ボイルやグリルして食べるハムやソーセージは、ふだんの食事からお弁当、軽食まで手軽に使えるおかずのひとつです。そんな簡単で、かつ美味しく食べられるハムやソーセージは、各メーカーがよりすぐった肉を用いて工場でつくられています。肉に合わせて利用されているスパイスや燻製(くんせい)方法も、各企業が独自に開発しているものばかり。一体どんなところで、どのように製造されているか気になりますよね。
そこで今回はハムとソーセージの歴史を紐解きつつ、工場見学を実施している工場を中心にご紹介していきます!
ハムとソーセージにはどんな種類があり、いつから食べられているの?
日本でもすっかりおなじみの食材であるハムとソーセージですが、かつては狩猟民族だった中東やヨーロッパなどで、はるか太古の時代から食べられていたようです。
ハムとソーセージの歴史
どこの誰が、いつ、どのように食べ始めたかはあまりはっきりとはしていません。しかし大まかには家畜として豚が飼われるようになった紀元前7000年以降だと言われています。
豚の飼育は世界各地で行われていましたが、特に中近東のバビロニアやエジプトをはじめ、アメリカ、イタリア、中国などで盛んでした。
当時は現代のようにバリエーション豊かな製法はなく、塩漬けや乾燥といったシンプルな作り方に、ローリエなどのハーブやコショウ、果物を混ぜておき、主に非常食として活用していました。
腸詰めの製法が広まったのは12~13世紀のヨーロッパ。キリスト教の十字軍が遠征地のイスラム諸国からスパイスや製法を持ち帰ったことで、やがてそれぞれの土地や風習に合わせた多種多様なハムやソーセージが誕生するきっかけになったのです。
日本で初めてハムがつくられたのは明治に入ってから。アメリカ人から製法を教わった長崎県民が、自家製のハムを明治天皇に献上したと伝えられています。さらにソーセージはハムより遅く、第一次世界大戦の後だといわれています。
ハムとソーセージの種類
こうして生まれたハムやソーセージは世界各地で独自に発展をとげ、たくさんの種類が存在するようになりました。
ドイツのソーセージ
1000以上ものハム・ソーセージがつくられているとされる肉食大国ドイツでは、おなじみのフランクフルトはもとより、燻製の生ハム「ウエストファリッシャー・ローシンケン」や豚の血液が入った「チューリンガーブラートブルスト」、茹でて食べるボイルハムの「ゲコホターシンケン」など、ボイル・グリル・生食ほか食べ方も数えきれないほど。
ソテーしたソーセージにケチャップとカレー粉をふりかけて食べるB級グルメ「カリーブルスト」が国民食であるように、ソーセージやハムはドイツ国民の生活に根ざしたソウルフードだと言えます。
イタリアのソーセージ
イタリア人もハム・ソーセージが大好きです。パルマ地方の特産品で日本でも親しまれているプロシュート(生ハム)のほか、サラミ、非加熱でつくられるソーセージ「サルシッチャ」、同じく非加熱のベーコン「パンチェッタ」、ほかには豚の膀胱に塩漬けした肉を詰め、1年ほど熟成させる「クラテッロ」といった手の込んだものもあります。
ハムとソーセージは工場で、どんなふうに作られているの?
