世の中には、テレビ、自動車、パソコンなど、大量生産品があふれています。これら製品の製造に欠かせないのが金型です。
しかし、ひとくちに金型といっても、形づくる素材やデザインによって種類が異なります。
そこで、ここでは基本的な金型の種類と、それぞれの特徴などをご紹介します。
金型って何?
金型とは、製品を大量生産する際の「型(かた)」のこと。その型にプラスチックや樹脂、金属などの素材を流し込んで、まったく同じ形のモノをたくさんつくります。そのため、つくりたいものの形を、正確にかつ安定して再現できるような型をつくる必要があります。そこで、丈夫で変形も少ない金属を使ってつくる型である「金型」が一般的です。
金型設計とは?
金型には、いくつかの種類があります。その特徴と、設計に必要な技術をご紹介します。金型設計の仕事でつくる金型には、どのような種類があるのでしょうか。
プラスチック用金型
プラスチック部品の多くは、この金型を使ってつくられます。溶かしたプラスチック材料を金型に圧力をかけながら流し込み、冷やして成形します。
プラスチック用金型は、つくりたいモノの大きさをもとに設計します。しかし、まったく同じ寸法にはしません。なぜなら、プラスチックは溶けている状態から冷やされて固まると、一定の割合で縮んでしまうからです。これを「成形収縮」といいます。設計するときは、この割合を予測して一回り大きく寸法をとる必要があります。
プラスチックは、家電や自動車、雑貨類など、あらゆる部品に使われています。それと同様に、プラスチック用金型も非常に幅広い業界で使われています。
プレス用金型
プレス機という工作機械に取り付ける金型です。まず、プレス機に凹型、凸型のプレス用金型を取りつけます。そして、そのあいだに鋼などの材料を置き、数百トン、数千トンというものすごい力で上下から押し付けます。そうすることで、あいだに挟んだ材料が、金型の形通りに変形されます。
自動車のボディやドア部分など、板状の金属を加工するのを得意としています。100円玉や500円玉などの硬貨をはじめ、車のモーターなどにも幅広く使われています。
鍛造用金型
鍛造(たんぞう)という技術を使うときに、使用する金型を鍛造用金型といいます。鍛造には、金属を熱して加工する「熱間鍛造」と、常温で加工する「冷間鍛造」があります。いずれも丈夫な金属製品をつくれるため、高い強度が求められる製品加工分野で採用されています。例えば、エンジン内のピストン部品や、ジェット機のファンなどに使われています。
鋳造用金型
鋳造(ちゅうぞう)という技術を使うときの型のうち、金属でつくられたものを鋳造用金型といいます。また、鋳造で使われる型には、砂でつくるものもあります。これを「鋳型(いがた)」と呼びます。金属を液状にして流し込むので、プレス加工や鍛造に比べて、デザインの自由度が高いのが特徴です。また、金属も冷えて固まるとわずかに縮みます。そのため、プラスチック用金型と同じように、製品図面よりも多少大きめに設計します。
ダイカスト用金型
ダイカストとは金型鋳造法のひとつで、溶かしたアルミ合金や亜鉛合金などの材料を金型に流し込んで成形します。この型は、非常に薄く、細かいデザインにも対応することができます。細かいなめらかな線を形づくるのも得意で、デジタルカメラのボディなど、幅広い家電製品で活用されています。
金型設計って誰でもできるの?
金型設計をする人を「金型設計者」と呼んだりします。この金型設計者になるためには、金型の設計を、専門にしている会社に入社するのが一つの道です。家電や自動車などのメーカーや部品メーカーのうち、自社で金型を製作している会社に就職する道もあります。
また、未経験者を募集している会社もあります。まずは、金型の基本を理解することが第一歩。材料を熱したり冷やしたり、圧力を加えたり伸ばしたりしたときに、金型がどのように変化するのかを知りましょう。基礎を覚えたら、実際に金型を設計するノウハウを習得します。最近は「3次元CAD」というソフトウェアを使ってパソコンで設計することが一般的です。設計知識はもちろん、業務を通じて、CADを操作するノウハウも身につけましょう。
まとめ
材料やつくりたい製品によって、いろいろな金型を使い分けていることがわかってもらえたと思います。ここで紹介した金型の種類は、基礎中の基礎です。「プラスチック用金型しか設計しない」という人であっても、金型設計者なら最低限知っておきたい内容です。これから金型設計を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
また、金型設計者ではなくても、自動車や精密機械、家電などのモノづくりの設計をする人であれば、押さえておきたい知識でもあります。金型のことを知っておくことで、つくりたいモノに合わせた、ベストな選択ができるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部