畳は、古くから日本で利用されてきた伝統的な床材です。
自宅に和室がある人はもちろん、フローリングやコルクの床に住んでいる人でも、畳を一度も見たことのない日本人はほとんどいないのではないでしょうか?
畳の部屋に寝転がり、イグサの匂いをかぐと、心が休まるという人もいます。日本のライフスタイルの中で長年親しまれてきた畳ですが、一方で実際にどのように作られているかとなると、意外と知られていないものです。
今回は、畳の種類と作り方についてご紹介します。
畳の種類には何があるの?
まず、畳の種類について説明します。畳は大きく分けて3つの種類に分類することができます。
縁あり畳
畳の中で一番よく目にするタイプです。畳表(たたみおもて)、畳床(たたみどこ=芯になる部分)、畳縁(たたみべり)で作られています。素材・色・柄などそれぞれに種類があり、その組み合わせによって数十種類の縁あり畳が存在します。
縁なし畳
縁がないため、床に敷き詰めたときにすっきり、おしゃれに仕上がる点が人気です。機械で製造することが難しいため、畳職人が手作業で作ります。昔は縁あり畳を身分の高い人が使い、縁なし畳を庶民が使っていましたが、現在では技術的な難しさもあって、縁なし畳のほうが高級とされます。
床の間用畳
床の間に敷かれているゴザのことです。「龍髭表(りゅうびんおもて)」という畳表が使用されています。「龍髭表」は、最初から火に焼けた色をしているのが特徴です。
畳の歴史を知ろう!
次に、昔から現在に至るまでの畳の歴史を紹介します。日本文化の多くは、中国大陸から伝わってきたものがほとんどです。そんな中、畳は日本で誕生し、今日まで伝えられてきました。すでに飛鳥・奈良時代の「古事記」「日本書紀」に「畳」という文字を確認することができます。その畳が今なお使われているのですから、実に素晴らしいものだということがわかります。
畳の起源
四季折々、天候の変化が激しく、湿度が高い日本にとって、通気性に優れた畳はピッタリの床材でした。日本では弥生時代から稲作が行われていたと考えられています。その稲わらと、インドから伝わったイグサを利用して作られたのが畳です。現存する畳の中で最古のものと言われているのが、奈良・東大寺に保管されている「御床畳(ごしょうのたたみ)」で、奈良時代のものです。当時の畳は薄い敷物のようなものでした。それを何枚か重ねてベッドのようにしていたと見られています。畳とはそもそも「畳み」であり、もともとは畳める敷物や寝具だったという説があります。「御床畳」も聖武天皇の寝具として使用されていたと見られます。
畳利用の変遷
平安時代、「寝殿造」と呼ばれる貴族の邸宅がつくられ始めると、板敷きの間に椅子や寝具のように畳が置かれるようになりました。その後、鎌倉時代から室町時代になると、現在のように床いっぱいに畳が敷き詰められるようになります。さらに江戸時代に入ると、江戸城内の畳の管理や畳作りを担当する「畳奉行」という役職がつくられました。江戸後期には「畳職人」という職業が確立され、庶民の住まいに畳が進出しました。一般庶民に完全に普及したのは、明治時代のことです。
現在の畳
第二次大戦後から高度経済成長を経て、日本人も畳に座る生活から椅子に座る生活へと変わっていきました。その流れに合わせて、畳よりも値段が安く、洋風でおしゃれなイメージのあるフローリングの床が増えていきます。しかし、畳にはフローリングにはない温かみがあって落ち着くという人も多く、現在では畳の良さを見直す動きも出ています。なかには、部屋の一部にだけ畳を敷き、そこであぐらをかいたり正座をしながら、食事をしたり、お茶を飲むという人もいます。
畳はこうして作られている!
最後は、畳の作り方を紹介します。畳は畳表、畳床、畳縁という3つのパーツを組み合わせて作られています。
裁断
まずは、敷く部屋のサイズに合わせて畳表を切っていきます。畳はそれぞれ大きさが少しずつ違うので、どこに敷くのか、大きさは大丈夫かといった点を丁寧に確認しながら作業を進めます。
畳床を切る
次は畳床を切ります。畳床は畳表以上に細かく確認しながら切っていきます。ここでズレが生じると、デコボコして暮らしにくい家になってしまうので、慎重に作業します。
畳表の張り付け
畳床を切り終わったら、畳床に畳表をのせて、たるまないようにしっかりと張り付けます。その後、「カマチ」(縁が付いていない部分)と呼ばれる畳の端を縫います。
畳縁の縫い付け
カマチを縫い終えたら、あらかじめ測っておいた寸法になるよう畳表と畳床の幅を切って調整します。そこに畳縁を縫い付けたら出来上がりです。最後に乾いた布やタオルで拭き、再度寸法を測ってOKなら完成です。
日本で生まれた伝統文化、畳の再評価を
フローリング床の都会のマンションに住んでいる人でも、たまに畳の部屋に入ると、心が落ち着くという人がいます。1300年以上の歴史を持つ畳は、やはり日本人の精神性としっかり結びついているのかもしれません。最近では、畳の良さをあらためて見直す動きも見られます。今度、引っ越しや家のリフォームをする機会があれば、畳を取り入れてみるのも良いかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部