私たちが生活していく上で、毎日出るのがごみです。そのごみを回収し、処理しているのが清掃工場です。清掃工場が安全に稼働できなければ、街中がごみであふれ返り、衛生的な生活が送れなくなってしまいます。
では、清掃工場では、どのような作業が行われているのでしょうか?今回は、世の中に欠かせない清掃工場について、その役割と仕事内容をご紹介します。
清掃工場ってどんなところ?
清掃工場では何が行われているのでしょうか?私たちの家庭から出るごみは「一般廃棄物」と呼ばれます。一般廃棄物はそのまま埋め立てられるのではなく、一度燃やしてから処理されます。つまり清掃工場とは、一般廃棄物を燃やして処理する工場なのです。清掃工場によっては、資源として再生可能なごみをリサイクルする施設、ごみを燃やしたあとの灰をガラス質の塊にする施設、生ごみを肥料にする施設などを持っているところがあります。
ごみを出さないように気を付けて生活している人たちも増えてきましたが、それでも私たちは1人あたり1日で約839グラムのごみを出しています。ちなみに、東京都では平成26年度に年間で約278万トンものごみが出されました。これは東京ドーム7.5杯分になる量です。これらのごみの中で資源や肥料として使える部分は使いながら、その他のごみは燃やし、環境にやさしい形に加工しているのが清掃工場です。最近では、温水プールのある施設の中に、ごみを燃やしたときに出る熱を使っているところがあります。
ごみはどんなふうに処理されているの?
ごみは「可燃ごみ」「不燃ごみ」「粗大ごみ」「資源ごみ」に分けられます。ごみの種類によって、処理する方法が変わります。
可燃ごみ
燃やすことができるごみのことで、主に紙類や生ごみを意味します。各家庭から出たごみを回収し、清掃工場へ集められたごみは、まず「バンカ」と呼ばれるところに一時的に貯められます。バンカに入れられたごみを専用のクレーンでかき混ぜ、均一にしてから焼却炉へ運びます。焼却炉に入れられたごみは800度以上の高温で燃やし、灰にします。燃やしたあとの灰や燃えかすなどは、専用の埋め立て地に埋められます。
最近ではごみを燃やす際に発生するエネルギーや残った灰を再利用するための工夫が進んでいます。ごみを燃やしたときに発生する熱を使って発電に利用すれば、電力や燃料費を削減することができます。また、ごみを燃やしたあとに残った灰も再利用できます。焼却後の灰をさらに1200度以上の高温で加熱することで、「スラグ」と呼ばれる人工砂ができます。このスラグは道路を舗装するときに使われるアスファルトや土木資材などに活用されています。
不燃ごみ
燃やすことができない不燃ごみは、一度不燃ごみ処理センターに集められます。不燃ごみ処理センターでは、不燃ごみを細かく砕いて、鉄やアルミニウムなど資源として使えるごみと埋め立てるごみに仕分けします。資源として利用できるものを取り除くことで、埋め立て処分する量を減らしています。
粗大ごみ
可燃では出せない家具や布団などの大きいもの、小さくても不燃では出せない家電製品のことです。定期的なごみの回収はなく、自治体への申し込みで出すことができます。清掃工場で可燃系と不燃系に分けられ、細かく破砕されたあとは可燃ごみ、不燃ごみと同じように処分されます。
資源ごみ
資源ごみはリサイクルで再利用できるペットボトルや缶、ビン、紙類などのごみです。メーカーで回収してくれる家電製品もあります。資源となるごみは、リサイクル工場で再び使える状態にしてから、新たな家電製品や再生紙などに加工されます。
清掃工場での仕事内容
清掃工場で行われている主な仕事について説明します。
運転係
可燃ごみを燃やす仕事をしているのが、運転係です。運転係は、バンカから焼却炉へ運ぶクレーンを操作したり、ごみが適切に燃えているかどうかを、別室のモニターで監視する仕事をしています。安全にごみを燃やせるように、工場内の設備や機器の点検、メンテナンスを行い、日々安全に工場を稼働させる役割を担っています。また、工場見学などを通して、地域の人と直接かかわり、清掃工場の業務を紹介する仕事も行います。清掃工場の最前線に立つ仕事ですから、やりがいとプライドを感じることができるでしょう。
技術係
環境にやさしい清掃工場であるためには、ごみを燃やしたときに出る有害物質を減らすことが大切です。この有害物質を減らす仕事をしているのが、技術係です。ごみを燃やしたあとの灰や工場から出される排ガスなどが有害な基準値になっていないかどうかを調べて、環境面や安全衛生面に対する配慮を行います。技術係は、実際に灰やガスを自分で分析することで、地域住民が安心して暮らせる街づくりに貢献しています。
整備係
大量のごみを燃やす清掃工場では、設備がいつでも安全に動くことが大切です。そこで活躍するのが整備係です。整備係は、工場の設備に故障があったときや補修が必要なときに、補修を請け負う業者と工事作業についての確認をする仕事です。設備に不具合が見つかったときは、原因を調査し補修を行います。また、年に1回、清掃工場にあるすべての設備の運転を止めて、「オーバーホール」と呼ばれる定期補修工事を行います。設備の細かい点検や補修を通して、安全にごみを燃やせるよう日々努めています。
一人ひとりが、ごみを減らす意識を
清掃工場がなければ、街中にごみがあふれて悪臭が漂い、病気が蔓延してしまうでしょう。それだけ清掃工場の役割は大きいのです。しかし、このままごみが増え続けたら、そのうち清掃工場では処理しきれなくなると言われています。そうなると、ごみ処理のために私たちが支払う税金は大きく増大するでしょうし、さらには動植物の生態系が破壊されてしまうおそれもあります。私たちがごみに対する認識を改め、ごみを減らしていくことが大切です。
制作:工場タイムズ編集部