専門性の強い職業は将来的にも仕事に困る可能性が少なく、一般的にも「手に職」をもっていた方がいいといわれています。そのなかでも「塗装工」は注目されている専門職のひとつ。そこで今回は、仕上げの美しさとともに建物を守る役割を果たす塗装工の仕事内容や年収、さらに塗装工という仕事のやりがいや必要な資格、採用のための面接でのポイントなどをご紹介します。
塗装工とは
塗装工とは、ペンキなどの塗料を使って、住宅や建物、道路、自動車、家具などに塗装をする専門職です。塗装工といっても、塗装する対象によって呼ばれ方も変わりますので、ここでは主な塗装工の種類と役割を紹介します。
塗装工の種類
多くの人が描いている塗装工のイメージは、新築住宅や建物の塗装作業をする「建築塗装工」ではないでしょうか。建築塗装工は個人事業主の場合もあれば、塗装工務店を経営している人もいます。また建築関係の企業や住宅メーカーに勤務している塗装工もいますし、建築関係の企業や住宅メーカーからの下請けとして出入りしている塗装工も少なくありません。
他には自動車やバイクなどの塗装を行う「板金塗装工」という職業があります。車のボディや部品の塗装を行い、塗装の前に劣化したボディや部品の修復、メンテナンスを行う場合もあります。車やバイクの知識に加え、金属の知識や板金の技術などが必要となり、車やバイクのメーカー、販売店、修理工場などに勤務し、のちに独立することも可能です。
塗装工の役割
見た目の美しさが肝心というのが塗装のイメージではありますが、しっかりと防水をして錆を防ぐ、熱を遮断することで建物の耐久度を上げるということも塗装の大切な役目です。
見た目以上に専門性が問われますし、丁寧な仕事が評価される世界です。高評価を受けることによってさらに塗装に対してのモチベーションをあげることができる、非常にやりがいのある仕事といってよいでしょう。
塗装工はその専門性の高さから必要不可欠な存在であり、近年は建築関係の仕事での需要が拡大している傾向があります。家屋に限定すると、新築工事での塗装の仕事はもちろんのこと、リフォームやリノベーションの仕事も定期的に入りやすいです。
法人経営にしても個人事業や下請けにしても、営業活動をしっかりと行うことによって安定した収入を得ることができます。
塗装工の年収
塗装工をしている人の男女比率ですが、9割方が男性となっています。ここでは男性塗装工の平均賃金をご紹介しましょう。
月収:27万6600円
賞与:67万7000円
推定年収:399万6200円
【出典】「平成29年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
資料:「職種・性、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_e.html
塗装工労働者数の最も多い企業規模(10人以上)の事業所のデータを取り上げてみました。これが1,000人以上の企業規模となると、月収32万300円、賞与135万4,200円となり、年収519万円7,800円になります。事業所の規模にかかわらず、塗装工の収入はほかの工務関係の業種の中でも高収入の部類だといえそうです。
「塗料で汚れる」「屋外の現場が大変そう」といったイメージをもたれている方もいるかもしれません。しかし丁寧に行った作業はきちんと評価されますし、仕事に見合った収入を得ることができると高いモチベーションを維持することができます。この仕事に向いている人にとっては、この上ない天職となりうる職種といっていいでしょう。
塗装工の仕事のやりがい
工務関連の業種のなかでも収入の高さが塗装工のメリットといえます。とはいえ専門職であることから、収入もさながら「やりがい」の面で仕事に対するモチベーションの高さを維持する傾向が強いようです。そこで、塗装工の仕事に対するやりがいについて調べてみました。
建築物のクオリティに寄与できる
建築物の美しさは外観から感じることが多いでしょう。その外観にはデザインはもちろんですが、塗装の美しさも寄与しているのです。塗装工は建築物のクオリティの高さの最も重要な部分を引き受けているともいえるでしょう。自分の技術が建物に美しさに寄与できるという点において、塗装工としてのやりがいを見いだすことができるのです。
技術を磨く”楽しさ”がある
塗装工は専門職ですから、日々研鑽の毎日といえるでしょう。塗装というとシンプルな作業のイメージもありますが、住宅では外壁やベランダ、屋根などの建築材、車やバイクなどの金属など、素材ごとにムラなく美しく仕上げるための技術はそれぞれ異なります。イメージ以上に実作業の奥深さに魅了されている塗装工も少なくないのです。
そして日々塗装の技術を磨き、その技術を活かすことで購入者に喜んでもらえます。技術を磨く楽しさや達成感を知ることは、何年もかけて塗装工としての専門技術を探求することになり、非常にやりがいのある仕事だといえます。
塗装工になるには
専門職である塗装工は、建築関係には欠かせない職種のひとつです。手に職をつけたいと考えたとき、できれば収入の高い業種につきたいと考えますよね。そういった場合、塗装工は有力な選択肢になるでしょう。そこで、塗装工になるために必要な資格、面接でのポイントなどをまとめてみました。
塗装工に必要な資格
塗装工に就く際に必須となる資格はありませんが、技術や知識を証明する資格として「塗装技能士」があります。難易度の低い順から3級、2級、1級の種類に分かれていて、厚生労働省が認定を行う国家資格です。「木工」「建設」「金属」「噴霧」「鋼橋」のなかから得意な職種を選択して受験することができます。
受験資格は、学歴は不問ですが実務経験が必要になります。2級で2年以上、1級で7年以上の実務が必要です。資格がなくても塗装工にはなれるのですが、資格があったほうが技能手当や資格手当、さらには昇級といった面で有利になるのは間違いないでしょう。
採用面接でのポイント
塗装工になるための就職試験では、面接試験や書類選考があります。何よりも技術力が重視されるので、学歴や資格ではなく本人の体力や根性、やる気で判断して採用を決定するケースが多いようです。志望動機を面接試験で尋ねられたときには自分の意気込みや熱意を伝えられるように準備しておきましょう。
基本的には採用担当者の問いかけに答える形になると思いますが、堅苦しい雰囲気を和らげて明るく受け答えをすることも必要です。「どのような塗装工になりたいのか」「どのような夢をもっているのか」「採用されたら何がしたいのか」などを伝えられるようにしましょう。
また塗装の仕事内容について、「作業中に汚れること」「体をつかうため疲れやすい仕事だということ」を採用担当者から説明された場合は、前向きにとらえてネガティブな回答を避け「それでも塗装の仕事がしたい」という気持ちを伝えましょう。
体を鍛えていることや学生のときに運動部に所属していたエピソードがあれば、「体力に問題はない」というアピールとして利用できます。
やるほどにやりがいのある仕事
塗装工の仕事は大変に見えるかもしれませんが、実際に塗装工を体験してみることで、塗装の難しさや奥深さ、楽しさを感じる人がたくさんいるのも事実です。塗装の仕上がりの良さが建築物の出来を左右するといってもいいほど、建築関係の仕事では欠かせない業種ですし、日常生活のなかでも塗装工はあちこちで活躍しています。
高度な技術を習得することができる塗装工はモチベーションの上げやすい業種といえます。丁寧な作業や真摯に作業に取り組む姿勢、遂行力の高さなどをアピールすることで、採用を勝ち取ることができるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部