工場では、食品や金属、薬品や紙など、いろいろなモノが生産されたり加工されています。工場の中はどこも同じというわけではありません。製品や使用する機械によって、違った工夫が施されています。
今回は工場の床について焦点を当てます。工場の床には、どのような素材が使われていて、安全性や作業効率を上げるためにどのような工夫がされているのか?今回は、工場の床についてご紹介します。
工場の床にも工夫がある? 塗装の特徴
同じ工場でも生産するモノの種類によって、違う床材が使用されています。それぞれの工場の特徴と一緒に床材をご紹介します。
食品工場
食品工場では調理の際に火や熱湯を使用することが多いため、耐熱性や耐火性の高い塗料を塗装した床材が使用されています。また、衛生管理も大切なので、工場内を「汚染区域」と「非汚染区域」に区分して、それぞれのエリアで違った床材を使用しています。
印刷工場
印刷工場では、ポスターやカタログなどの印刷物がつくられています。工場内で粉塵が発生すると、それがインクに付着して、品質に悪影響を与えてしまいます。そのため印刷工場では防塵性の高い塗料を塗装した床材が使用されています。
製薬工場
製薬工場には何よりも清潔さが求められるため、抗菌や粉塵の発生を防止する床材が使用されています。また、製造過程によっては薬品が床に付いてしまう可能性があるため、耐薬品性や静電気の防止などの工夫がされています。
機械工場
機械の部品をつくったり、整備したりする工場では油や洗浄剤が頻繁に使われます。そのため、耐油性や耐薬品性の高い塗料を使った床材になっています。また、工場内ではフォークリフトが何度も通過したり、重量物の運搬が行われるので、衝撃に耐えられるように強度や硬度が工夫されています。
工場で使う床材の種類
工場の床は、耐久性を高めるために、コンクリートを塗装して保護しています。下地のコンクリートに、仕上げ材である塗料を直接塗装してある床材のことを「塗り床材」といいます。ここでは、塗り床材の種類について紹介します。塗り床材には「有機系」(合成樹脂系)と「無機系」の2種類があります。
有機系塗り床材
有機系塗り床材とは、コンクリートの上に合成樹脂を塗装した床材のことです。有機系塗り床材に使用する合成樹脂には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂などがあります。合成樹脂を使用した有機系の塗り床材の特徴は、衝撃に強く、耐薬品性も高いことです。この特性を活かし、クリーンルームや精密機械工場で多く使用されています。また、熱や寒さに対する強さや耐酸性もあるので、食品工場でも活躍しています。
無機系塗り床材
無機系の塗り床材は、耐火性に優れており、衝撃に強く、紫外線で変色しないといった特徴があります。そのため、大型車両が頻繁に移動する自動車製造工場や、火を扱うことが多い溶接工場などで使用されています。
ラインテープで効率化!
工場の床には、ラインテープがたくさん貼られています。ラインテープは、床を見やすくするだけでなく、体育館の床などにある仕切り線のように、色によって作業を区分するために使用している場合もあります。
工場におけるラインテープとは?
ラインテープとは、工場内の作業者に対して、作業の工程や使う機材などを色を使ってわかりやすく示すものです。工場内で使われている規格によって変わりますが、基本的にラインテープで使われる色は、JIS(日本工業規格)で決まっており、たとえば赤色は「防火、禁止、停止、高度の危険」を、緑色は「安全、避難、衛生、進行」を示しています。
ラインテープの床以外の使用例
ラインテープの使い方は工場によって少しずつ違います。たとえば、工場内で使われている資料を部門ごとに色分けすることによって、膨大な量のファイルの中からでも、必要な資料をすぐに探すことができるようになっています。よく使う工具や備品、部品などを色分けしておけば、どれをどの作業に使うのかをわかりやすくすることもできます。また、どの工具が、どこに、いくつ保管されているのかについても、ラインテープで示すことができます。色分けによって簡単に区別できるようになっているので、工場内での作業の安全性と効率アップに役立っています。
工場の床は作業効率と安全の両方に貢献している
普段、工場の床のことを意識することは少ないかもしれませんが、実は工場ごとにいろいろな工夫がされています。工場の床は、品質の良い製品を効率よく生産することに加え、作業員の安全を守るための役割を果たしているのです。皆さんも今後工場を見学する機会があれば、たくさんの工夫が詰まった床にも、ぜひ注目してください。工場の担当者に質問すると、いろいろ教えてくれるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部