次に、ハムとソーセージが食肉工場で、どのように製造されているかについてお答えします。日本では徹底した衛生管理のもと、クリーンな工場内でつくられています。
ハム
工場に入ることができるのは、衛生管理など厳格な規律を守るスタッフのみです。たとえば商品に髪の毛が入らないようにヘアネットなどをいくつも装着し、その上から帽子をかぶる念の入れよう。また爪は短く整え、唾液やウィルスが製品に入らないようにマスクも欠かしません。もちろん制服も汚れていない清潔なものを着用しています。ハムもソーセージも同様に、誰もが安心して美味しく食べられるよう、衛生面にはとことん注意をはらっています。
ハムの作り方
まず新鮮な豚肉を用意し、余分な脂やスジ、異物をより分けます。不要なものを除いた肉はマシンで細切れにし、スパイスなど各企業独自の味付けを施してミキサーで混ぜていきます。十分に味つけが肉全体に行き渡ったらフィルムに詰めていきます。
フィルムに詰められたハムは加熱し殺菌処理を行ったあと、冷却槽または冷却室で冷やし、検品で異物混入がないか、規定量になっているかをX線や目視で念入りにチェックします。やがて検品に合格したハムだけが全国に出荷されます。
ソーセージ
ソーセージの作り方
原料となる肉から不要なスジや小骨、毛、皮、余分な脂などを丁寧に取り除きます。同時に肉質が変色していないか、変な臭いがしないか、また表面が粘っていないかなどをチェックしつつ新鮮で良質な肉だけを使います。続いてマシンで肉を挽いたあと、香辛料や調味料などを加え、数日間低温で漬け込みを行い熟成させます。
熟成が進んだら羊や豚の腸、食物繊維のセルロースなどの皮に肉を詰めて均等に燻製室に吊るし、木片を使って燻(いぶ)します。その後に蒸気や湯で熱を通したら、細菌の増殖を防ぐために冷蔵室で10℃以下まで冷却。その後、微生物や異物の混入のないクリーンルームで包装後、金属探知機やX線検査機で異常がないかを確認して箱詰めし、発注があり次第出荷します。
ハム、ソーセージの工場見学に行きたい!
最後は、実際にハム、ソーセージがつくられる様子を見学できる工場をご紹介します。大人の社会科見学としても注目されているので、ぜひ足を運んでみてください!
日本ハム(茨城工場、静岡工場、小野工場)
日本ハムの看板商品「シャウエッセン」ができるまでを見学することができます。国内最大規模を誇る工場で、ウィンナーやハムがつくられる様子を見学窓からじっくり観覧しましょう。見学後はできたてのシャウエッセンの試食会!あわせてスタッフが見学者の質問に答えてくれます。申し込みは見学日の前々日17:00まで。見学無料。
【見学工場所在地】
日本ハムファクトリー株式会社茨城工場
〒308-0042 茨城県筑西市みどり町2-1-1
JR水戸線・関東鉄道常総線 下館駅南口下車、徒歩20分
TEL:0296-24-1295
http://www.nipponham.co.jp/fun/factory/ham_sausages.html
筑波ハム
すべての工程を手作りで行っている、日本国内でも数少ない工場の一つがこちら。原料豚肉のより分けや腸詰め作業など日によって見学できる内容が違うので、いつ訪れても楽しめるのが魅力です。窓越しに見ることのできるハム職人の鮮やかな包丁さばきは、見学者の注目の的です。見学は火曜日を除き、無料で1日3回実施(火曜日が祝日の場合は営業)。14名以下の少人数の場合は自由見学、15名以上の団体の場合に限り要予約、当日は試食付きの商品説明を設けています。
【見学工場所在地】
有限会社筑波ハム
〒305-0813 茨城県つくば市下平塚383
つくばエクスプレス「研究学園駅」下車、徒歩約25分
TEL:0120-298-860(フリーダイヤル)
http://www.tsukubaham.co.jp/about/observe.html
福留ハム
月・火・木・金の1日2回、無料で工場見学を実施しています。工場内ではウィンナーの製造ラインの見学のほか、DVD上映、質疑応答を行っています。土曜日はウィンナーづくりができる体験教室付きの工場見学の日。2名1組もしくは3名1組でウィンナーを手作りします(別途材料費として1000円必要)。完全予約制のため、希望日の2カ月前から1週間前までに電話での申し込みが必要です。
【見学工場所在地】
福留ハム株式会社広島工場
〒731-0213 広島県広島市安佐北区三入南1-7-20
JR可部線「可部駅」よりバス(広島交通、広電バス)「下町屋」で下車
TEL:082-278-1311
http://www.fukutome.com/taiken/
製造現場を見て、知って、美味しく食べよう
ハム、ソーセージは冷蔵庫のない時代の人々にとって、貴重なタンパク源としてもてはやされた加工食品でした。現代では、食卓に欠かせない食材の一つになっています。
味や品質の向上はもちろん、徹底した衛生管理のもと安心・安全な工場でつくられているハム、ソーセージ。保存がきいて、いつでもどこでも味わえる美味しさが生まれるハム、ソーセージの工場を、次はあなたの目で確かめに行きませんか?
制作:工場タイムズ編集部