「ガス」というと家庭用のコンロや給湯器を稼働させる際に使うLPガスなどをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、私たちの生活を陰で支えるガスは必ずしもこれらのタイプのものに限定されません。高い圧力を伴う「高圧ガス」は、工場で使われている機械や家庭用のエアコンでも活用されており、LPガスなどと同様に重要度の高いものとなっています。
一方で高圧ガスには取り扱い方法を誤ると重大な事故につながるというリスクがあるため、その取り扱いは有資格者でなければ行えないこととなっています。今回は、この高圧ガスの取り扱いにおいて必要な「高圧ガス製造保安責任者」の資格についてご紹介します。
高圧ガス製造保安責任者とは?
まずは、高圧ガス製造保安責任者の概要についてご紹介します。高圧ガスはさまざまな分野で活用がされており、その製造過程には高い圧力をかけて圧縮するという特殊な技法を含みます。このことによって高圧ガスは高い圧力を伴った特殊なガスに変わり、より幅広い分野で活用できるようになります。
また、特殊な性質を持った高圧ガスを安全に使うためには、そのための十分な知識と技術をつけなければなりません。それらを習得し、安全に取り扱いができることを証明する資格が高圧ガス製造保安責任者となります。よって高圧ガス製造保安責任者とは高い圧力で圧縮されたガスを扱う仕事を行える人と捉えると分かりやすいでしょう。
さらに、高圧ガスにはいくつかの種類があります。そのため、場所や目的によって使われる高圧ガスの種類は異なり、それら各々に応じた十分な知識・技術を身につけていることも高圧ガス製造保安責任者には求められます。
しかし、これらの種類の違いによって高圧ガスの取り扱い方は大きく異なるため、一種類の高圧ガス製造保安責任者の資格だけでは、安全に使いこなせません。このことから、高圧ガス製造保安責任者の資格は高圧ガスの種類によって資格の内容が細分化されており、例えば化学・機械分野に限定した高圧ガス製造保安責任者の有資格者は、冷凍機械分野の高圧ガスの取り扱いはできないこととなっています。そのため、高圧ガス製造保安責任者の資格取得を目指す場合は、自分が就職したい分野をはっきりとさせた上で、その分野に合った種類の高圧ガス製造保安責任者の資格試験を受けるようにしましょう。
高圧ガス製造保安責任者の種類
高圧ガス製造保安責任者の資格は、対応する分野に応じて細分化がされており、各々で行える仕事の種類は異なります。続いては、これらの違いを分野別にご紹介します。
化学・機械分野
化学・機械分野向けの高圧ガス製造保安責任者の有資格者は石油化学などのコンビナート高圧ガス製造事業所、ガススタンド、LPガスの製造事業所の保安業務を行えます。具体的には「甲種化学・甲種機械責任者」「乙種化学・乙種機械責任者」「丙種化学(特別試験科目)責任者」「丙種化学(液化石油ガス)責任者」の4種類がこれに当たります。甲種・乙種・丙種とはそれぞれのレベルを表しており、甲種が最も高く、丙種が最も低い扱いとなります。よって、甲種化学・甲種機械責任者の有資格者は行える仕事の範囲が広く、就職活動でも有利となります。
冷凍機械分野
冷凍機械分野には工場などにある大型の冷蔵庫・冷凍庫、あるいはエアコンの空調設備などがあります。この分野の高圧ガス製造保安責任者の有資格者は、これらの機械の稼働時に必要となる高圧ガスを取り扱えるようになります。具体的には「第一種冷凍機械責任者」「第二種冷凍機械責任者」「第三種冷凍機械責任者」の3種類の資格が存在し、第一種はこの分野のすべての高圧ガス製造施設の保安、第二種は1日の冷凍能力が300トン未満の高圧ガス製造施設の保安、第三種は1日の冷凍能力が100トン未満の高圧ガス製造施設の保安がそれぞれ行えます。
関連資格
高圧ガス製造保安責任者の資格には関連資格も存在します。その一例としては一般家庭で使う燃料ガスの製造から供給までに携われる「ガス主任技術者」、高圧ガスを取り扱う職場にて選任する必要があり、高圧ガス製造保安責任者であれば就任できる「特定高圧ガス取扱主任者」、一般家庭用をはじめとしたLPガス供給設備や消費設備の設置工事、および変更工事が行える「液化石油ガス設備士」などがあります。これらは保安ではなく設置工事や取り扱いに関する資格であるため、高圧ガス製造保安責任者の資格に比べると効力は少ないですが、高圧ガスを取り扱う仕事を行う上で無駄になることはないでしょう。
高圧ガス製造保安責任者になるには?
高圧ガス製造保安責任者の資格を取得するためには、国家試験である高圧ガス製造保安責任者試験に合格し、高圧ガス製造保安責任者免状の交付を受けなければならないことが高圧ガス保安法第29条によって決められています。また、高圧ガス製造保安責任者免状は作業内容に合ったものを取得しなければならず、自身の就職したい分野をはっきりとさせた上で受験する必要があります。
現時点で高圧ガス製造保安責任者試験は、経済産業大臣および各都道府県知事によって実施されており、高圧ガス製造保安責任者免状は各都道府県知事によって交付がされています。よって、試験に合格した後は交付を受けることも忘れないようにしましょう。
高圧ガス製造保安責任者の試験
続いて、高圧ガス製造保安責任者の試験の概要を項目別にご紹介します。
日程
高圧ガス製造保安責任者の試験は毎年11月の第二日曜日に全国で一斉実施されています。詳細な日程は、毎年高圧ガス保安協会のホームページなどで発表される公式な情報を確認してください。
場所
高圧ガス製造保安責任者の資格のうち「甲種化学責任者」「甲種機械責任者」「第一種冷凍機械責任者」の試験については経済産業大臣が実施権者となっているため、開催地は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、高松市、福岡市、宜野湾市のみとなっています。また、それ以外の資格は各都道府県が試験を行っており、開催地も各都道府県に存在します。最寄りの開催地に関しては高圧ガス保安協会の公式ウェブサイトを確認してください。
受験資格
高圧ガス製造保安責任者の試験には受験資格が設けられていません。そのため、年齢・学歴を問わず所定の手数料を支払えばだれでも受験できます。
申込方法
申し込みは電子申請と書面申請で受け付けています。このうち電子申請は高圧ガス保安協会のホームページ上から行えます。
また、書面申請は最寄りの試験事務所などで配布されている願書を入手後、必要事項を記入の上、最寄りの試験事務所へ郵送することとなります。ただし、願書の配布期間は7月上旬から9月上旬までに限られているため、忘れないようにしましょう。
手数料
手数料は受験する資格の種類によって異なり、5,500円~20,700円までとなっています。また、書面申請よりも電子申請のほうが500円~600円安くなります。
就職先の豊富な高圧ガスのプロフェッショナル
今回は、エアコンや冷凍庫などのさまざまな機器の稼働時に利用される高圧ガスを取り扱うことができる「高圧ガス製造保安責任者」の資格についてご紹介しました。
高圧ガス製造保安責任者の資格保有者は、高圧ガスのプロフェッショナルとして人気が高く、就職先の種類も豊富です。高圧ガスに関連する業界への就職を希望される方は資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部