日本人の食卓になくてはならない存在の漬物。コンビニで買ったお弁当にも必ずと言っていいほど入っていて、私たちの生活の身近なところにあります。
塩漬けやぬか漬けなど種類は豊富にあり、食材や製造方法の違い、さらに外国から入ってきたキムチやピクルスなどを含めると、その幅はさらに広がります。
そんな漬物ですが、どういうふうに作られているかご存じですか?家庭で漬物を漬けている人を別にすると、意外と少ないかもしれませんね。
そこで今回は、漬物工場における漬物の製造工程を中心にご紹介します。
漬物はなぜこんなに人気になったの?
漬物工場での製造工程を説明する前に、まずは漬物の歴史についてお伝えします。
漬物の歴史
漬物は人類の歴史における「最古の食品」と言われており、原始時代にはすでに食べ物を保存するために肉類や野菜を塩に漬けて貯蔵していたと考えられています。また今から約1500年以上前の大和時代には、野菜を塩で漬け込む保存方法が存在していました。その後、鎌倉時代から室町時代にかけて茶の湯や聞香(香りを鑑賞する香道の一種)が発達した時期には、「香の物」として味覚や嗅覚をリセットするために漬物が食べられていました。そのような歴史を経て、現在では地域ごとにいろいろな漬物が誕生し、単なる保存食を超えた食べ物として日本中で親しまれています。この「漬ける」という調理方法は海外にも見られ、日本でもおなじみのピクルスやキムチのほか、青唐辛子やオリーブなど地元の名産品を使った漬物が昔から食卓を彩ってきました。
漬物は健康食品!?
最近では健康食品として漬物に注目が集まっています。野菜に含まれるビタミン類の中には熱を加えることで壊れてしまうものがありますが、漬物ならビタミン類を壊すことなく摂取することができます。漬物の多くは発酵食品です。発酵食品には整腸作用など健康に良いいろいろな効果が指摘されています。また、歯ごたえのある漬物は食べるときに何度もかむ行為を繰り返すため、食べることで顎(あご)が鍛えられて丈夫になり、さらに唾液の分泌が促されて虫歯や歯周病の予防につながると言われています。
漬物はどうやって作られているの?
家庭で漬物を漬けたり、漬物専門店で購入する人もいると思いますが、スーパーやコンビニなどで販売されている漬物は、専用の漬物工場で作られていることが一般的です。続いては、漬物工場における製造工程について説明します。
貯蔵
原料となる野菜の貯蔵方法には大きく「常温貯蔵」と「低温貯蔵」の2種類があります。野菜の性質に合わせていずれかの方法で貯蔵し、味が落ちないよう品質管理を徹底します。
洗浄
野菜に付いている土や汚れを洗います。基本的には機械が洗浄しますが、細かい部分は人間の手でも行われます。
検品
野菜の中に異物が混入していないか、機械と目視の両方で入念にチェックします。
切断
野菜を食べやすい大きさに切断します。切り方によって漬物の歯切れのよさが変わるため、この「切断」が漬物の製造における重要な工程のひとつになっています。
塩漬け
切断した食材を塩で漬け込みます。この工程によって味のベースである塩味が付き、食品としての保存性も上がります。
脱塩
ちょうど良い塩加減になるよう、塩分バランスを整えます。
圧搾(あっさく)
水分を搾(しぼ)り取ることで、漬物独特の歯切れの良さを生み出します。
味付け
攪拌機(かくはんき)でじっくりとかき混ぜながら味付けをすれば、製品としての漬物の完成です。
梱包、出荷
品質や安全性をチェックしながらパッケージに詰め、各地に出荷します。
漬物づくりを自分の目で見たい! 工場見学に行こう!
漬物工場の中には、工場見学を実施しているところがあります。
丸長(滋賀県)
1953年に「金井商店」という名前で創業した60年以上の歴史を誇る漬物店で、千枚漬や地元の野菜を使った漬物が人気となっています。見学ができる大津市の工場は2005年11月に完成した比較的新しい工場で、Webサイトから見学の予約をすることができます。
http://www.otsukemono.jp/original2.html
すみと屋(群馬県)
主に居酒屋や焼肉店を対象に、キムチや浅漬けなど種類豊富な業務用の漬物を製造しています。工場見学の問い合わせはWebサイトからどうぞ。
http://www.sumitoya.jp/visit.html
アキモ(栃木県)
1960年に創業された、多くの有名スーパーを得意先とする食品会社です。1995年に完成した浅漬け専用の工場には、小学生をはじめ多くの団体客が見学に訪れています。見学者は、食育を含めた漬物の知識が学べます。工場見学の予約・問い合わせはWebサイトからどうぞ。
http://goo.gl/8KTU6T
漬物工場で出合える新しい味
たくわん、おしんこ、梅干し、ぬか漬け、野沢菜漬…など、想像するだけで食欲が湧いてきそうな日本の漬物。特に白いごはんとの相性はピッタリです。漬物好きな人は、自宅で漬物を漬けてみるといいかもしれません。また、工場見学を行っている漬物工場の中には、商品の試食をさせてくれるところがあり、自分が知らなかった新しい漬物の味に出合えるかもしれません。興味がある人は、ぜひ漬物工場を見学してみてください。
制作:工場タイムズ編集部