「レンチ」ってどんなものかご存じですか?
レンチの名前を聞いたことがない人でも、「スパナ」なら知っているという人がいるのではないかと思います。形状が少し違うものの、基本的にはレンチもスパナと同じように、ボルトやナットを回して締め付け作業を行う工具のことです。DIYが趣味だったり、車の修理やタイヤ交換をしたことがある人なら使ったことがあるかもしれませんね。
レンチには、「めがねレンチ」や「モンキーレンチ」などいろいろな種類があります。また、そのほとんどが手に握って使うものなので、使いこなしているうちに愛着が湧いてくる工具でもあります。
今回は、レンチについてご紹介します。
レンチの種類とは?
レンチにはいろいろな種類がありますが、なかでも代表的なものは、めがねレンチとモンキーレンチです。
めがねレンチ
両端に円形の口部(ボルトをはめるところ)が付いたレンチです。見た目がめがねのようなので、この名称がついています。グリップ(柄)やオフセット部(口部とグリップを結ぶ部分)の長さ・形・角度にはいくつかの種類があり、用途によって使い分けます。スパナが留め具(ボルトやナット)を2点でとらえるのに対し、めがねレンチは6点でとらえます。そのため、外れにくく安定的に強い力をかけやすいことが特徴です。仕上げ留めには有効な工具と言えます。
モンキーレンチ
口部の手前に「ウォーム」と呼ばれる調節部が付いていて、これをクルクル回して口部を広げたり狭くすることができます。口部には「上あご」と「下あご」があり、上あごは動かず、下あごが動いて口径を調整します。そのため、いろいろな口径の留め具に対応でき、使い勝手の良いレンチです。留め具のサイズを選ばないため、複数のレンチを持ち歩かずに済みます。その半面、留め具を2点でしかつかめないので、固定しづらく、やや力をかけづらい面もあります。無理に力を入れすぎると、留め具が変形してしまうことがあり、仕上げ作業には不向きです。
ちなみに、レンチとスパナの違いですが、一般的には先端が開いているものがスパナ、閉じているものがレンチと呼ばれています。しかし本来は、同一の意味を表す言葉で、日本に入った際に区別されるようになりました。イギリス英語ではスパナ、アメリカの英語ではレンチと呼んでいて、それぞれ現地へ行けば日本で言うレンチもスパナも同一の単語で表します。
レンチの正しい使い方とは?
次に、レンチの使い方について説明します。ここでも、めがねレンチとモンキーレンチを例に挙げます。
めがねレンチ
めがねレンチは、ハンドルの両側に口径の違う口部がついています。使用する留め具のサイズを確認してぴったりと合うものを選びましょう。各口部の近くに幅の大きさが記してありますので、これを基準にしてください。口径がぴったりのレンチを用意したら、留め具に対して深く差し込みます。狭い場所にはオフセットの角度がついたものを選びましょう。きちんと奥まで差し込み、ハンドルが留め具と水平になったら力を加えて回します。サイズが合わないレンチを使っていると十分な力がかからない上、留め具がつぶれてしまうおそれがあるので、よく確認しましょう。
モンキーレンチ
モンキーレンチは口径部の調整ができるので、ある程度大きめに開いた状態で上あごを留め具に当てがい、ウォームを使ってきちんと噛み合う大きさになるまで下あごを締めていきます。レンチを回すときは、下あごが必ず下側になるように回すようにしましょう。逆方向に回すと留め具が壊れる原因になります。大きなサイズのモンキーレンチで小さな留め具を回すときは、力の加減が特に大切です。
こんなレンチも! 手を使わない「インパクトレンチ」とは?
歯ブラシに電動歯ブラシがあるように、レンチにも手動以外の動力を使うレンチがあります。それが「インパクトレンチ」です。インパクトレンチには電動式(充電式)のものと、コンプレッサー(気体を圧縮して圧力を高めた後、押し出す装置)で圧縮された空気を動力とする「エアーツール」の2つのタイプがあります。パワーは電動式よりも圧縮エアーを使う「エアーインパクトレンチ」のほうが強力です。これを使えば、力仕事で筋肉痛になりやすいタイヤ交換も楽々対応できるでしょう。手動に比べて大幅に時間を短縮できるので、エアーインパクトレンチは今や、自動車整備にはなくてはならない存在になっています。
その半面、使用時に大きな音が出ることや比較的高価なものが多いため、一般の人が購入するにはハードルが少し高い面があります。さらに、パワーが強いため留め具を破損させてしまうおそれもあります。自分でタイヤ交換をする場合は、家庭用電源で対応可能な電動インパクトレンチが販売されているので、そちらを使用するほうが良いでしょう。
適材適所が大切!レンチを使い分けて効率の良い作業を
レンチの歴史はとても古く、古代ローマ時代(紀元前)の建築物にボルトやナットが認められることから、その時代にはレンチが使われていた可能性が高いと見られています。現代では用途に応じて、いろいろなレンチが使われています。電動やエアーツールのレンチもあります。効率の良い作業は、適切なレンチ選びから。用途や留め具の大きさ・形に応じて、力を発揮しやすいレンチを選びましょう。興味のある人は、ホームセンターのレンチ売り場で担当者に話を聞いてみるのが良いでしょう。
制作:工場タイムズ編集部