「メッキ」と聞くと、「金メッキ」などのアクセサリー類を連想する人が多いかもしれません。
メッキには「金メッキ」のように見栄えをよくするだけでなく、錆(さび)止めや製品の機能自体を向上させる効果があります。
私たちの身の回りには、メッキの利点を活用した製品がたくさんあります。今回は、メッキ処理についてご紹介します。
メッキ処理って?
まず、メッキ処理とは何かについて説明します。
メッキ処理とは
メッキ処理とは、素材の表面を薄い金属の膜で覆う技術です。金属をはじめ、プラスチックやガラス、繊維など幅広い素材にメッキ処理を行うことができます。メッキの特徴は、素材と密着しやすく、素材の厚さを自由に変えられることです。また、メッキできる金属の種類が豊富で、大量生産できる点も大きな魅力です。
目的
なぜメッキ処理を行う必要があるのでしょうか?その理由は大きく三つあります。
装飾のため
美しい金属を表面につけて見た目を良くすることで、製品自体の価値を高めることができます。
防錆・防腐のため
金属にとって錆や腐食は禁物です。これを防ぐために素材の表面をメッキします。
機能性を高めるため
金属の中には、メッキをすることで、本来持たない性質を新たにつけ加えられるものがあります。
メッキ処理を利用している分野
私たちの身の回りでは、次のような分野でメッキ処理が行われています。
自動車外装
車のバンパーやドアノブ、ミラー、エンブレムなどの部品には、錆に強い亜鉛や傷のつきにくいクロムなどがメッキされています。
回路基板・電子部品
スマートフォンやゲーム機といった電子機器の内部にもメッキした部品が使われています。たとえば、スマホの基板の素材であるセラミックは電気を通しませんが、メッキをすることで電気を通すことができます。
食器、衣類
銅や銀、コバルトは抗菌性を持っています。そのため、ナイフやフォークなどの食器類にメッキすると細菌の繁殖を防ぐことができます。また、繊維のような細いものにもメッキ処理をすることは可能です。水虫の予防として、靴下の繊維に銅がメッキされていることがあります。
メッキ処理の工程を知る!
メッキの仕方には、大きく分けて「乾式メッキ」と「湿式メッキ」の2つがあります。「乾式メッキ」は、真空の状態で行います。一方「湿式メッキ」は、メッキ液に素材を入れることで表面をコーティングします。一般にメッキと言われるのは、こちらの「湿式メッキ」を指します。
では、湿式メッキの代表的な作業工程について説明します。
治具(じぐ)止め
まずは治具(工作物を固定する道具)に、素材を取りつけます。メッキの仕上がりに影響するため、注意して設置します。
研磨・洗浄
メッキ処理の大部分は、汚れを取る研磨・洗浄作業です。
脱脂(油分除去)
金属の素材には、錆を防ぎ加工しやすくするために油脂がつけられています。油脂をそのままにしておくと、うまくメッキできないので、アルカリ系の液につけて取り除きます。
水洗い
脱脂のために使った薬液をきれいに洗い落とします。脱脂がしっかりできているかのチェックもこの工程で行います。
錆、スケールの除去
残りの錆やスケール(酸化鉄)を塩酸や硫酸などで除去します。それでも取り除けないものは、多量の水素ガスを使って取り除きます。
酸活性
金属の表面をわずかに溶かして、不純物のない金属表面にします。これにより素材の表面にメッキがつきやすくなります。
メッキ加工
汚れのないきれいな状態になったら、メッキ液に製品を入れます。
乾燥
メッキが終わったら、シミの発生や外観の変化を抑えるために、エアーブロー(空気を勢いよく出す装置)などを使って乾燥させます。
メッキ処理の仕事内容は?
メッキ処理の仕事内容は、大きく4つに分かれています。
研磨工程
研磨剤を使って金属をなめらかに削り、規定の寸法に仕上げます。研磨の良しあしが、メッキの光沢など仕上がりや質感に大きく影響します。
メッキ工程
治具にかけられた素材を、酸やアルカリ、メッキ液などの入った容器に何度も出し入れする作業を行います。昔はすべてを手作業で行っていましたが、現在は一部もしくは全工程が自動化されています。
メッキ液の分析
メッキ液の成分の分析や温度の調節をすることによって、メッキした製品の品質に問題がないかを管理します。
製品の検査
目で直接確認を行ったり、測定機器を使って製品の品質を検査します。品質のチェックには、メッキの密着具合のテストや、メッキした膜の厚さの測定などがあります。
変幻自在なメッキの魅力
身の回りにメッキ製品はたくさんあります。アクセサリーから文房具、腕時計、トタン、ブリキ、さらにはお寺の仏像に至るまで種類が豊富です。いろいろな素材にコーティングを行うことで、形状や性質を違うものに変えることができます。そんな変幻自在さがメッキの魅力です。自分の周りでどんなメッキ製品があるか、一度探してみると、意外なものが見つかるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部