物流に関する仕事をされている方の中には、「リードタイム」という言葉を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。「リードタイム」が頻繁に使われるようになったのは比較的最近のことで、その正しい意味はまだそれほど知られていません。
今回はこのリードタイムの正確な意味だけでなく、その種類や重要性などもご紹介します。ぜひ仕事でも活用してみてくださいね。
リードタイムとは?
納期などの意味で使われることが多い、「リードタイム」という言葉。英語で「Lead Time」と表記し、「商品の発注から納品までに要する時間」というのがその言葉の正確な意味となります。そのため、この言葉は長らく物流業界を中心に使用されていましたが、最近では物流関係者でなくても商品の納期を伝える際に使われるようになっています。
このリードタイムという言葉は、買い手にとっては「発注から納品までの時間」、売り手にとっては「受注から納品までの時間」と、その定義に微妙な違いがあります。つまり正しく使うためには、使う側のの立場にあった柔軟な解釈をしなければなりません。
リードタイムという言葉は「納期」という意味で使われることがありますが、正確にいうとこれは誤りです。取引先との認識の食い違いなどが生じてしまう場合もあるため、注意した方がよいでしょう。
たとえば、「発注から納品までの期間」を意味する前提でリードタイムを相手に聞いた場合、期待する回答は「〇営業日」などの期間を表すものとなりますが、リードタイムを「納期」と認識していると「〇月〇日」といった具体的な日付で返答されるかもしれません。これによって大きな問題が生じることは考えづらいですが、ビジネス用語の誤用は時として相手の信頼を失うことにもつながりかねないため、正しい意味を知っておきましょう。
リードタイムの種類
リードタイムという言葉は物流業界に限らず幅広く使われるようになりつつあるため、最近では必ずしも受注(発注)から納品までの期間だけを表すわけではなく、若干派生的な解釈もされています。それでは、どのようなリードタイムの種類があるのでしょうか?
生産(製造)
物流業は生産(製造)業とも密接に関係していることから、生産業でもリードタイムという言葉は使われます。この場合のリードタイムとは、「商品の製造を開始してから既定の数の製造が完了するまでの期間」を表すのが一般的。場合によっては、「生産開始からクライアントへの商品の納入が完了するまでの期間」を指す場合もあります。
配送(出荷)
配送(出荷)に関して使われるリードタイムとは「受注から納品までの時間」を表すと考えるのが一般的です。しかし、配送という作業に限定した場合は、「発送からクライアントへ商品が配達されるまでの期間」と考えることもできます。
調達
商品を製造するにあたっては、その原料の調達を行わなければなりません。この原料を自社で賄える場合はその「準備期間」がリードタイムとなり、また、自社で賄うことができず、外部業者にオーダーする場合はその「発注から納品までの期間」がリードタイムとなります。
外注
このように商品の製造に必要な原料の外部へのオーダーをはじめ、業務上必要な物品の外注をする場合も、その「受注から納品までに期間」はリードタイムと呼ぶことができます。
リードタイムの重要性
このリードタイムという言葉が多く使われるようになった理由としては、リードタイムが意味する発注(受注)から納品までの時間の短縮化の必要性が増したことによるものです。
特に最近ではネット通販が幅広く利用されるようになったので当日配送サービスも当たり前となり、それに準じた納期を厳守する上でリードタイムの考えが欠かせないものとなったことが、この言葉が広く使われるようになった理由といえます。
また、商品の配送以外の場でもリードタイムという言葉が多く使われるようになった原因としては、物流業界における配送時間の短縮化が大きく影響しています。たとえば大元の商品を製造するリードタイムを厳守しなければ、配送時間を短縮化しても顧客に提示したリードタイムを順守できなくなる、といったケースはその典型といえます。
さらには、ネットスーパーや食品を扱うECサイトのように生鮮食品の配達を行うサービスが増加したことも、このリードタイムという言葉が普及する原因と考えられます。そのため、今後さらに物流業界に大きく関係する新たなサービスが誕生することにより、リードタイムの概念の重要性はより高くなることが予想されます。
リードタイムを短縮するメリット
業務においてリードタイムの短縮を目指す上では、リードタイムという概念について考えるだけでなく、それによって生まれるメリットも知っておく必要があります。
例えば大手通販サイトがリードタイムを短縮するために当日配送サービスなどを行っている理由としては、他社より優れたサービスを提供するということだけでなく、より多くの注文を短時間で処理することにより、より多くの利益を上げやすくなるという自社にとっての大きなメリットがあるということも挙げられます。
特に、商品価格を極端に安くしている大手通販サイトなどは、より多くの商品を販売しなければ十分な利益を生み出すことはできません。具体的なリードタイムの設定は、従業員に向けた目標設定ができる点で大きな効果があるでしょう。
生産業でも、物流業と同様にリードタイムという言葉が広く使われるようになりつつあります。生産業でのリードタイムの短縮には、商品を在庫としてストックしておく期間が短くすることで鮮度が落ちるのを防ぐという大きな目的があります。つまり、生産業でもリードタイムの短縮で得られるメリットは大きいのです。
このように、リードタイムの短縮はただ顧客に早く商品を届けて喜んでもらえるというだけでなく、商品の製造や販売、配送を行う業者側にとってより多くの収益を得ることができるという点でも大きなメリットがあるといえます。
リードタイムの短縮で収益力の向上を
ここでは物流業にとどまらず、生産業をはじめとしたさまざまな業界で使われるようになりつつある、リードタイムという言葉の正確な意味や重要性などについてご紹介しました。
大手ネット通販サイトが当日配送サービスを始めるなど、これまでのネット通販の「注文から配達までに時間がかかる」という欠点の改善がされるようになったことは、リードタイムという言葉が普及するようになった大きな原因のひとつといえるでしょう。
一方、このリードタイムの短縮には、ただ単に顧客に満足してもらえるだけでなく、サービスを提供する側にとっても収益を上げることができるという大きなメリットがあるということも忘れてはなりません。
そのため、特に物流業や関連のある生産業においては、収益力のさらなる向上を図る上でこのリードタイムの概念への十分な理解が必要です。
制作:工場タイムズ編集部