日本を訪れる外国人旅行者の数が増え、神社や寺、城などの日本の伝統的な文化財があらためて高い評価を受けています。
数百年以上の長い歴史を誇る文化財が全国にありますが、そうした文化財の修復や建築などを専門に行う「宮大工」という仕事があることをご存じでしょうか?
今回は、宮大工の仕事内容や、やりがい、宮大工になる方法についてご紹介します。
宮大工ってどんな仕事?大工との違いとは?
まず、宮大工の仕事内容と宮大工が持つ技術についてお伝えします。宮大工は普通の「大工」とどこが違うのでしょうか?
宮大工とは?
宮大工とは神社仏閣を専門に取り扱う大工のことで、飛鳥時代(592~710年)に僧侶が神社仏閣の修繕などを行っていたのが始まりとされています。別名「渡り大工」とも呼ばれていて、全国各地の神社仏閣の修理・解体作業や建築工事を行うため、家を離れて全国を渡り歩いている宮大工もいます。かつて神社仏閣が「お宮さん」と呼ばれていたことから、宮大工と呼ばれるようになったと伝えられています。
宮大工は国から認められた技術を持っている
宮大工の特徴として「木材の切り出しや加工を自身の手で行う」という点が挙げられます。昔から神社仏閣の壁や屋根は、釘を使わない「木組み」という工法で作られているため、現在でも木材の一つひとつを宮大工自身が加工しているのです。そのため宮大工の仕事は専門性が高く、すべての技術を習得するのに10年以上の修業が必要であるとされています。宮大工の中には「文化財保存技術者」という人間国宝級の評価を得ている人もいます。
宮大工になるためにはどうしたら良い?
宮大工として活躍したいという人のために、宮大工になれる可能性がある方法をお伝えします。
宮大工になる方法
宮大工として働くのに必要な資格はありませんが、神社仏閣を専門に手掛ける工務店は数が少ないため、未経験からいきなりそういうところに就職するのは難しいかもしれません。まず一般的な大工として働き、ある程度の経験を積んだ後で、宮大工の求人を探すのが良いでしょう。ほかには伝統建築を学べる専門学校や大学に進学し、知識と技術を身につけるという方法もあります。ただし、どんなに経験があったとしても、宮大工としては「初心者」からのスタートになります。
宮大工に向いている人
宮大工は神社仏閣を専門に取り扱う仕事なので、「神社仏閣に興味がある人」や「日本の歴史・文化に関する知識を持ち合わせている人」が向いています。一般建築物の大工もそうですが、宮大工の仕事も手作業で行う力仕事が多いので、体力に自信がある人が良いでしょう。また、時には建造物に特殊な装飾などを手作業で施すこともありますので、「手先が器用な人」や「モノづくりが好きな人」も、宮大工に向いている人の条件に挙げられます。歴史ある日本の建造物に携われる仕事であるため、日本の伝統を守っていきたいと思っている人にはピッタリの仕事です。
宮大工だけじゃない!日本の文化を守るお仕事
神社仏閣などの文化財建造物の修理に携わっているのは宮大工だけではありません。「文化財保存修理技術者」と「木工技能者」について紹介します。
文化財保存修理技術者
文化財保存修理技術者とは「公益財団法人 文化財建造物保存技術協会」が認める技術者のことです。宮大工は主に神社仏閣における大工としての仕事がメインですが、文化財保存修理技術者は、建造物の修理を行うにあたって歴史や過去の事例などを調べ、どのような建造物に仕上げるのかという方向性を決めて計画を立てるなど、日本の文化財建造物を後世に伝えるための技術を引き継ぐ役割を担っています。
木工技能者
文化財建造物の修理経験を持つ宮大工が受けられる「木工技能者研修」という研修制度を修了した人のことを、木工技能者と呼びます。この研修を受講するためには、年齢が満38歳未満で、なおかつ文化財建造物の修理経験が最低でも2年以上あることが条件となります。
数百年後の未来まで技術を伝える「宮大工」というお仕事
宮大工は高齢化が進んでいて、人数も現在は100人を切るところまで減少していると言われています。また、一般建築物の大工であれば比較的若いうちに独り立ちすることもできますが、宮大工の場合は技術を習得して一人前になるまでに一定以上の時間がかかります。しかし、歴史的な建造物の修理に携われるだけでなく、自分が手がけた建造物が数百年後まで残るという点は、宮大工ならではの醍醐味です。日本の文化や伝統に関心が高い人にとって、宮大工は一生をかけて取り組める仕事と言えるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部