「自動車が趣味」という男性は多いのではないでしょうか。
自動車を動かすモーターやエンジンをつくるには「鋳造」という技術が使われています。鋳造の技術力が下がると、日本の製造業に影響する可能性があると言われるほど重要な役割を担う技術です。
そんな鋳造の現場ではどのような作業を行っているのでしょうか。鋳造の基本的なお仕事をご紹介します。
鋳造って、なに?
鋳造とは、加工技術の一つです。簡単に言うと、溶解した金属を型に流し込んで冷却することによって製品をつくることです。
溶解した金属を注入する型を鋳型と呼び、砂や金属でつくられ高熱にも耐えることができます。鋳造によってつくられた製品を鋳物(いもの)と呼びます。複雑な形のモノでも1回の流し込みで製造できるのが特徴です。金属材料の中では鉄を主成分とする合金が、この方法による加工に向いています。
鋳造工法は、どんなモノをどれだけつくるかによって最適な鋳造工法は変わってきます。大きく分けて鋳型の素材で区別することができます。
砂型を利用する場合
金属を鋳造するごとに型を壊します。そのため、形状自由度が高く、また型が砂でできているためコストが安いメリットあります。ただし、金属を鋳造するたびに型を壊すので、同じ形状のモノをたくさんつくるには不向きです。
金型を利用する場合
型を何度も使えるメリットはありますが、形状自由度が低いことと金型そのもののコストが高いという欠点があります。
また、高い精度を要求される小型の鋳物に利用される方法を精密鋳造法と呼び、ロストワックス法とシェルモールド法の二つがあります。自動車のエンジンや、飛行機など、寸法に精密に沿った部品が必要なときに用いられます。
ロストワックス法
溶かしたろう(ワックス)を金型に流し込んで固めて製品の模型をつくり、それを利用して鋳物をつくる方法です。
シェルモールド法
貝殻のような二つに分かれた鋳型から製品をつくる手法です。砂型と比べて、寸法の精度が高い製品をつくることができます。また、金型よりも鋳型をつくるのが簡単というメリットを持ちます。
以上のような技術を使って仕事をしている人を鋳造工と呼びます。鋳物は、お寺にあるような鐘そのものから、自動車のエンジンの小さな部品まで、たくさんの種類の製品があります。このように鋳造工のお仕事は幅広いと言えます。
鋳造の仕事って、なにするの?
鋳造工のお仕事は大きく分けて四つの段階に分けることができます。
鋳込み作業
溶解炉で溶かした金属を型に注ぎいれる作業です。溶けた金属が入った大きい器をクレーンなど吊り上たり、柄杓(ひしゃく)のようなモノですくいあげて、型に流します。溶けた金属は非常に高温で、鋳鉄で1300度以上、アルミで700度ほどです。熱さは感じますが、作業員は作業着や防護具も耐火性のあるモノが用意されるので安全です。
型枠外し作業
溶けた金属を型に入れた後、砂の中から固まった製品を取り出す作業です。
混練装置のオペレーター
鋳物用の砂を練って混ぜる装置を扱う仕事です。装置に材料を投入したり、正常に機械が動いているか確認する役割を担います。未経験や初心者の人でも従事することができます。
鋳造はこんな人に向いている
鋳造は経験を積み重ね、精密な製品をつくりあげていくことが魅力です。そんな鋳造工に向いている人はどんな人なのでしょうか。
職人気質な人
型に使う砂の種類や設計、材料の配合度、熱処理、気温、湿度など、たくさんの要因によって製品の仕上がりが変わります。その変化に対応し、思い通りの製品を生産するために、経験から学ぶことが大切です。まずは基本的な技術の感覚をつかむことから始めることで、最終的には「自分がいなければいいモノがつくれない」という存在まで目指すことができるでしょう。このように、腕を磨くことにやりがい感じる職人肌の人に向いています。
周りへの配慮が得意な人
周りの変化に良く気が付く人は、鋳造工に向いています。工場内や扱う金属が高温になるので安全管理が大切なため、周りを良く見ている人は従業員の安全に気を付けることができます。また、一人で行う作業だけではなく他部門との連携も必要なので、同僚への気配りができると効率よく作業することができます。
迫力ある火花を見てみて!
鋳造工は、日本の「モノづくり」産業に製品や部品を供給する、重要な役割を担う仕事です。日常生活で良く見る製品の部品あたるので、直観的には想像しにくいかもしれません。実際に見てみたくなった人は、鋳造を行っている工場見学などのツアーに参加するのはいかがでしょうか。インターネットの動画サイトなどでも、高温のどろどろになった金属が火花を散らしながら流れていく迫力のある映像を見ることができます。
制作:工場タイムズ編集部