日本のプレス加工の技術は、世界でも最先端と評価されています。
たとえば、自動車のドアやボンネット、さらにはパソコンに内蔵された部品まで、プレス加工の技術は幅広く利用されています。
またプレス加工に関係する資格には「プレス機械作業主任者」や「金属プレス加工技能士」などが存在します。
それぞれどんな資格で、どうすれば取得できるのでしょうか?また、資格を持っていることで、どんなメリットがあるのでしょうか?今回は、プレス加工の資格についてご紹介します。
プレス加工ってそもそも何だっけ?どんな資格があるの?
プレス加工とは、金属などの材料を寸法にしたがって変形させ、その形を維持させる技術です。通常は、完成製品の形をした金属の型(金型)に素材をセットし、上下から圧力をかけて金型の形に成形します。プレス加工によって自動車の本体などの大きなものから電子機器の部品などの小さなパーツまで、金型に合わせていろいろなものがつくれます。
また金型をつくっておけば同じ形、同じ質の製品を大量に生産できるので、工場から出荷される製品の品質を均一に保つことができます。
プレス加工は日本の収入を支える重要な産業として、とても大切な役割を果たしています。プレス加工には豊富な種類があり、それぞれに国家資格、「プレス機械作業主任者」や「金属プレス加工技能士」「工場板金技能士」「鍛造技能士」などといった検定が設けられています。
プレス機械作業主任者とは?
プレス機械を使った作業に5年以上携わった人は、「プレス機械作業主任者技能講習」を受けることができます。受講後、事業者からプレス機械作業主任者に選ばれると、プレス加工作業の際の安全管理を任される立場になります。
法律上、動力で動くプレス機械を5台以上持っている事業所は、プレス機械作業主任者を配置するよう決まっています。そのため、この資格を持っている人は給与や昇給、昇格面で優遇されることがしばしばあります。
講習は各都道府県の労働基準協会が実施しています。受講を希望する人は、お住まいの都道府県の協会に問い合わせをして、申し込みをしてください。講習の内容は、プレス機械と安全装置の種類や構造、プレス機械の保守点検に関する知識、関係法令などです。
講習の最後に修了試験がありますが、市販のテキストをよく読んで、まじめに講習を受けておけば大丈夫です。責任ある立場を目指したい人は、ぜひ取得しておきましょう。
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技術を身に付けるなら金属プレス加工技能士・工場板金技能士がお勧め
プレス加工に関するしっかりした技術を身に付けたい人には「金属プレス加工技能士」や「工場板金技能士」という資格がオススメです。
「金属プレス加工技能士」は特級から1級、2級まで、「工場板金技能士」は特級から1級、2級、3級に分かれていて、それぞれ実務の経験や技術レベルに合わせて取得できます。初心者や未経験の人には「工場板金技能士」の3級がオススメです。また、どちらの資格においても特級は、工場長やリーダーなどの運営者を目指す人向けの等級です。1級は、実務の経験が7年以上あるいは3級合格後4年以上の実務経験があれば受験可能。2級は実務の経験が2年以上あるいは3級を合格すれば受験することができます。
試験の申し込みは、中央職業能力開発協会で受け付けています。試験回数は年に2回。学科と実技の二部構成です。「金属プレス加工技能士」の試験内容は、1、2級の学科試験が加工法や材料に関する知識。特級は工程管理や品質管理、原価管理などの知識が問われます。実技試験は1、2級が金属プレス作業そのものについて。特級は作業指導や安全衛生指導などがチェックされます。
一方、「工場板金技能士」については、1級、2級、3級の学科試験が工場で行われる板金加工方法、全般に関するものや材料についての知識。特級は工程管理や設備管理、品質管理などが出題されます。実技試験は1級、2級、3級が「曲げ板金作業」や「機械板金作業」。特級は工程管理や設備管理、作業指導などの内容になっています。
学科試験対策は、専用のテキストを繰り返し学習することです。実技試験については、その資格を取得している上司や先輩の指導を受けながら実際に現場で実践し、作業に慣れるのがいいでしょう。
プレス加工をやりたい人に役立つ資格情報・まとめ
プレス加工をやりたい人に役立つ資格について、くわしくご紹介します。
金属プレス加工技能士
金属プレス加工技能士の試験は、それほど難しくはありません。合格基準は、学科で100点満点中65点、実技で100点満点中60点です。費用は、都道府県によって異なります。
区分 | 受験資格 | 試験内容 | 実施日程 | 費用 |
2級 | ・実務経験2年以上もしくは3級合格者 ※学歴により異なる |
学科試験 ・金属プレス加工法 ・材料 ・材料試験 ・材料力学 ・機械工作法 ・油圧および空気圧 ・製図 ・電気 ・安全衛生 実技試験 ・金属プレス作業 |
年に2回 | 21,300円(学科3,100円/実技18,200円) |
1級 | ・7年以上の実務経験 ・2級合格後2年以上 |
