ものづくりの現場では各工程でさまざまな加工技術が活用されています。「金型加工」は、そのようなものづくりの現場では欠かせない高精度な加工技術のひとつであり、同じ商品の大量生産を広く行っている現代の製造現場において、金型加工はまさに欠かせない技術のひとつとなっています。
今回は、そんな金型加工の基礎知識や主な種類、また加工技術に対する高い需要の理由についてご紹介します。
金型加工の基礎知識
金型とは
そもそも金型加工で使用する「金型」とは、商品を製作するための金属製の型のことを指します。この型の内部に、溶かした金属やプラスチックの原料などを注ぎ固めると、型の形状どおりの製品が完成し、同じ製品の量産が可能となります。
例えばプリンが入っているプラスチック製の容器や、たい焼きを作る際に使用する鉄製の型などもこの金型加工の原理を応用したものであり、その技術は工場だけでなく身の回りにもあふれているといえます。
一方、この金型は形状によっては製品の製造ができなくなるという欠点があります。例えば、固めた製品を取り出す「口」の部分が狭くなっていると、完成した製品を取り出すことができません。そのため、金型を使用してものづくりをする際には金型の設計も入念に行わなければなりません。
金型で製造される主な製品
現在では同じ商品の大量生産がさまざまな分野で行われていることから、金型加工の技術が導入されている製造現場も数多く存在します。例えば自動車業界では、製品の見た目をよくするだけでなく、設計どおりの部品を作り、安全性を高めるという点でも金型加工の技術が欠かせなくなっています。
また、私たちの身近にある商品の中では「スマートフォン」も金型加工の技術を使用して製造されているもののひとつです。スマートフォンもまた、設計どおりに作る必要があるという点で金型加工技術の恩恵を受けていますが、加工時間を短くし、短期間で大量生産をする必要があるという点でも、この金型加工の技術が欠かせないのです。
例えば人気メーカーが生産するスマートフォンの場合、発売が発表されると同時に大量の予約が入るため、発売日までの短期間で多くの製品を製造しなければなりません。生産性を上げてこれに対応するという意味でも、大量生産に向いている金型加工の技術は、スマートフォンの製造に大いに向いているといえます。
一方、金型加工は金属だけでなく、プラスチックを材料とする製品の製造も可能です。例えばペットボトルは大量生産が前提となることから、その製造現場でも金型加工の技術が採用されています。
金型の設計方法
製品を大量に生産する際、その製品の性質や性能を左右しかねない金型の製作においては、細かな金型部品も含めて数ミリ単位での精巧な設計が行われなければなりません。そのために活用されることが多いのが「CAD/CAMシステム」です。
このCAD/CAMシステムとは、それぞれ「コンピュータ支援設計」と「コンピュータ支援製造」を意味するシステムのことで、入力されたデータをもとに金型の設計と製造を行えるようになっています。また、現在では3Dプリンターの元データとしてCAD/CAMで作成したデータを導入することもでき、製品の製造だけでなく、それに使用する金型の製造においても、技術の高度化が進んでいるのです。
金型加工の主な種類
金型を製造する際には、主に3つの技術が活用されます。
切削加工
金型の製造で最も活用されることが多いのが「切削加工」と呼ばれる加工方法です。この方法では、金型の元となる金属製の素材を少しずつ削っていき、徐々に設計どおりの形状へと近づけていきます。
使用されることの多い工具としては、「マシニングセンタ」と呼ばれる、入力したデータどおりに金属を自動で切削する機器が使用されることが多く、このような機能性の高い機器の登場によって金型加工はより簡単に行えるようになりました。
また、切削加工で使用される機器としては「NCフライス盤」「ジグ中ぐり盤」「旋盤」などもあり、金型の形状などに応じて最適なものが使用されるようになっています。
研削加工
金型加工の方法としては「研削加工」も広く応用されています。研削加工とは、高速で回転する研削砥石を対象物に当て、徐々に削りながら設計どおりの形状に近づけていく加工方法のことです。
この加工方法もまた切削加工と同様に精度が非常に高く、数ミリ単位での微調整ができるというメリットがあります。ただし研削加工では砥石と対象物が当たる点の温度が1,000度以上になるため、熱に弱い素材を削るのには向かないというデメリットがありますが、金型は金属を素材とすることから熱のデメリットの影響を受けにくいという魅力もあります。
放電加工
金型製作では「放電加工」という方法が用いられることもあります。この方法では、加工する金属製の素材に電極を近づけ、これらの間にアーク放電を行うことによって金型を作ります。
切削加工や研削加工に比べると、この放電加工はより細かなデザインの加工を施すことに向いており、精密さが求められる小さな部品の金型を作る際に適しています。また放電加工は金属の中でも特に硬いものの加工に向いているため、切削加工や研削加工では製作することのできない金型を作る際にもこの方法が用いられています。
金型加工の需要が高い理由
金型加工には主に以下の4つのメリットがあることから、製造業界では需要が高くなっています。
短納期で製造できる
新商品の発表から発売までの期間が短いスマートフォンのように、短期間で多くの商品を製造しなければならない分野でも金型加工は広く導入されています。これは、金型さえ作ってしまえばあとは原料を型に流し込み固めるという単純作業を繰り返すだけで量産が可能になるためです。
また金型を大量に製造すれば、その分さらに生産性の向上が見込めるという点も、金型加工が短納期で商品を製造しなければならない分野で活用されている理由として挙げられます。
均一な精度で製造しやすい
金型加工は形状が型と全く同じものを大量に生産できるという点でメリットがあります。精密機器や家電製品などの部品は、設計とのミリ単位のずれも許されない場合も少なくないため、このような均一の精度を伴った商品を製造できるという点も、金型加工への需要が高い理由といえるのです。
製造のコストを削減できる
例えば商品の加工を機械ではなく人の手で行った場合、生産効率は著しく下がるため、人件費がコストとして多くかかってしまいます。また、同じように人の手で商品の加工を行うと、作業ミスによるロスが生じることなどでもコストは高くついてしまうでしょう。
金型加工には、このように人の手で加工を行うことで発生するコストを削減できるというメリットもあり、生産した商品を効率的に利益へつなげることができます。
自動化では難しい加工もあり、熟練した技術が必要とされる
製造業界では高性能な機器を導入することによる作業の自動化が進められています。しかし、現状でこのような自動化を進めるための機器にも欠点はあり、すべてを機械に任せてしまうと製品に不具合が発生してしまうこともあるのです。
金型加工は精度の高さが魅力的である一方、人の手は微調整ができるというメリットもあり、作業者が熟練した技術を身に付ければ、機械には行えない難しい加工もできるようになるという魅力もあります。
金型加工は現代の製造業で欠かせない加工方法!
現代の製造業では、そのほとんどで大量生産が前提となっており、型さえ作ってしまえば精度の高い商品を効率的に作ることができる金型加工こそ、なくてはならない加工技術のひとつといえます。
その一方で、単に金型加工といっても使用する金型の加工方法には切削加工、研削加工、放電加工の3種類があり、それぞれで特長も異なることから、用途に合った加工方法を選ぶことも重要だといえそうです。
制作:工場タイムズ編集部