お弁当のおかずやファミレスなどでも利用されている冷凍食品は、私たちの食卓にとって便利な存在です。
自分で冷凍した食材は冷凍焼けをしたり、食感が変わったりして味が落ちてしまうのに、販売されている冷凍食品はいつまでもおいしいですよね。
では、工場でつくられた冷凍食品は、どうやってそのおいしさを保っているのでしょうか? 今回は、冷凍食品工場とその技術についてご紹介します。
なぜ冷凍してもおいしいの?
レンジで温めるだけですぐに食べることができる冷凍食品ですが、どうして解凍してもおいしいのでしょうか。鮮度を保ったまま冷凍する技術や製造工場について説明します。
なぜ冷凍・解凍するとおいしくなくなるのか?
なぜ、家庭で食べ物を冷凍すると味が落ちるのでしょう。食品に含まれる多くの水分が関係しています。冷凍というのは、食品に含まれている水分を凍らせることです。食品の水分量は肉や魚で重量の7割前後、野菜や果物ではなんと8~9割にも上ります。
冷凍すると食品の細胞膜が破壊されるのですが、解凍時にはその壊れた細胞膜から水分と一緒にうまみ成分が流れ出てしまいます。そのため、食材にうまみ成分も水分もなくなり、味が落ちるというわけです。
どんなところで生産されているの?
食材をおいしく凍らせるためには、「できるだけ均一に」「短時間で」凍らせることが大切です。食材の中に含まれている水分が凍結する温度は-1℃~-5℃と言われます。工場では大きな冷蔵庫で一気に急速冷凍することができます。そのため、食材の外側から内側にかけて凍っていく時差をできるだけ短縮することで、細胞膜を破壊することなく、うまみ成分を閉じ込めることができるのです。
たとえば、冷凍からあげです。出来上がったからあげはベルトコンベアに乗せたまま-35度以下に冷えた冷凍庫をおよそ45分間かけて通過し、急速冷凍させます。こうしてうまみ成分を逃さないようにしているのです。
冷凍食品のつくり方
冷凍食品は多くの工程を経て製造されています。原料の検査から出荷まで、それぞれの工程における作業内容について解説します。
原料の下処理
原料の食材は、人の目によってチェックされます。鮮度や異物検査などを行い、適正基準を満たした食材を使用してつくります。仕入れた食材は適度な温度と湿度を保った冷蔵庫内で保管されていて、加工前に洗浄と下処理を行います。
調理
食材を混ぜ合わせ、蒸す、揚げる、味を付けるなどの調理を行います。調理の工程は、機械で一度にたくさんの量つくる「自動の工程」と、細かくて機械化しにくい作業を人の手で行う「手動の工程」に分かれます。
冷凍・検査
調理された食品は専用の機械で一気に冷凍します。出来上がった食品は異物が混入していないか検査されます。X線検査や金属検査、重量検査などの機械を使って行うほかに、人の目による検査も行われます。
出荷
検査に合格した製品は-18度以下に管理された倉庫で保管され、そこから専用の輸送車で運ばれます。冷凍庫内は氷点下のため検品や出荷作業は防寒着を着用して行われます。
日本の冷凍技術の発展!
日本の冷凍技術は目覚ましく進歩しており、「CAS冷凍」という世界初の技術開発に成功しました。
CAS冷凍って?
CAS(Cells Alive Systems)冷凍は食品中の水分を調整することで、細胞組織を壊さないまま凍らせる技術です。
本来なら水が凍る0度以下でも凍らない状態を「過冷却」と言い、この状態で少し衝撃を与えると一気に水が凍ります。過冷却の状態のまま、食品の中心部まで温度が下がりきったら電流や磁石などで振動を与えて一気に凍らせます。
こうすることで食品の中に氷の結晶ができるのを最小限に抑えながら凍らせるので、細胞膜を傷つけずに凍結させることができるのです。これで、うまみ成分が流れ出ることなく、冷凍する直前のおいしさや食感を保つことができるようになりました。
今までの冷凍技術との違い
今までの冷凍技術で鮮度が落ちる原因の一つが、魚介類などの生鮮食品を冷凍すると水分と一緒にうまみ成分が出てしまい、表面が乾燥してしまうことでした。しかし、より急速に冷凍することによって細胞が壊されるのを防ぎ、うまみ成分を残すことができるようになります。
今では漁船などの小さなスペースでも急速冷凍ができるようになったので、これまでは冷凍することに向いていなかった鮮魚もおいしさをそのままに冷凍保存できるようになっています。
日本の目覚ましい冷凍技術の発展に注目!
冷凍食品は日本の食卓やお弁当には欠かせない存在になっています。日本の急速冷凍は、出来立ての味をそのまま閉じ込め、長期保存できる世界トップクラスの冷凍技術です。揚げ物から炒め物、ご飯、野菜に至るまで、もっとおいしく、もっとバラエティ豊かに、これからも冷凍技術は進化していくでしょう。
制作:工場タイムズ編集部