「プレス」という言葉は、「押す」「圧力をかける」という意味です。
工場の場合、素材の形を変えて、新たに部品や製品を生み出すときに「プレス加工」の技術が使われます。「プレス加工」は日本のモノづくりの現場で重要な役割を果たしています。
今回は「プレス加工」とは何か、そしてプレス工場で行われている仕事内容について見てみましょう。
プレス加工って?
プレス加工とはどのような加工技術なのでしょうか?どのような製品をつくっているのでしょうか?
「プレス」と聞いて、何となく「機械で鉄板を挟んで形を変えること」とイメージしている人もいるでしょう。この「形を変える」ということを正確に言うと、「材料を図面どおりの規格やサイズに形づくりして、その形を維持させること」です。
加工方法はまず、金型(かながた)と呼ばれる金属の型で材料を上下から挟みます。そのうえで機械によって圧力を加え、その金型の形どおりに材料の形を変化させるのです。つまり、「切る」「曲げる」「絞る」の組み合わせによって材料を図面どおりの形にするのがプレス加工です。
製造技術の中では、プレス加工と鍛造(たんぞう)の違いがよく取り上げられます。鍛造とは、刀や包丁をつくるときのように材料を熱してハンマーで叩いて形づくりする技術です。叩いて材料に圧力をかけるところはプレス加工と似ています。大きな違いは「素材の厚みを変えるかどうか」です。厚みをあまり変えない場合はプレス加工で、厚みを変化させるのであれば鍛造になります。
次に、プレス加工の製品にはどのようなモノがあるか見てみましょう。たとえば、自動車のドアやボンネットなどがイメージしやすい製品です。しかし、もっと身近で意外なモノがプレス加工によってつくられています。それは硬貨です。よく見ると小さくて細かい模様が入っていますが、これはすべてプレス加工によってつくられています。また、パソコンに内蔵されている部品のように外からは見えない部品もプレス加工の技術が使われています。
プレス機械ってどんなの?
では、どのような機械を使ってプレス加工は行われるのでしょうか?プレス機械には機械式プレスと液圧式プレスと呼ばれるものがあります。
機械式プレス
モーターの回転運動で機械を動かし、プレス加工をする。
液圧式プレス
油や水の圧力などによって機械を動かし、プレス加工をする。
液圧式プレスのほうが、稼働や停止の指示が素早く出せるため、遠隔操作に向いています。しかし液体を使って機械を動かすため、液漏れなどが発生することがあり、不具合の原因を見つける場合には時間がかかります。メンテナンスのしやすさだけを比べると機械式のほうが勝っています。
いずれにせよ、プレス機械は稼働中に大きなエネルギーを使います。そのため、稼働中の安全管理が重要です。技術の進歩によって安全性は大きく向上しました。マニュアルをしっかり守って機械を扱うことが大切です。
プレスの仕事と魅力
プレスの仕事は、プレス機を使って大小さまざまな製品を形づくることです。日本のプレス加工業は世界でも最先端という評価を得ています。プレス技術が進歩することによって、これまでになかった部品が生み出されます。それをもとに新しい製品が生まれ、日々の生活を豊かにします。
また、素材を加工する際に「削る」という工程がないため、金属以外にもプラスチックや紙の加工ができます。つまり、多くの素材に潜んでいる特性を活かして、今までになかったような製品を誕生させる可能性を追求できます。
機械の扱いに慣れ、圧力のかけ方や金型のズレ、変化に関して敏感に気づくようになれば、それはもう一級の職人です。一級の職人がいる小さな町工場が優れた技術を開発し、海外から受注がくるようになった企業もあります。
世界でも最先端のプレス技術に携わり、新たな製品を生み出すことで私たちの生活を豊かにするお手伝いができる。そこにプレスの仕事の魅力があります。
日本の最先端技術を支えるプレス加工
プレス加工によってつくられるものは、ドアノブのように日常生活に溶け込んでいるものもありますし、最新の家電製品のパーツとして最先端技術の一端を担っている製品もあります。技術は日々進歩しており、小さな町工場が世界の注目を集めることもあります。工場見学を行っているところも全国にあり、またYouTubeでプレス加工の動画が公開されています。興味がある人はのぞいてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部