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特級 | ・1級合格後5年以上の実務経験 | 学科試験 ・工程管理 ・作業管理 ・品質管理 ・原価管理 ・安全衛生管理および環境の保全 ・作業指導 ・設備管理 ・金属プレス加工に関する現場技術 実技試験 ・工程管理 ・作業管理 ・品質管理 ・原価管理 ・安全衛生管理 ・作業指導 ・設備管理 |
工場板金技能士
工場板金技能士の試験も、学科と実技があります。学科は、中央職業能力開発協会のサイトで公開されている過去問を解いておくとよいでしょう。工場板金技能士の費用も、都道府県によって異なるので、申し込みをする際に確認しましょう。
区分 | 受験資格 | 試験内容 | 実施日程 | 費用 |
3級 | 不問 | 学科試験 ・工場板金加工法一般 ・機械工作法 ・材料 ・製図 ・電気 ・安全衛生 ・選択科目 ・曲げ板金加工法 ・打出し板金加工法 ・機械板金加工法 実技試験 ・選択科目 ・曲げ板金作業 ・打出し板金作業 ・機械板金作業 |
年に2回 | 21,300円(学科3,100円/実技18,200円) |
2級 | ・実務経験2年以上、または3級合格者 ※学歴によりなる |
学科試験 ・工場板金加工法一般 ・機械工作法 ・材料 ・材料力学 ・製図 ・電気 ・安全衛生 ・選択科目 ・曲げ板金加工法 ・打出し板金加工法 ・数値制御タレットパンチプレス板金加工法 実技試験 ・選択科目 ・曲げ板金作業 ・打出し板金作業 ・機械板金作業 ・数値制御タレットパンチプレス板金作業 |
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1級 | ・7年以上の実務経験 ・2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験 ※学歴により異なる |
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特級 | ・1級合格後、5年以上の実務経験 | 学科試験 ・工程管理 ・作業管理 ・品質管理 ・原価管理 ・安全衛生管理および環境の保全 ・作業指導 ・設備管理 ・工場板金に関する現場技術 実技試験 ・工程管理 ・作業管理 ・品質管理 ・原価管理 ・安全衛生管理 ・作業指導 ・設備管理 |
プレス機械作業主任者
プレス機械作業主任者の資格は、2日間の講習を受ければ取得できます。
受験資格 | 取得日数 | 実施日程 | 費用 |
・プレス機械による作業に5年以上の従事経験 ・厚生労働大臣が定める者 | 2日間(16時間) | 年に1回 | 13,640円(テキスト代1,540円含む) |
プレス加工の仕事に向いている人
プレス加工の仕事に向いている人の特徴をご紹介します。
集中力がある人
プレス加工の仕事に向いている人は、集中力がある人です。プレス加工は、マニュアル通りに機械を操作して作業を行いますが、比較的単調な作業です。万が一、操作ミスをしてしまうと、命に関わる怪我をしてしまう恐れもあります。
また、手触りや目視で異常を感じ取ることも必要になります。そのため、集中力を長く持続できる人や、1人で黙々と集中して作業できる人が、プレス加工の仕事に向いているといえるのです。
忍耐力がある人
プレス加工の仕事で「きつい」といわれるのは、同じ作業を繰り返す単調な仕事だからです。そのため、忍耐力がある人はプレス加工の仕事に向いています。プレス加工の仕事では、細かい作業が必要な場合もあるため、細かい作業が好きな人や飽きずに行える人も最適です。
基本的に、行う作業はマニュアル化されているので、マニュアル通りに行う正確性も必要です。
ものづくりが好きな人
プレス加工の仕事に向いている人の特徴として、ものづくりが好きな人が挙げられます。実は、日本のプレス加工の技術は、世界でもトップクラスだといわれています。そして、プレス加工は、自動車や日用品など、さまざまな製品の製造に必要な作業です。
プレス加工の仕事に就くことで、世界で認められている技術に触れ、ものづくりの楽しさや達成感を得られます。そのため、ものづくりが好きな人にとっては最適な仕事といえるのです。
機械を使った作業に興味がある人
プレス加工は、主に機械を操作する仕事なので、機械を使った作業に興味がある人にも最適な仕事です。また、仕事をしながら、機械に関する専門知識も学べるというメリットもあります。プレス加工の機械は、私生活で扱うことがないほど大きなものなので、大きい機械を扱ってみたいという人にも向いています。
工場で歓迎されるプレス加工の資格
日本の多くの製品をつくる工程に欠かせないプレス加工の技術。現場で経験を積むのに合わせて資格取得の勉強をすると、技術と知識の両方が身に付きます。
資格を持っている人は、プレス加工が関係する多くの分野の工場で歓迎されます。また、資格は等級が分かれているので、経験と知識に合わせてステップアップでき、仕事に対するモチベーションを上げることにもつながるでしょう。職場に資格を持っている人がいたら、どんな勉強をしたのか、資格があることで実際にどんなメリットがあるのか聞いてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部