元来エネルギー資源の乏しい日本。大災害や電気の使用増、国際情勢など、様々な影響でエネルギー供給が減り、ライフラインが切迫するということもありました。
そのような経験を経て、「節電」に対する意識は国民全体で高まり、特に多くのエネルギーを使用する工場での節電を管理する「エネルギー管理士」への注目度はより高まりました。
ここでは、そんなエネルギー管理士の仕事の詳細や資格を取得するための方法について解説します。
エネルギー管理士とは?
まずは、簡単にエネルギー管理士の仕事内容や、就職先として考えられる工場の条件について解説しておきます。
エネルギー管理士の主な仕事は、燃料や電気消費量が特に多い工場におけるエネルギー使用量の監視や改善を指揮することです。また、工場の中でも規定以上の量(年間で原油換算3,000キロリットル以上)のエネルギーを使用し、「省エネルギー法」で指定された工場のことを「第1種エネルギー管理指定工場」と呼びます。エネルギー管理士の主な職場は、この第1種エネルギー管理指定工場です。
この第1種エネルギー管理指定工場の中でも、「製造業」「鉱業」「電気供給業」「ガス供給業」「熱供給業」の5業種に関しては、エネルギー管理士を1~4名置くことが義務付けられています。そのため、資格取得後に就職を目指す際には、これらの工場を対象とした就職活動を行うのがよいでしょう。
また、年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500キロリットル以上の工場・事業所が指定される第2種エネルギー管理指定工場に関しても、エネルギー管理士の選任が必要となっており、こちらに関してもエネルギー管理士の資格取得者の就職先の候補として考えることが可能です。
エネルギー管理士の資格の取り方
続いてはエネルギー管理士の資格の内容や、資格取得のための方法について解説します。
エネルギー管理士の資格は国家資格であり、取得の方法には試験と研修の2パターンがあります。
エネルギー管理士の資格は、かつての制度で存在した「熱管理士」「電気管理士」という2つの資格が移行してできたものであり、現在の資格取得試験にはこれら2つの資格の名残として「熱管理課目」「電気管理課目」の2種類の受験科目が選択できます。どちらを選択した場合でも「熱分野」「電気分野」の両方の管理者になれるため、得意な方を受験するのがよいでしょう。
試験を通してエネルギー管理士の資格を取得するためには、エネルギー管理士試験を受験する必要があります。受験をするために必要な資格はなく、試験はマークシート方式です。免状の申請を行うためには受験の前後に1年以上の実務経験を積むことが条件となり、合格後、経済産業大臣に申請するとエネルギー管理士の免状が交付されます。
また、認定研修を通して資格を取得することもでき、その場合は省エネルギーセンターで6日間の講義と1日の修了試験からなる研修を受講する必要があります。この場合は熱分野と電気分野のどちらかを選択することとなり、修了試験に合格すると、免状の交付を受けられます。研修による資格取得は試験による取得に比べ難易度が高いため、3年以上の実務経験者向けです。
「熱分野」と「電気分野」選ぶならどちらがよい?
エネルギー管理者の資格取得の際に「熱分野」と「電気分野」のどちらを選ぶかで悩む方は多いようです。続いてはこれら2つの試験課目の詳細について解説します。
「熱分野」
熱分野の試験科目は以下のとおりです。
・エネルギー総合管理および法規
・熱と流体の流れの基礎
・燃料と燃焼
・熱利用設備およびその管理
熱分野の試験は文章問題が多く、流体力学や熱力学に関する設問や燃焼計算の問題などが出題されます。また、電気分野よりも合格率が高い年度が多いという特徴もあります。
「電気分野」
電気分野の試験科目は以下のとおりです。
・エネルギー総合管理および法規
・電気の基礎
・電気設備および機器
・電力応用
電気分野の試験では、電気数学や工場配電の力率改善に関する問題が出題されます。熱分野よりも合格率が低い年度が多いことから、難易度は熱分野よりも高いといえるでしょう。
3年以内の合格を目指そう!
エネルギー管理者の資格試験では、3年間で資格取得を目指すのがよいとされます。続いてはその理由について解説します。
まず、エネルギー管理者の資格試験では、上述したように4課目に分けて実施され、合格のためにはすべての科目で60%以上の正解率を出さなければなりません。
しかしながら、この試験には「課目合格」という制度が設けられており、例えば、1回目の試験でひとつの課目しか正解率が60%を越えなかったとしても、その試験が行われた年の初めから数えて3年間は、60%以上の正解率を記録した課目のみ「課目合格」の措置が取られ、3年以内に再度受験する場合は、課目合格をしている課目が免除となります。
そのため、資格取得のための猶予は最初の申込みから3年間あると考えることができ、その期間内での合格を目指すのがよいでしょう。
昇給・転職もできる!?資格取得のメリット!
続いてはエネルギー管理士の資格を取得することによって期待できるメリットや、活躍の場について解説します。
エネルギー管理士に限ったことではありませんが、資格を所持していることは昇進や昇格において有利となることはいうまでもなく、エネルギー管理士として就職をした後も大きなメリットがあることです。会社によってはエネルギー管理士の資格保有者を対象とした手当の支給を行っているところも多く、給与面で優遇されるという面も同様に就職後に得られるメリットのひとつといえます。
また、エネルギー管理士は上述したとおり、第1種エネルギー管理指定工場などでは配置が義務付けられているため、省エネ法などの改正が行われない限り就業機会は多く、転職などもしやすいというメリットもあります。
一方でエネルギー管理士の資格保有者の活躍の場のひとつである第1種エネルギー管理指定工場は、自動車・化学・部品などさまざまな分野に存在するため、多くの場所で資格保有者ならではの専門知識を活かした働き方ができます。また、工場での勤務以外では、企業や一般財団法人における省エネ方針の決定に際するアドバイスなどでも需要があり、同様に活躍の場は数多く存在するのです。また、今後のエネルギー事情の変化によってはエネルギー管理士の資格そのものの重要性が高くなることも考えられます。
省エネ時代にさらなる活躍、エネルギー管理士への高まる期待
エネルギーの供給元の多くを海外に依存している日本では、今後もエネルギー事情が急激に好転することは考えづらく、省エネや節電に対する国民の意識は常に高い状態にあり続けることが予想できます。また、東日本大震災のような大きな災害が発生すれば、再びエネルギー供給が切迫することも予想されます。そのため、エネルギー管理士への需要は今後も高い状態が続くことが予想できます。
制作:工場タイムズ編集部