「有機溶剤」って何だか難しそうな言葉ですよね。でもこれ、私たちの生活に密接な関係があるんです。
たとえば家の床にツヤを出す、何かの表面をきれいにするなど、塗装や印刷の工程で良く使われます。
とても便利な半面、「換気の悪い所では使わない」など注意点があります。安全に使うために、「有機溶剤作業主任者」という資格を持つ人が各職場に付き添います。
今回は「有機溶剤作業主任者」とはどんな資格なのか紹介します。
有機溶剤はどこで使われている?
有機溶剤とは?
モノを溶かす性質を持つ物質です。特に油など水に溶けにくいものを溶かすときに良く使われます。たとえば、塗装や印刷などの仕事では機械類の洗浄やインクの拭き取りに使われます。
有機溶剤を使うお仕事は?
有機溶剤はさまざまな現場で使われています。いくつか例を挙げてみます。
・医薬品、農薬、火薬、写真用薬品の製造・化学繊維、合成樹脂、ゴムなどの製造 ・香料、甘味料の製造・印刷、文字の書き込み、描画(印刷加工や看板作成など)・自動車や家などの塗装、ツヤ出し、防水(塗料販売など)・接着・洗浄(掃除、クリーニングなど)・有機溶剤の製造(有機溶剤をつくる仕事)
このように、生活にかかわる多くのモノに有機溶剤が活用されているのです。
「有機溶剤作業主任者」とは? 何をする?
とても便利な有機溶剤ですが、その半面、人体に有害な物質が含まれています。
有機溶剤は危ない?
正しい使い方をすれば安全です。有機溶剤は一定の気温だと液体です。しかし常温で蒸発しやすいため、作業をしている人が息をするときに吸い込んでしまうことがあります。また、皮膚から吸収されてしまう性質があります。吸い込んでしまうと中毒症状を引き起こすことがあり、めまいや頭痛、吐き気などの症状を引き起こします。そのため、有機溶剤を扱う職場では「有機溶剤作業主任者」の資格を持った人が作業に当たります。
「有機溶剤作業主任者」とは?
「有機溶剤作業主任者」とは、労働安全衛生法で決められている国家資格です。有機溶剤を使った作業を安全に進めるために、現場で指揮や監督をするための資格です。有機溶剤を使うときは必ず有機溶剤作業主任者が必要なため、資格を持っていれば給料面などで優遇されることが多いです。
「危険物取扱者」との違いは?
「有機溶剤主任者」と「危険物取扱者」は取り扱えるものが違います。有機溶剤の中には、危険物に指定されているものもあります。そもそも危険物とは大量になると取り扱いに気を付けなければいけない物質のことです。手の消毒に使うエタノールや自動車の燃料となるガソリンも危険物に含まれます。
「有機溶剤作業主任者」は、有機溶剤のみを扱うことができる資格です。有機溶剤作業主任者が取り扱える範囲以外の危険物を扱うのは「危険物取扱者」です。また、「危険物取扱者」は有機溶剤に含まれていても危険物の範囲以外であれば扱うことはできません。働いている環境によっては、両方の資格があれば活躍できる場所が広がります。
「有機溶剤作業主任者」の技能講習を受けるには?
「有機溶剤作業主任者」は18歳以上であれば取得することができます。ただし例外として、工業高校で学んでいる生徒などは18歳未満でも試験を受けることができます。二日間の講習を受け、修了試験に合格すると「有機溶剤作業主任者」の資格が取得できます。
技能講習の受け方
「有機溶剤作業主任者」は人気が高い資格のひとつで、全国で月に一回くらいのペースで講習が開かれています。詳しいことは労働安全衛生協会や各都道府県の労働安全課、労働基準協会連合会に問い合わせて確認するとよいでしょう。
技能講習の内容は?
「健康障害」やその予防方法、作業環境の改善方法、保護具、法律などを二日間学び、最後に試験を受けます。試験は講習の二日目に行われます。
受験料
講習を行う教習機関ごとに違うため、日程について問い合わせたときに一緒に確認しておくとよいでしょう。目安としては講習料金が1万1000円で、さらに教材費が必要です。
対策ポイントは?
合格基準は各科目の得点率が40%以上で、全科目の合計得点が全体の60%以上を獲得することです。きちんと講習を受けて勉強すれば比較的容易に突破できますが、事前に予習をしておくと、合格率が高まるでしょう。「有機溶剤作業主任者」のテキストは書店でも発売されていますので、こういった教材を利用するとよいでしょう。
職場の安全と自分自身のために
「有機溶剤作業主任者」は有機溶剤を安全に使うための指導、監督をするための資格です。有機溶剤はいろいろな業界の現場で使われているので持っていると重宝されます。「危険物取扱者」も合わせて取れば、鬼に金棒。興味がある人は講習が居住地の近くで開催されていないか確認してみてください。
制作:工場タイムズ編集部