ある意識調査によると、消費者のうち70%近くの人が「モノを買うときにデザインを重視する」と答えました。
お客さんが見た目の印象で商品を購入するかどうか判断しているので、企業もデザインを良くすることに力を入れています。
今回はモノづくりにおけるデザインについて、詳しく見ていきましょう。
デザインの役割
デザインと聞くと「見た目の良し悪し」と考える人が多いです。しかしデザインには「見た目の良さ」と「使いやすさ」の2種類の意味があります。「見た目の良さ」とは製品のイメージに影響を与える形や色などです。「使いやすさ」とはターゲットが使いこなせる機能や形になっているかを言います。
さらに「使いやすい」デザインとは使う人にとって使いやすいデザインであることに加えてほかにも意味を持ちます。「使い方を間違えない」デザイン、「事故を未然に防ぐための」デザインといったことも大切なポイントです。
近年では技術の進歩によって、いろいろなデザインがつくられるようになりました。デザイン技術に自信のある企業が集まり、2015年には「付加価値ある意匠デザインを実現するモノづくり技術2015」と呼ばれるイベントが東京で開かれました。その中で紹介されたデザイン例をいくつか紹介しましょう。
鏡面加工
電子部品の製造や加工を行う企業が、100ナノクラスの鏡面加工技術を紹介しました。100ナノクラスで加工ができるということは、1億分の1 mm単位での超精密な加工ができるということです。とても細かな部分のデザイン調整ができます。
ハイグロス・マット技術
樹脂製品の設計や製造を行う企業は、「ハイグロス・マット」技術を紹介しました。ハイグロスは光沢やツヤがあることで、マットは逆にツヤがないことです。樹脂を溶かし、型に流し込んで形をつくる技術で今までにない色を出すことに成功しました。
なぜ今、デザインを重視するのか
中小企業庁はデザインの開発技術に対して支援をしていくことを決めました。モノづくり技術に関係する法律で、デザイン技術の支援を定めています。この法律は中小企業がモノづくりの研究開発をすることで技術を高め、国際的な競争力を上げることを目的としています。
またヒット商品を生むには機能性が良いだけでなく、デザインの良さが関係しています。第一印象で多くの人の目を引くことができる商品をつくることができれば、ヒット商品を生むことができます。
最近では、複雑なデザインよりもシンプルなモノがヒットすることが多いです。シンプルなデザインの方がより人々の印象に残る傾向があります。シンプルなデザインは飽きがこないだけでなく、使いやすいというメリットがあります。その理由として、余分なものをそぎ落とすことで老若男女の比較的幅広い世代で使いこなせるからです。
また、デザインが人々の生活に自然となじむことが大切です。人間は日々の行動のうち、95%は無意識で行っています。例えば、トイレの場所を示すマークや階段の通行方向を示すマークは迷いなく理解できると思います。
そのように日常生活の中で当たり前のように使えるデザインを「ビヘイビアデザイン」と言います。アメリカでこの研究が進められています。ヒット商品を作り出すためには、消費者が長い間使ってくれることが大切です。そこで、私達の生活の一部になじむ商品にするにはどのようなデザインが良いのかを考えます。
デザイン賞とは?
日本にはいくつかデザインに関係する賞があります。有名なデザイン賞を受賞すれば、商品の売り上げアップなどの効果が期待されます。日本で有名なデザイン賞の中から、グッドデザイン賞と機械工業デザイン賞をご紹介します。
グッドデザイン賞
グッドデザイン賞は、生活をより豊かにした商品に与えられる賞です。日本デザイン振興会が「良いデザインを選び、そのことが私達の生活や産業、社会全体をより豊かなものにすること」を目的として行っています。グッドデザイン賞に選ばれると、Gマークを商品に付けることができます。Gマークは半世紀以上前につくられたマークで、多くの人に知られています。そのためGマークを付けると、商品や企業のイメージアップができます。
機械工業デザイン賞
機械工業デザイン賞は、より優れた機能や性能を持った機械に与えられる賞です。日刊工業新聞社が主催していて、外部の有名な専門家を含めた審査委員会が商品を選びます。機械工業デザイン賞はメディアでも取り上げられるので、自社の商品を宣伝できるメリットがあります。
デザインの大切さを知る
デザインは、商品の売れ行きに影響する要素になっています。機能が充実しているものはもちろん、その中でもデザインが良いものが選ばれます。そうした背景から、国がデザイン開発を積極的に支援するなどの対策が行われています。モノづくりにおけるデザインの大切さを知ることで、商品を選ぶときの見方が変わるかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部