お店で買ってきた商品がトラブルなく動くことは当たり前のように感じますが、それは店頭に並ぶ前に商品が多くの検査を合格してきたからです。
なかでも多くの部品を組み立ててつくられる機械では、部品のひとつひとつに検査の目が行き届いています。今回は機械の検査を行う資格についてご紹介します。
商品の質を約束するための「検査作業」
製品やその部品は実際に使用されるまでに多くの検査が行われます。「検査」と似ている言葉に「検定」があります。
この「検査」と「検定」は、違う意味を持ちます。「検査」とは、製品やサービスについて、一定の基準をもとに異常がないかを調べることです。たとえば、計量器を長く使い続けている間にズレや狂いが生じていないかを確認する作業です。こうした検査は一定期間ごとに「定期検査」として行われます。
一方、「検定」は、検査をして合格・不合格や等級を決めることを意味します。たとえば、水道やガスなどのメーターを長年使っているうちに性能が落ちていないかを確認することを指します。検定有効期限といって、水道やガスのメーターは7~8年ごとに検定が行われます。検定に合格した計量器には「検定認印」が押されます。検定期限を過ぎて使い続けると罰則規定があります。
いろいろな分野や製品の検査を行うことを目的とした「新日本検定協会」という法人組織があります。そこでは、食品の放射能検査や飲料水の水質検査のほか、石油・ガス、船舶検査などが行われています。
機械の検査を行うプロってどんな仕事をするの?
検査にはいろいろな資格があります。なかでも、機械の検査に特化した資格は「機械検査技能士」です。機械検査技能士はいろいろな測定機器を使って、機械部品の検査を細かく行う役割を果たしています。
具体的に車のエンジンの検査について説明します。まず、エンジンの主な部品を構成する素材をいろいろな方法で検査します。たとえば「磁気探傷(じきたんしょう)検査」と呼ばれる工程では、ブラックライト(紫外線を放射する電灯)と水を含んだ磁気を利用して、部品の素材に傷がないかどうかを調べます。
次に、工場に運ばれてきた部品の内部が設計通りにつくられているかを調べるため、部品を切断して断面をチェックします。その際、顕微鏡を使ってハンダ付けの状態を調べたり、金属の組織構造自体を確認することもあります。
その後、エンジンは加工部門に送られます。基本的には加工に関する全工程がコンピューターで制御された機械が行います。だからといって、検査員が何もしないというわけではなく、コンピューターが見逃すような細かい不具合を目視検査するのです。
さらに、工場内を巡回して作業員とコミュニケーションを取りながら、製造ラインの工程で指示通りの部品が決められた手順で組み立てられているか、基準通りにボルトが締め付けられているかといった点を検査します。こうして検査を終えて完成したエンジンがベルトコンベアーで運ばれ、車に取り付けられるのです。
私たちは自動車を前にして、「このエンジンの部品はあの検査員が検査したから大丈夫だ」というようなことを意識することなく運転しています。しかし、故障やトラブルなく車が普通に動くという当たり前の事実の前には、こうした検査員たちの努力が隠されています。製造工程の完全機械化が進んでいるからこそ、検査員という人間の果たす役割も大きくなっているのです。
「機械検査技能士」とは?
このように機械の検査を幅広く行うのが、機械検査技能士という資格を持つ人です。この機械検査技能士は人気の高い国家資格のひとつで、特級、1級、2級、3級に分かれています。特級、1級、2級は実務の経験がある人を対象にした試験です。初心者の人は3級を受験することができ、実務の経験を積むことでステップアップできます。
この検定は、中央職業能力開発協会が年2回行っています。4月上旬から中旬、9月下旬から10月上旬に願書受付期間があるので、受験料として学科試験3,100円、実技試験16,500円、合わせて19,600円を現金で支払い、領収書を受験申込書に添えて申し込みます。詳しいことはWebサイトから中央職業能力開発協会に問い合わせて確認しましょう。
試験は、学科試験と実技試験によって行われます。発行されているテキストや通信講座で勉強することができますが、実技試験については職場の先輩からアドバイスを受けられると身につきやすいでしょう。
モノづくり界の守護神が守る「商品の安全」
「機械検査技能士」は、部品が正しくつくられているか、正しく組み立てられているか、正しく動くかを検査する資格です。まるで製品の安全を守る、モノづくり界の守護神といった大切な仕事です。何かがつくられて、製品として実際に使用されるまでには必ず検査が行われます。そのため、この資格を持っていると広い分野の現場で役立つでしょう。興味がある人は、会社の先輩に聞いたり、中央職業能力開発協会のWebサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部