家電製品から自動車、家具、時計など身近にあるモノには、いろいろなネジが使われています。
ネジは、よく見かけるようなシンプルなタイプから、複雑な形をしたモノまで幅広い種類があります。
モノの安全性に大きくかかわるネジ。工場ではどのようにつくられているのでしょうか?
今回は、ネジの種類や製造工程をご紹介します。
こんなに種類がある「ネジ」
ネジの種類を説明する前に、まずはネジの歴史や用途についてお伝えします。
ネジは何のために生まれたの?
ネジの起源、歴史
現在のような形のネジが日本で初めて使用されたのは、今から472年前の1543年と言われています。この年、種子島へ漂着したポルトガル人から火縄銃が伝わりましたが、その銃に使われていたのがネジだったのです。これが、日本におけるネジ文化のはじまりだとされています。
江戸時代の約250年間にわたる鎖国政策によって日本のネジの歴史はいったん途絶えます。江戸時代は「ネジのない文化」だったのです。その後、鎖国が解除された1800年代前半に再びネジが輸入されるようになり、明治維新以降、日本の近代化へと結びつくきっかけをつくりました。
ネジの用途
身近な家電製品や自動車に多くのネジが使われており、その数は、家電で50~100本、自動車なら3000本あると言われます。さらに、飛行機のように大きなものになると、なんと300万本ものネジが使われることもあるのです。
ネジとボルトって違うの?
ネジのほかに、ビスやボルトといった言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。それぞれどう違うのでしょうか?
ネジ
ネジとは、部品と部品が動かないようにする金具のことです。ネジ山(軸部分にあるらせん状のギザギザ)によって種類分けがされます。また、穴をあけなくても、そのままドライバーでねじ込んで使える「タッピングネジ」という種類もあります。
ビス
ネジとビスは、ほぼ同じです。フランス語の「vis」からとった言葉で、つまり日本語とフランス語の違いということになります。ただし、現在では小さくて短いネジのことを「ビス」と呼ぶ場合が多いです。
ボルト
ボルトについてもはっきりした定義はなく、サイズが大きめのネジのことを「ボルト」と呼ぶことが多いです。ボルトをはめる際には、一緒にナットを使います。ネジ本体のことを「おねじ」と呼ぶのに対し、ナットのように単独では使用できないモノのことを「めねじ」と呼びます。
ネジはどのようにつくられているの?
ネジを製造する際には、材料切断・頭部成形・転造などの工程に分けられます。それぞれの工程について説明します。
ネジの製造工程
材料切断
まずは、必要なサイズに材料を切断する作業です。基本的には、機械を使って自動で切断します。
頭部成形
頭部成形をする際には、パンチ(工具の一種)によってだいたいの成形をし、その後もう一度パンチをして本成形をするという工程を踏みます。これは、一回の圧力で成形をすると、圧力が強すぎて破損してしまうおそれがあるためです。
転造
ネジ山をつくるために使われるのが、転造盤という機械です。ネジのギザギザをかたどったプレートが固定されており、そこにネジを通すことによって強い力が加わり、ネジ山がつくられるという仕組みです。
ネジの製造技術
成形するための圧造加工(圧力を加えて金属を変形させること)にも種類があります。一般的には、常温で圧力をかける冷間圧造です。ほかに、金属を熱してから圧力をかける温間加工・熱間加工が行われます。
ネジをつくる工場によって、製造工程や使われている機械、技術は違います。それぞれの方法によって、現在のような豊富な種類のネジが出来上がっているのです。
世界で活躍する日本のネジ!
日本の技術を活かして世界で活躍するネジは数多くあります。今回はその中の一例をご紹介します。
新幹線で使われている緩まないネジ
新幹線には、「緩まないネジ」が使われています。1本のボルトにナットを2つ使うという方法を取り入れることによって、絶対に緩まないネジが完成しました。新幹線には約2万本のボルトが使われています。緩まないネジを使うことで新幹線の事故をなくすと同時に、ネジの緩み点検の工程を減らし、人件費の削減を実現しました。新幹線の安全神話は、ネジが支えているのです。
世界最大級のネジ
世界最大級のネジは、7メートル以上あります。信頼性が高く、高速道路・ビル・橋といった大規模建設の際に使われています。
ナット無しで緩まないボルト
通常、ボルトを使用する際にはナットを合わせて使いますが、ナットがなくても緩まないボルトが開発されました。一度はめると、専用工具を使わない限り外すことができないという徹底したつくりで、事故の防止に役立てられています。また、ナットがないので、軽量化が図れる点も大きなメリットです。
現在も進化し続けるネジ
身の回りで当たり前のように使われているネジですが、その種類は非常に豊富で、私たちの安全を守るために日々研究が進められています。これからもさらなる安全を追求して、ネジは進化し続けていくでしょう。人気ドラマや小説で取り上げられたことで、ネジに興味を持っている人もいると思います。ネジ工場の見学は、いろいろなところで行われているので、興味のある人は参加してみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部