コーヒーは昔、薬として用いられたという言い伝えがあるほど、人類とのお付き合いの長い歴史を持っています。
最近では、その成分の1つであるカフェインには、血行をよくしたり、二日酔いの原因であるアセトアルデヒドを素早く分解する効能があると提唱する研究者もいるようです。
日本においては長い間ごく一部のリッチな人々のための特別な飲み物でしたが、大正、昭和と愛好家の幅が広がっていきました。今では楽しみ方も喫茶店、家庭、コンビニ、街角の缶コーヒーと、多彩です。
今回は、中でも身近な缶コーヒーが、工場でどう作られているかについてご紹介します。
コーヒーって、いつから飲まれているの?
コーヒーの起源にはさまざまな説がありますが、中世のアラブ世界で好まれ、やがて近世ヨーロッパに広まり人気となります。世界の文化の伝播にあわせてコーヒーも広まっていきました。
人類発祥の地、アフリカ大陸はコーヒーの原産地でもあります。人が初めてコーヒーを口にしたのは6世紀頃とされます。もっぱら薬として飲まれていたようですが、14世紀中頃には世界最初のコーヒー店がコンスタンチノープル(現在のトルコ・イスタンブール)に登場、嗜好品として定着しました。ヨーロッパに伝わったのが16世紀中頃で、やがてイギリスのコーヒーハウス、フランスのカフェが軒を連ねるようになります。日本にコーヒーを伝えたのは、江戸時代の初め、長崎・出島のオランダ商人です。明治の末くらいになって、ようやく一般の人でも楽しめるような値段になり、太平洋戦争が終わって一気に愛好家を増やしました。
コーヒーの代表的な原種はアラビカ種とロブスタ種です。アラビカ種はエチオピア原産で、産地の土や気候により味や香りの違いが出やすい性質を持っています。銘柄として知られるブルーマウンテンやコナ、ブラジル、コロンビア、モカ、ガテマラ、マンデリンなど、ストレートで飲まれる銘柄はほとんどがアラビカ種です。ロブスタ種はベトナムやブラジルが主な生産地です。安価ですが、苦みが強く特有の香りもあってストレートで飲むのには適さず、インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として使われます。
缶コーヒー大好き! 工場でどうやって作られているか教えて
缶コーヒーは、実は日本で独自に発明されたものです。缶コーヒーは、生豆の品質確認からはじまり、「焙煎(ばいせん)」「粉砕」「抽出」「調合」「包装」などの工程を経て製品となります。「焙煎」では、コーヒー豆を焙煎機に入れ、約200~230℃の高温でローストしていきます。次の「粉砕」で、焙煎した豆を大きな粉砕機にかけます。商品の特性に応じて、挽きムラを出さず、粒の大きさが一定になるようにコントロールしています。「抽出」はドリップ式でコーヒー液を抽出する工程です。毎回同じ品質のコーヒー液を抽出するために、抽出温度や時間、湯と豆の比率といった条件は自動制御されています。商品ごとに決められた原料(コーヒー液、ミルク、砂糖など)を手順書通りに投入し混ぜ合わせるのが「調合」です。こうして出来上がった中味を缶に充填(じゅうてん)し、ふたをかぶせて密封したあと、レトルト釜という圧力釜に数万缶単位で入れて100℃以上の温度で加熱殺菌します。X線を使って缶の内容量を確認し、缶底に賞味期限を印字してようやく完了です。これら各工程での検査結果は管理システムに記録され、万一のトラブル時には生産履歴がたどれるようにしてあります。
コーヒーにも資格があった! コーヒーインストラクターとは?
奥が深く、楽しみ方も多様なコーヒー。ただ飲むだけでは満足できない人のための資格があります。
正しく、専門的な知識を深めたいという人には「コーヒーインストラクター」という資格があります。これは全日本コーヒー商工組合連合会がつくった認定制度です。コーヒーインストラクター2級、1級とあり、対人販売の際に必要なコーヒーに関する基本的な知識や、コーヒーを鑑定する技術をテストします。コーヒーインストラクター2級は、コーヒーを飲むだけでは物足りず、もっと詳しく勉強したい人が対象です。コーヒーインストラクター1級は、より高度で専門的なコーヒーの知識と鑑定技術が問われます。2015年12月現在での認定取得者は、2級が9512人、1級が812人です。コーヒーインストラクターの資格を持っているからといって、大きなメリットがあるわけではありません。ただ、コーヒー業界に携わっている人、これから携わりたい人、その方面への転職、起業を考えている人にとっては、仕事へのモチベーションを高め、自信やプライドにつながります。
缶コーヒーは日本の発明、その工場見学がおもしろい
オーストリアではコーヒーにオレンジリキュールをたらし、アルコール度数の高い果実酒を加えるのがドイツ流、メキシコではコーヒーにマシュマロを入れます。生活の中でなくてはならない飲み物となったコーヒーは、日本では缶コーヒーという独自の製品を生み出しました。大人の工場見学がはやっている昨今、缶コーヒーを販売しているメーカーの中には、工場見学を受け付けているところがあります。コーヒー愛好家や、缶コーヒーの製造工程を見てみたい人は、ぜひ一度お出かけください。
制作:工場タイムズ編集部