「水素」と聞いて何を想像しますか?
「昔、理科の時間に習ったなぁ」とか「水素水が健康にいいらしい」といったことでしょうか?なかには、ニュースなどを見て「水素を燃料とする車の開発が進んでいるらしい」と考える人もいるでしょう。このように水素は、私たちの生活の中でいろいろな形で利用されています。
今回は、水素の特徴や生産方法をご紹介します。
そもそも水素って?
水素は、あらゆる物質の中で最も軽いことで知られます。空気よりも軽いので空気中に広がりやすいという「拡散性」が特徴です。常温状態では無色・無臭、味もありません。
水素 = 危険?
「水素=爆発」というイメージを持っている人がいると思います。確かに水素は燃えやすい物質なのですが、実際に燃えるためには空気中の水素濃度が4%以上になることが条件です。しかし、水素は空気よりも軽くて拡散しやすいため、閉め切られた空間でない限り4%以上になることはあまりありません。「水素=危険」というわけではないのです。
人体に悪影響を及ぼす?
水素は美容や健康分野での注目度が高まっています。なぜ水素は体に良いとされるのでしょうか?私たちの身体は、60兆個という細胞からできています。人間は食事や呼吸によって活性酸素という物質をつくり出します。活性酸素は酸化力が強くて体をサビつかせる働きがあります。水素には、その活性酸素を除去する働きがあり、体内の細胞を元気にしてくれるのです。つまり、アンチエイジング効果が期待できるというわけです。
「若返るために水素水をたくさん飲もう!」と思う人がいるかもしれませんが、まれにお腹が緩くなる場合があるので飲み過ぎには注意しましょう。ただ、水素は厚生労働省に「食品添加物」として認可されており、副作用はないと判断されています。
水素を燃料として活用
空気と適度に混ざることで燃えやすい性質は、燃料としては好条件です。さらに、水素は燃やしても水しか生成されないクリーンなエネルギーです。そのためさまざまな用途に利用されています。宇宙ロケットの燃料として、また空気より軽い性質を生かして気球の燃料として使われることがあります。
水素のつくり方
次に水素の生産方法をお伝えします。
化石燃料からつくる
現在、主流となっている方法です。天然ガスや石油などの化石燃料を使って水素を発生させます。多くの量を短時間に製造することができ、安くつくれるというメリットがあります。しかし、生産過程において二酸化炭素が排出されるのがデメリットです。
水蒸気改質法
とても安価な方法であるため、世界の90%がこの方法を採用しています。高温下で化学燃料と水蒸気を反応させることで水素を発生させる方法です。
副生水素
苛性(かせい)ソーダ(水酸化ナトリウム)の製造工程で発生する水素が代表的なものです。この方法で発生させた副生水素は純度が高いという特徴があります。
水からつくる
化石燃料を使用した水素の製造方法とは違って、炭酸ガスが発生しないというメリットがあります。しかし、かかる時間や費用、取り出せる水素量を比較すると、やはり化石燃料から生産する方法が大きく上回っています。
電気分解法
注目の燃料電池は「水素と酸素が反応すると電気が発生する」という原理を応用したものです。この電気分解法はその逆で、「電気を使用すれば水から水素と酸素が取り出せる」という発想です。電気エネルギーを加えることによって、水が水素と酸素に分割するという化学反応を利用しています。
燃料電池自動車として注目される水素!
燃料電池自動車の多くは水素を燃料にしています。しかし、燃料電池自動車の原理を正しく理解している人は、まだ少ないでしょう。燃料電池自動車は、タンクに積まれた水素と空気中の酸素を化学的に結合させて発電する装置を搭載しています。つまり燃料電池自動車とは、「水素をエネルギーとして走る電気自動車」なのです。
燃料電池自動車は、エネルギーは生み出しても、排出するのは水だけです。水素は地球上に無限に存在します。だからエネルギーは枯渇しないし、排気ガスは出さないしで、まさに「究極のエコカー」なのです。
車に水素を供給する方法もいろいろと研究が進んでいます。現在は「水素ステーション」というガソリンスタンドのようなところで水素を供給するのが一般的です。また、水素供給に必要な機材を積んだトレーラーが燃料電池自動車のところへ向かう方法も用意されています。水素ステーションの中にはガソリンスタンドが併設されているところもあります。
人体にも環境にもプラスの効果をもたらす注目の物質
水素が注目されるのは、人体にはアンチエイジング効果をもたらし、環境面では炭酸ガスを発生させずに車を動かすという夢のような物質だからです。宇宙で最も数が多く、空気よりも軽い物質でありながら、その爆発的なエネルギーが大きな可能性を秘める水素。今後、研究が進めばさらに活躍の場が広がることでしょう。
制作:工場タイムズ編集部