冷凍技術のおかげで、現在の私たちは、季節に関係なく氷を購入することができるようになりました。食品の保存はもちろん、夏祭りでのかき氷、氷彫刻のアート作品など、業務用から飲食用まで幅広く氷が利用されていて、今では生活に欠かせないものになっています。
このように季節に関係なく氷を利用できるようになったのは、冷凍冷蔵庫の家庭への普及とともに、製氷工場の存在が大きいと言えます。
今回は、製氷工場で氷がどのようにつくられるのかを中心にご紹介します。
氷にはどんな種類があるの?
氷にはいろいろな種類の製品があります。まず氷製品の種類とそれぞれの用途をお伝えします。
氷製品の種類と用途
食用氷
主に飲み物を冷やすために使用する食用氷は、飲食店で使われるほか、スーパーやコンビニでも販売されています。食用氷にはいくつかの種類があり、丸い形が美しく少し値が張る丸氷」(ボールアイス)、形に統一性がなく大きさのバリエーションも豊富な「クラッシュアイス」、大きさが統一されているため飲み物の濃さを一定にできるのがメリットの「ダイヤアイス」などがあります。
角氷(かくごおり)
四角い柱状の形をした角氷は、かき氷の材料として利用されています。また、「さっぽろ雪まつり」のようなイベントで氷彫刻として使われることもあります。また、スキー場で使われる人工雪も、角氷からつくられています。
ドライアイス
氷製品とは少し違うかもしれませんが、二酸化炭素を個体化させたものであるドライアイスは、「食料の保冷材」や「舞台の特殊効果」など、いろいろな用途で使用されています。
氷は工場でどうやってつくられているの?
製氷工場で氷がどのようにつくられているのか、その工程を説明します。
ろ過
氷をつくる工程は、氷にふさわしい水をつくるところから始まります。まず、専用の貯水槽に貯められた原料水を活性炭ろ過装置でろ過し、水の中の不純物である「塩素有機物」や「鉄分」を取り除きます。こうすることで、氷の原料である「純水」になります。
注水
製造された純水を「氷缶(大きな氷をつくるための専用の缶)」の中へ注水し、その氷缶をマイナス10度前後のプールに沈めて冷却します。このプールには、塩化カルシウムの溶液が入っています。
かくはん
氷缶に細い管を差し込み、空気を送り込んで純水を対流させながら、徐々に冷却します。少しずつ氷缶の周辺部から凍り始めて、中心部に不純物が集まります。その不純物を取り除きます。
脱氷
不純物や空気が取り除かれ、完全に凍った氷缶をプールから引き上げます。一旦空気に触れさせ、15度前後の脱氷用のプールに入れた後、氷を氷缶から抜き出します。
貯氷庫で保存
氷缶から抜き出された氷は、マイナス10度前後の貯氷庫で保存されます。温度が低すぎると、常温に出したときにひびが入ることがあるので、温度調整に気を使います。
切り出し加工
完成した氷を丸鋸(まるのこ)で切り出し、取り扱いやすいサイズに加工します。その際、製氷時に最上面だった部分を切り落とすことで、きれいな氷が出来上がります。
製氷工場で働きたい! どんなお仕事がある?
製氷工場で働きたいと考えている人はいませんか?最後に、製氷工場の仕事内容と仕事の魅力についてご紹介します。
製氷工場の仕事内容
製氷工場の従業員は、氷の切り出し加工から食用氷などの製品にするまでのライン作業をメインに行います。ほかにもポジションによっては氷製品を梱包(こんぽう)してトラックに積む配送作業や、工場で使用する機械の点検なども担当します。小さく切り分けられているとはいえ、時には20kg近い氷の塊を持ち上げることもあるため、仕事に就きたい人は体力に自信があることをアピールすると良いでしょう。
製氷工場の仕事の魅力
製氷工場の仕事の魅力は、私たちの生活に欠かせない氷に関われることです。氷は食品の保存や飲み物の冷却など身近な暮らしを支える大切な役割を果たしています。また、製氷工場で製造した氷は氷彫刻や人工雪にも使われるため、たくさんの人を笑顔にすることができます。会社によっては仕事に必要な小型クレーンの免許の取得を無料でサポートしてくれるところもあるので、それも魅力のひとつと言えるでしょう。
たくさんの人を笑顔にする製氷工場のお仕事
真夏の甲子園で行われる高校野球では、スタンド席で「かちわり氷」を食べたり額に当てて涼をとる姿が風物詩になっています。暑い季節に食べるかき氷はとてもおいしいですし、左党の人の中にはウイスキーに氷を入れてオン・ザ・ロックで飲むのが大好きという人もいるでしょう。そうした氷は、製氷工場でつくられています。雪まつりなどで見られる氷柱やスキー場の人工雪も製氷工場の制作です。一見、地味な仕事ですが、世の中の役に立つ、とてもやりがいのある仕事なのです。製氷に興味がある人は、動画サイトに製氷の動画がいくつかアップされていますので、一度ご覧になってはいかがですか?
制作:工場タイムズ編集部