自社製品を出荷している会社や、独自に仕入れた商品を販売している小売店では欠かすことのできない在庫管理。それに対しては、ただ在庫の数をチェックするだけというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、正しい方法で行わないと本来期待できるはずのメリットが得られないばかりか、業務上の損失を生み出してしまう恐れもあります。
今回はそんな在庫に関する適正管理の必要性や方法、実践する際に押さえておくべきポイントをご紹介します。
そもそも在庫とは?
まずは、ここで取り上げる「在庫」の定義について見ていきましょう。
会社やお店が保有する商品の総量
自社で製造した商品や、独自に仕入れた商品を販売している会社やお店では、受注生産制などの場合を除いて、受注数よりも多い商品を確保しています。これらの商品のうち出荷先や購入者が決まっていない商品は倉庫などで管理され、出荷先や購入者が決まるたびに出荷・販売がされていきます。
以上のことから、在庫とは「製造・仕入れが行われ、いつでも出荷・販売できる状態になっている商品のうち、出荷先・購入者が決まっておらず、倉庫などで管理されているもの」と定義することができます。
在庫の確保は欠品による機会損失を防止する上で不可欠
それでは、なぜ在庫を確保する必要があるのか考えてみましょう。
この点に関しては、お店での在庫管理を例に挙げて考えてみると分かりやすくなります。例えば、お店で販売している特定の商品について在庫を1個しか確保していないと、その商品の購入を希望する人が2人来店した場合、後から来た1人にはその商品を販売することができません。このような、購入希望者がいるにもかかわらず、なんらかの理由から商品を販売できず、利益を得るチャンスを逃してしまうことを「機会損失」といいます。
このようなお店での機会損失を防止するためには、複数の購入希望者が来店した際に備えて、複数の在庫を確保しておく必要があります。よって、在庫を確保することは、欠品による機会損失を防止する上で不可欠となります。
販売する商品の品質を維持する上でも重要
小売店で販売する商品の中には不良品など、品質に問題のあるものが混ざっている可能性があります。しかし商品を仕入れた後、そのまま店頭に並べてすぐに販売してしまうと、このような品質に問題のある商品がお客さんの手に渡ってしまうかもしれません。
仕入れた商品を一度在庫として保管しておくと販売するまでに一定の時間を確保できることから、その間に商品の品質チェックも行えるため、品質に問題のある商品を誤って販売してしまう危険性も少なくなります。
このことから、販売する商品の品質を維持することもまた、在庫を確保することの目的といえます。
在庫管理の必要性
在庫はただ確保するだけでなく、適切な方法によって管理することも重要となります。続いては在庫管理の必要性について見ていきましょう。
在庫過多は不良在庫を生み出す原因になりやすい
機会損失を防止しようとすると、どうしても在庫を多く確保しようとしてしまいがちです。しかし、在庫過多の状態になってしまうと不良在庫(=消費期限切れなどを引き起こす可能性のある、在庫として売れずに残っているもの)を生み出します。
これでは結果的に機会損失以上の損失が出てしまう危険性があり、また不良在庫に対しては、需要が短期間で変わる流行ものの商品を取り扱う際にはなおさら注意が必要です。
在庫管理をしっかりと行うと在庫数を常にコントロールできるため、このような在庫過多が不良在庫を生み出すことも防止できます。また不良在庫数を削減できれば、その分保管場所にも余裕ができ、別の商品を取り扱うといったこともできるようになるため、商品を販売する側にとっては大きなメリットがあります。
在庫不足は機会損失を生み出す
一方で在庫過多の状態にならないよう意識をし過ぎると、逆に在庫不足の状態に陥ってしまう場合もあります。在庫不足の状態が発生してしまうと、お客さんに対して十分な供給ができなくなってしまうため、この場合も機会損失が生じてしまいます。また、在庫不足の状態が続いてしまうと不良品の交換にも対応できなくなってしまうため、せっかく得た売上金を返金することでも機会損失が生じてしまいます。
在庫管理をしっかり行い、常に適正量の在庫を確保できていれば、このような機会損失は防止できます。より多くの利益を上げるためにも、在庫管理は不可欠です。
経年劣化する商品はなおさら在庫管理が重要
在庫管理においては在庫として保管している商品の品質に気をかけることも重要となります。例えば食品の場合、在庫として保管している間も商品は徐々に劣化していくため、できるだけ早く販売することが求められます。
在庫管理をしっかりと行っていると、このような経年劣化しやすい商品も品質が悪くなってしまう前に販売できるため、食品をはじめとした経年劣化しやすい商品を在庫として保管する際には、なおさら在庫管理を徹底する必要があります。
適正な在庫にコントロールするポイント
在庫管理によって在庫をコントロールする際には、以下のポイントを抑えることが重要です。
売れ筋商品を見極めて適量を発注する
在庫過多と在庫不足の両方に注意しながら利益を上げていくためには、売れ筋商品を見極めるのが有効です。例えば、特定の商品だけがよく売れている場合、その商品のみ発注量を増やすと在庫過多と在庫不足のどちらの状態に陥ることもなく利益を上げやすくなります。
ただし、売れ筋商品はさまざまな条件によって変化するため、そのときの流行や近隣店舗の状況だけを鵜呑みにするのではなく、自店ならではの売れ筋商品を見極めることも重要です。
在庫回転率を上げる
商品が在庫として保管されている期間が長くなってしまうと十分な利益は上げられません。そのため、在庫管理では販売価格を下げるといった対策を練ることで在庫回転率を上げる必要もあります。
また、在庫回転率を上げることは、品質がよい状態で商品を販売することや、新たに取り扱う商品の保管スペースを確保するためにも欠かせないため、さまざまなメリットがあるといえます。
棚卸を行う
在庫管理を行いながら十分な利益を出すためには、棚卸を行うことで「棚卸資産」を把握することも重要となります。
棚卸ではその時点での在庫状況を把握できるだけでなく、すべての在庫を資産と考え、その金額を算出することもできるため、それ以降の経営方針を立てる際などに役立てることもできます。また、棚卸では盗難などによる損失がどれくらいあったのかということも分かるため、在庫の管理方法や商品の販売方法に反映することもできます。
品質のチェックも同時に行う
在庫管理を行う際には保管している在庫の品質もチェックするようにしましょう。食品を取り扱っているお店では、このことは日常的に行われているかもしれませんが、劣化速度が遅い商品でも保管期間が長引くと品質が悪化する可能性があるため、在庫管理と一緒に定期的に実施するのがおすすめです。
そのときの状況に合った在庫管理を実践しよう!
無在庫販売のような特殊な業務形態を除いて、在庫を確保することは商品を販売する側にとって不可欠といえます。しかし、在庫管理がしっかりと行われていないと在庫過多や在庫不足を引き起こし、大きな損失が出てしまう危険性もあります。
このことから、在庫管理を行う際には基本的なセオリーを抑えるだけでなく、そのときの状況に合わせた臨機応変な対応を心掛けるようにすると、より多くの利益に結び付けることができるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部