ひとつの製品をつくるにも、その工程はたくさんあります。
例えば食品メーカーなら、原材料を混ぜ合わせる工程もあれば、材料を焼いたり茹でたりする工程もあります。さらには出来上がった製品をチェックし、袋詰めしたりパッケージで包んだりもします。
そういった梱包(こんぽう)の工程のひとつに食品や日用品を詰める「充填(じゅうてん)」と呼ばれる作業があります。今回はあまり聞きなれない充填作業をご紹介します。
「充填」って知ってる?何て読むの?
あまり耳慣れない言葉ですが、これは「じゅうてん」と読みます。
製造業でいう「充填」とは、ビンやボトルに内容物を詰める作業のことです。食品製造業では欠かせない作業で、「しょうゆ」や「わさび」「マヨネーズ」などを容器に入れる作業がそれに当たります。形にとらわれず、詰めるモノは何でもOK。しょうゆのような液体でも、みそのような粘体でも、塩やスパイスのような粉体でも同じように充填作業と呼ばれます。
現在は充填作業の多くが機械を使って行われます。ただし、完全に自動化されている充填機もあれば、詰める作業以外は人が行う半自動のものもあります。完全に自動化された充填機の場合は、オペレーターが充填機を操作するだけで生産のほとんどを行うことができます。そういった完全に自動化されているものの中にはキャップ締めやラベル貼り、箱詰め、梱包まで行えるものがあります。
ときには、充填専用の会社に充填作業だけを依頼するケースがあります。限定品や試供品などそもそも製造する量が少ない場合がそうです。また、急な注文が入って短期間で充填する必要がある場合も専門の会社へ依頼します。
方法いろいろ!充填の技術
充填にはいくつかの種類があります。ここではその種類をご説明します。
容量式
一定の容量を次々とビンやボトルに充填していく方式です。容器に入れる前に一定量を計ることが特徴です。同じ形の容器に同じ内容物を充填して大量生産するのに向いています。液体でも粘体でも粉体でも、どんな内容物でも対応可能です。
ウエイト式
容量式とは違い、容器に充填した重量を量る方式です。容器の内容量に合わせて、充填する量を調節できるので、同じ内容物を形状や大きさが違う容器に充填するのに向いています。主に液体の充填に使用される方式です。
グラビティー式
充填した液体の高さをそろえることで内容量を決める方式です。容器の内容量に誤差があった場合、その誤差に関係なく液体の高さを一定に保つことができます。ウエイト式と同じく、主に液体の充填に使用されます。
ボリューム式
「小豆」や「ゴマ」といった固形物を、小さな箱に詰めて一定の量を量る方式です。包装機などと組み合わせて使うことがあります。
また、特殊技術をうまく取り入れた「真空充填」「窒素充填」という方法があります。
真空充填
容器の中を真空状態にし、容器が外の空気を取り入れようとする力を使って液体を充填する方法です。お弁当用の小さな「しょうゆ入れ」の中にしょうゆを入れたり、化粧品など粘りのある液体を容器に詰めるときに使われます。
窒素充填
充填する際に容器内に窒素ガスを入れる方式です。飲料などは酸素に触れて酸化すると、味が劣化してしまいます。そこで容器内の酸素を抜いて代わりに窒素を入れるのです。窒素は空気中の5分の4を占める気体。無味無臭、無色で、人体への影響はまったくありません。
このほかにも容器に入れるほどの量でない場合は、フィルム充填という方法を使います。例えば、お弁当などに付いているしょうゆやソース、インスタントラーメンの粉末や液体スープなどがフィルム充填した製品です。
マヨネーズもタレもジュースも!冷蔵庫の中には充填の技術がいっぱい!
充填が行われる製品で多いのは食品です。以下にその例をご紹介します。
●液体:ジュース、つゆ、だし、タレ、ソース、ドレッシング、酢、しょうゆ、油など。
●粘体:マヨネーズ、ケチャップ、ジャム、岩のり、調理みそ、プリン、ゼリーなど。
●粉体:塩、スパイス、パン粉、小麦粉、 きな粉など。
●固体:小豆、ゴマ、唐辛子、乾燥わかめ、ナタデココ、漬物、佃煮など。
ほかには医薬品や化粧品、シャンプー、コンディショナー、歯磨き粉などの日用品、さらにはLPガスや炭酸ガスといった生活に身近なモノに充填が幅広く使われています。
速く正確に、パッケージへ詰める充填
充填は、製造業の中でも特に食品や日用品といった必需品をつくるときに良く使われる技術です。冷蔵庫の中を調べるとマヨネーズやわさび、充填でつくられたいろいろな製品が見つかります。工場見学に行けば、生産ラインの見学時に実際の充填ラインを見ることができるかもしれませんね。
制作:工場タイムズ編集部