします。どちらも亀裂や変形、ねじれが無いかを確認しましょう。
ベルトスリング
ベルトスリングとは吊荷とフックを繋ぐロープのような固定ベルトです。ベルトに損傷が発生していないか確認します。ベルト部はノギスと呼ばれる測定用具を使って、ベルトの1/10の幅、1/5の厚み以上の傷があれば使用は控えます。
フック
フックは口の開きやねじれが発生していないか、亀裂が無いかを目で確認します。
作業時の合図の確認
玉掛け作業を行う際は作業標準を作成します。作業標準とは玉掛作業の役割分担と担当者や合図の方法、また使用する道具をまとめた計画書です。この書類を従業員全員で確認することによってミスを防ぎます。
準備によって安全を
クレーン作業中の事故で多くの要因は、玉掛作業が関係します。しかしここで紹介したように、従業員が知識を身に付け、器具のチェックを怠らないようにするだけでも未然に防ぐことができます。できることはしっかり準備して、安全に作業できる環境を作りましょう。
制作:工場タイムズ編集部