靴やメガネをきれいにするとき、表面をていねいに磨きますよね。モノづくりの現場、工場でも製品をきれいに磨く工程があります。その工程を「研磨加工」と呼びます。
研磨加工と一口に言ってもたくさんの種類があり、製品の素材によって磨き方を使い分けます。そんな研磨加工ですが、磨くときにはダイヤモンドが使われたりします。
ここでは研磨加工の種類と用途を紹介します。
研磨加工とは?
そもそも研磨加工とは、どんな仕事なのでしょう。
研磨加工は、製品をつくっている中でついた汚れやほこりを落とすために、製品の表面を磨き上げる作業です。完成したばかりのアルミニウムや鉄の加工品は、表面がでこぼこしていて色がくすんでいます。研磨剤と呼ばれる表面を磨く粉と布を使って、金属らしいツヤを出しています。
プラモデルをつくるとき「やすり」や「布」で仕上げをした経験がある人もいるのではないでしょうか。作業中についたゴミを落としながら、細かな形の調整をする作業も研磨加工に含みます。専用の機械を使った作業と手作業の大きく二種類の研磨加工があります。
研磨加工は、製品の見た目を良くすることができます。製品の仕上がりが価格を左右することもあるので、モノづくりにおいて大切な工程と言えるでしょう。家電や金属アクセサリーなど、どんな製品でも細かい部分まで配慮されている製品の方が、買う人からしたら嬉しいですよね。滑らかな質感や手触りにすることで、製品の完成度や価値をあげることができます。
機械による研磨
研磨に使われる機械にはいくつかの種類があります。代表的な機械の特徴と用途を見てみましょう。
機械による研磨
バレル研磨
大きな容器の中に研磨剤と加工品を入れ、振動・回転させることで表面を磨きます。イメージは、ドラム式の洗濯機。研磨剤と洗いたい加工品を入れてスイッチを入れると、表面の汚れを落としてくれます。
自動車などの機械部品を磨くときに使う技術です。数が多い小物を一度にまとめて研磨することができます。また、加工品のバリ取りをした後にも良く使う技術です。バリ取りとは加工後にできたトゲを取り、滑らかに仕上げる作業のこと。一つずつていねいに仕上げるというよりは、早く磨きたいときに使う機械と言えるでしょう。
バフ研磨
表面が布になっている機械に研磨剤をつけ、製品を磨いていきます。凹凸がある表面を滑らかにするための技術です。メッキ仕上げの前後に使われることがあります。メッキ仕上げとは、加工品の素材とは違う金属を表面に塗り、仕上げる技術です。メッキ仕上げをする前に研磨することで、金属を塗りやすくなりコーティングの持ちが良くなります。
バフ研磨はツヤを出したい製品に向いています。機械を使うので硬い素材でも研磨をすることができます。最後に手作業で仕上げを行うことで、磨きカスが残らない美しい表面になります。
電解研磨
電解研磨とは、電解研磨溶液という電気を通す液体の中に電流を流すことで研磨をする方法のことです。製品を削って表面をきれいにするのではなく、加工品の表面を溶かすことで滑らかにすることができます。ステンレスやアルミニウム素材に向いています。細かい凹凸を取り、汚れが残りにくいのがメリットです。バフ研磨をした後の最後の仕上げとして使われることがあります。
手動による研磨
研磨をしたい製品が複雑な形をしていたり、繊細な磨き方が必要な場合は手作業となります。手作業が必要になる代表的な製品は、包丁やカメラレンズです。どのように作業するのか、磨き方と特徴をご紹介します。
砥石(といし)を使った研磨
包丁や刀は砥石を使って研磨します。砥石の上を滑らせることで古くなった刃物をよみがえらせる技術です。加工品に合わせて使用する砥石や研ぎ方が変わります。技術者によって、日本刀や包丁など得意な製品が異なります。
紙やすりを使った研磨
DIYなどの身近な工作でも使用することの多い紙やすりを使った研磨。サンドペーパーとも呼ばれ、研磨剤の粗さによって番号がつけられています。100番未満はとても粗く、400番以上など数が大きくなればより細かくなります。木材を研磨するのに向いています。
レンズ研磨
カメラや顕微鏡のレンズは、研磨装置を使った後手磨きで仕上げます。回転する作業台の上で、ダイヤモンドの研磨皿を使いながら形を整えます。研磨を終えた後には、拡大鏡を使って人の目で仕上がりを確かめていきます。傷がついていないか、出荷できる品質基準かどうかを見ます。
奥深い研磨加工の世界
たくさんの種類の研磨加工を使い分けて、製品のツヤはつくられています。機械を使うにしても手作業で仕上げるにしても、自分の思い通りのツヤに仕上げる喜びは大きいものです。日曜大工やDIYで使えるやすりは、紙やすりをはじめとして棒状や板状、目の粗さの違いと種類があるので使い分けてみると良いでしょう。
制作:工場タイムズ編集部