工業技術の進化が目覚ましく、製造業の工場では自動化が加速しています。ボタン一つで作業をしてくれるのは大変便利ではありますが、中には「人の仕事が減ってしまうのではないか?」と心配している人もいるでしょう。果たしてどうでしょうか?
今回は、製造業における自動化のメリットと、「人の仕事が減らないのか?」という点についてご説明します。
工場の自動化とは?
工場の自動化とは具体的にどういうことでしょうか?まず、そこからお伝えします。
どうして自動化するの?
そもそも、なぜここまで自動化が進められているのでしょうか?それは、日本人の高齢化や少子化が大きく関係しています。メディアでも取り上げられていますが、現在の日本は少子高齢化が進んでいます。つまり、老人ばかりが増え、子どもの数が減っているのです。この傾向は今後、ますます進んでいくと考えられています。そうすると仕事をする人の数自体が減り、同時に技術者の数も足らなくなってしまいます。
製造業で働く人の数が不足して、生産が追いつかなくなっては大変です。そんなことにならないよう、人が少なくても製造ができるようにと、工場の自動化が進められているのです。
工場の海外移転から自動化へシフト!
人件費の削減や人員の確保のために、中国をはじめとする海外へ工場を移転させた企業はたくさんあります。しかし、最近では海外の人件費が上がってきて、それほどコストの削減にならない場合が出てきました。また、移転先の国によっては、日本と同じ品質を保つために行う従業員の教育に多くの時間が掛かってしまう場合もあります。
工場の自動化を進めることで、こうした海外移転の流れを止めし、国内の生産でも十分対応できるような仕組みを整えている企業があるのです。海外移転をしなくても自動化を進めれば、人件費や人材不足といった問題とは関係なく、どこでも同じコストで生産ができるようになるからです。
工場を自動化するメリットは?
工場を自動化することでどんなメリットが生まれるのでしょうか?
生産コストは?
自動化をすることで人件費の削減につながります。そうすると「自動化によって仕事がなくなり、人員が削減されるのではないか?」と心配する人がいると思います。
結論から言うと、工場で働く機会が減ることは基本的にありません。むしろ、増えるところが多いと予想されています。たとえば、「機械を操作するオペレーター」「機械の状態や完成した製品をチェックする人」といった新たな仕事が出てくるからです。
それだけではありません。自動化して作業工程が省略されることで、新製品の開発や新しい事業への参入が増えると予想されています。つまり、簡単な作業を自動化する代わりに、人にしかできないことを増やしていくということです。工場でもそうした新たな仕事が増えてくるでしょう。こうした動きにより、働く機会は減るどころか、形を変えて広がっていくものだと考えられています。
品質は?
自動化すると、品質の向上が期待できるのもメリットです。手作業の割合が多いと、どうしても工程や製品に多少の誤差が生じます。しかし、機械に任せることで数値的に製造されていくため、こうした誤差が生まれにくくなります。結果的に、均一化された製品をつくることができ、品質の向上につながります。
どんなところを自動化するの?
自動化を取り入れている工場の分野は、重工業や医療品、食品などいろいろあります。その一例として、あるカメラ工場を紹介します。
このカメラ工場は、約130億円を投資して人工知能を持つロボットを導入しました。その結果、熟練した技術者が手作業で行っていた細かい作業をロボットが行うようになり、完全自動化を実現しました。それによって生産コストの約20%削減を目指しています。
また、別の電機メーカーの例を挙げると、工場内の組み立て作業を自動化した「自動組立ライン」を導入している工場があります。これを利用することで、製造にかかるほぼすべての工程を機械に任せることができるようになりました。また、製造にかかる時間やスペースが削減され、さらに製造工程にかけていた人員を別の新事業に回すことができました。
このように、工場の中で自動化ができる範囲は幅広く、それによって生まれるメリットは計り知れません。
工場の自動化は大きなチャンス
少子高齢化時代を迎え、労働人口が減少している日本では、今後もいろいろな分野で自動化が進んでいくでしょう。工場の場合は、自動化することによって生産コストの削減や品質の向上が実現します。さらに、新しい仕事が生み出されたり、新規事業に取り組む可能性が広がるなど数多くのメリットがあります。「自動化=人員削減」ではありません。むしろ工場で働く人たちにとっては、大きなチャンスなのです。
制作:工場タイムズ編集部