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身の回りの万能素材ゴム! その製造工程から種類まで解説!

2015/12/18公開 / 2023/06/05更新

私たちの生活の中にあるゴム製品といえば何があるでしょうか?

たとえば、毎日のように見ているものには、輪ゴムや自動車・自転車のタイヤ、タイヤの中のチューブがあります。

雨の日に足が濡れないようにしてくれるのはゴム製の長靴です。イベントやパーティーなどで活躍する風船もゴムでできています。こうして考えると、ゴムは生活の中に溶け込んでいます。

今回は普段お世話になっているゴムに関するお話をご紹介します。

ゴムってなに?

ゴムとはどんなものなのか、歴史や特徴、種類をお伝えします。

ゴムの歴史と特徴

ゴムはゴムの樹の樹皮からとれるラテックスという液を固めたものです。ゴムのはじまりは、探検家として有名なコロンブス(1451~1506年)が航海しているときに、ゴムで作ったボールで遊んでいた原住民を見たことによるとされています。ただし、このときのゴムは「生ゴム」と呼ばれるもので、温度が上がるとベトベトになり、下がるとカチカチに固まってしまう性質がありました。

この欠点が解消されたのはコロンブスがゴムと出合ってから約350年後の1839年のことです。アメリカの発明家チャールズ・グッドイヤー(1800~1860年)が、ゴムに硫黄(いおう)を混ぜて加熱することで、ベトベトに溶ける代わりに弾力性と強度が向上することを発見。1842年にはゴム工場を立ち上げました。

日本ではペリーが黒船で来航した1853年、将軍へのおみやげとして渡された有線電信機のコードが、ゴムとの出合いだと言われています。

ゴムの主な特徴は「柔らかい」「弾む」「伸ばして離すとすぐに元に戻る」の3つです。しかし、ゴムができてからこの特徴を発見するまでに100年以上かかっており、その点は科学界の中でも異例です。

ゴムの種類

天然ゴム

チャールズ・グッドイヤーが見つけたゴムです。このゴムはさまざまな製品に使用されていますが、多く使用されているのはタイヤです。天然ゴムを使用したタイヤの割合は世界で8割、日本では6割です。特徴は、熱には弱いが、極寒の地でも耐えることができるほど寒さに強く、粘着性や接着性にも優れているので加工をするのに適していることです。また、強度もあるので大型自動車のタイヤ、ホースといった製品に使われています。

合成ゴム

簡単に言うと、天然ゴム以外のゴムです。主原料は石油で、用途に合わせて合成していくので種類が豊富にあります。シリコンゴムは合成ゴムの一種ですが、このゴムは人体への影響が少ないことからほかの合成ゴムと区別することがあります。特徴は耐熱性や導電性(電流の流れやすさ)に優れているものが多いことで、靴底やパッキンなどに使用されています。

ゴムのつくり方って?

次はゴムがどのようにしてできるのかについて説明します。工程には4つの段階があります。

精錬

ゴム製品を作るときの最初の工程で「素練り」「混練り」という作業を行います。素練りはゴムの分子を機械で刺激し、伸びることができる長さの限界を上げていく作業です。混練りはいろいろな種類の配合剤を混ぜ込んで均一になるようにする作業です。配合剤を混ぜるときに使う機械をオープンロールと言います。精錬の最後には配合に異常がないかどうかのチェックを行い、次の工程に進みます。

成形

精錬工程でできた材料を製品に必要な大きさ、重さに切断し、金型にはめ込んで熱と圧力を加える作業です。この作業のことを「加硫(かりゅう)」といいます。熱と圧力をかける時間は材質や硬度によって違っていて、5分から1時間の幅があります。また、金型を使わない「加硫缶加硫」という成形方法があり、ゴムローラーなどを生産するときに用います。

研磨

ゴム用の砥石などを使ってゴムの表面を削っていく作業です。金型の成形では出せなかった細かい寸法や表面の適切な荒さを出していきます。これは職人技の世界で、製品の用途によっては滑らかな表面にしたり、象の肌のような凹凸のある表面に加工します。0.1ミリ以下の世界で職人はゴムと向き合います。

仕上げ

最後の作業であり、バリと呼ばれるゴムのささくれをきれいにする工程です。多くの会社では手作業でやりますが、窒素ガスを使うこともあります。

ゴムといえば?身の回りにはこんなにゴム製品が!

身の回りのゴム製品の用途やその特徴を紹介します。

エンジンマウント

エンジンマウントとは聞き慣れない言葉かと思いますが、自動車などで発生するエンジンの振動を吸収してくれるものです。このエンジンマウントがなければ騒音や振動がひどくてシートに座っていることはできません。もちろんエンジンの近くに設置するので熱には特に強いゴムが使用されます。自動車にはこのほかにも約30種類のゴム製品が使われています。

免震装置

免震装置は地震大国日本にとって、なくてはならないものです。この装置は、ゴムと金属の板を交互に重ねた積層ゴムでできています。この金属の強度とゴムの柔軟性を活かして、地震が来たときに建物が大きな被害を受けないよう地震のエネルギーを分散させます。それによって揺れを軽減し倒壊を防いでくれるのです。また免震装置のおかげで室内の家具なども倒れずに済むので、二次災害を防ぐことができます。

毎日の生活に欠かせない、便利なゴム

ゴムは私たちの生活に密接な関係があり、とても便利なものです。それなのに、言われるまでその存在に気づかないのは、それだけ身の回りに当たり前のように溶け込んでいるということでしょう。大手タイヤメーカーでは、全国の工場で見学を受け付けています。ゴム製造に興味がある人は、出かけてみていかがですか?

制作:工場タイムズ編集部

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