今、みなさんが見ているパソコンやスマホの画面をはじめ、多くの製品に利用されている「半導体」は、電化製品をつくるにあたって重要な存在です。
半導体を実際に売っているところ見たことがある人は、少ないかもしれません。今回は陰の立役者とも言える「半導体」に関する知識と資格についてご紹介していきます。
半導体とは?
物質には、電気を通しやすい金銀銅や鉄、アルミなどの「導体」と、電気を通しにくいゴムやガラス、セラミックなどの「絶縁体」があります。「半導体」はその中間にあると言われる物質で、主に炭素(カーボン)やゲルマニウム、シリコンなどの素材でつくられます。
半導体は温度によって電気の通りやすさ(抵抗率)が変わります。温度が低いときはほとんど電気を通しませんが、高温になるにつれて電気が通りやすい状態となります。その性質が電化製品の操作や調整に役立つことから、半導体は、エアコンや自動車、銀行のATM、医療器具をはじめ、炊飯器、冷蔵庫などの家電、パソコンやスマホの端末にいたるまで、多くの電化製品で使われているのです。
半導体の製造工程を知ろう!
電化製品になくてはならない存在である「半導体」の製造工程について少しご説明していきます。
半導体はどうやって設計するの?
たとえば、炊飯器とスマホでは機械の動かし方はまったく違いますよね。機械をどのように動かしたいのか、機能、性能、コストなどを踏まえたうえで、まずコンピューター上で、電子回路を設計する「論理回路設計」を行います。
そして、論理回路設計で作成した回路図をもとに、半導体の土台となる「ICチップ」上に回路をどのように配置するかを決める「レイアウト設計」を行います。最後に実際に動かして効率よく動くように、配置を換えて細かな調整をします。
「フォトマスク作成」って何に使うの?
フォトマスクとは、半導体を生産する際の「型」になる部品です。設計した回路の図を「フォトマスク」に焼き付けて、写真のネガのようなものを作成します。そのフォトマスクを使って、「ウェーハ」(下記参照)に半導体に回路図を転写する仕組みです。フォトマスクを使うのは、とても小さな「ウェーハ」に効率よく、正確に回路図を書き込むためです。
「ウェーハ製造」とは?
シリコンなどの素材を使い、薄い円盤の形に切り出したものを「ウェーハ」と言います。ICチップをつくるために必要な土台になるもので、フォトマスクを使ってウェーハの表面に回路図を焼き付けます。1枚のウェーハに対して10~100もの回路図が焼き付けられることがあります。焼き付けが終わったウェーハは余分なゴミなどを取り除き、表面をきれいに仕上げます。
電極形成をしていよいよ動く!
ウェーハの上に、外部の配線と接続するためのアルミ金属膜を形成して電極を取り付けます。出来上がったウェーハは一つ一つ切り出され、ちゃんと動くか確認し、良品だけが「ICチップ」として使われます。
組み立てて最後の仕上げ
ICチップを固定するためのフレームに、ウェーハを取り付けます。金線などを使ってしっかり配線し、チップに傷がつかないように樹脂などで囲います。湿度と温度を変えても長持ちするかどうか調べ、試験を通過したものだけが半導体として認められるのです。
半導体に関わる資格があるの?
ICチップなどの半導体製品を製造する技能を証明する資格に、「半導体製品製造技能士」という国家資格があります。
「半導体製品製造技能士」とは?
半導体を製造し組み立てるときは、目に見えないホコリやチリを取り除いた環境で作業を行います。またフォトマスクを作成したり、組み立てるときには特殊な技術を使います。そのような環境を整え、半導体の生産ができる人が「半導体製品製造技能士」です。
等級の違いを教えて!
そもそも「半導体製品製造技能士」は二つの職種に分かれます。フォトマスクを使ってウェーハを製造する工程までの「集積回路チップ製造作業」と回路図が転写されたウェーハを製品として組み立てる「集積回路組立て作業」です。
「集積回路チップ製造作業」と「集積回路組立て作業」はどちらも1級と2級に分かれます。7年以上実務の経験があるか、または2級合格後2年以上実務の経験があれば1級を、2年以上実務の経験があれば2級を受験することができます。現場での経験を積んだ後、技術レベルの確認として、2級から受験することを考えてみましょう。
ちなみに特級になると、少し内容が変わります。1級に合格した後、5年以上実務の経験をすれば受験することができますが、内容はリーダーや工場の運営に関わる人を対象にしています。
試験内容に関しては、半導体に関係する電気や製図、安全衛生、公害防止などの基礎知識が出題される学科試験があります。それに加え実技試験では、「集積回路チップ製造作業」と「集積回路組立て作業」どちらとも、製造工程の中で必要な技術を部分的に実践します。
時給アップになるかも!? あなたのスキルを必要とする工場がある!
「半導体製品製造技能士」の資格を受験するには、現場での経験や実績を積むことが一つの条件になります。資格取得を目標にすれば積極的に仕事に取り組めるようになるのではないでしょうか。試験問題の中には、製造工程で起こる異常現象の原因を説明する問題もあります。もし何かトラブルがあったときでも面倒だと思うのではなく、実践的な学びの機会だと思うことができれば業務にも前向きに取り組めるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部