動物から採取した、生の状態の皮(原皮)をなめしたものを「革」といいます。
革を加工して作られる皮革製品には、財布や靴、バッグなどの小さなものから、衣類やインテリアまで、たくさんの種類があります。皮革製品は、私たちにとって身近で、生活に欠かせないものなのです。
今回は、そんな皮革製品の種類や製造工程についてご紹介します。
皮革って、どんな種類があるの?
皮革にはいろいろな種類がありますが、素材となる動物によってそれぞれ違う魅力があります。そのため、皮革を加工する際は、その魅力を引き出すように行われます。
牛革
流通量が多く、代表的な皮革です。丈夫で加工しやすいため、用途は靴やバッグ、家具など幅広く、牛の育った月数や雌雄の別により、細かく呼び名が分かれています。なかでも、生後3カ月以内の仔牛の革は、薄いのにキメが細かく、ベビーカーフと呼ばれる最高級素材です。
山羊革
丈夫で軽く、柔らかいのが魅力です。靴や手袋などに利用されます。特にキッドスキンと呼ばれる仔山羊の革は、薄い上に繊維が緻密で、上質な素材です。
馬革
柔軟性と光沢の美しさが特徴的です。衣料品のほか、ランドセルなどにも加工されます。コードバンと呼ばれるお尻部分の革は、採取量が少なく貴重で、美しい光沢を持つ優れた素材です。
羊革
強度が劣る分、手触りの良さが抜群です。手袋や帽子、本の装丁にも用いられます。毛付きの状態でコートとしても使われます。
豚革
唯一、日本国内で生産可能な皮革です。バッグや衣類など利用範囲も広く、海外に輸出もされています。革の表面に開いた毛穴によって通気性が良くなっているため、靴の中敷にも使われています。ほかにも鹿・ダチョウ・トカゲ・ワニなど、魅力的な素材がたくさんあります。
革の製造工程とは?
原皮を革に加工するために行う「なめし」とは、簡単に言えば、皮を薬品に漬けて防腐性や耐熱性を与える作業のことです。準備から仕上げまでの工程を順にお伝えします。
1)工場に運ばれた原皮は、水洗いし、汚れをきれいに落とします。
2)次に、石灰液に漬けて皮の繊維をほぐし、銀面(皮の表面側)と床面(裏側)に分割します。
3)皮の厚みを整えたら、残っている石灰を取り除きます。なめし剤(なめす時に使う薬剤)は酸性でないと溶けないため、石灰によりアルカリ性になっている皮を、塩と酸により中和します。これで、なめすための準備は完了です。
4)皮をなめします。なめす方法には、主にクロムという化合物をなめし剤として使う「クロムなめし」や、植物由来のタンニンを利用する「タンニンなめし」、両方を組み合わせた「コンビネーションなめし」などがあります。皮をなめし剤に浸透させることで、皮のコラーゲン繊維がなめし剤に反応して変わり、腐りにくく熱に強い状態に変化します。その後、なめされた革を、製品の用途に応じて仕上げていきます。
5)革の表面を削って厚みを調節し、染色します。
6)専用の機械で余分な水分を絞りながら革を伸ばし、乾燥させる。
7)塗装をして艶を出し、細かい色ムラを均一にします。
こうしてようやく、製品として加工する前の「革」となるのです。
革製品製造工の仕事が知りたい!
いろいろな素材の革を加工し、財布、バッグなどの製品に仕上げるのが、革製品製造工の仕事です。特別な資格を取らなくても、仕事に就き、製造工として腕を磨くことができます。
革製品製造工の、主な作業工程を説明します。デザインをもとに図面を引き、型紙をおこします。この型紙から、革を裁断するための抜き型を作ります。細かい傷や表面のしわなど、革の表情を見ながら、ひとつひとつ手作業で裁断していきます。パーツができたら、完成品をイメージしながら生地の伸びや折り返す部分などを計算し、厚みを細かく調整します。ここでのさじ加減が仕上がりの美しさを左右するポイントです。そして最後に組み立てです。部品に歪みが生じないようにしながら縫製して、完成です。こうして見ると難しそうに思われるかもしれませんが、実はひとつひとつの作業を丁寧に、きっちりこなすことが成功の秘訣。モノづくりが好きで、根気よく、コツコツ努力できる人に向いている仕事です。また、几帳面な人、細かい作業が得意な人も活躍できるでしょう。
知るほどに深まる、革製品製造工の魅力!
耐久性に優れ、使い込むうちに味わいの増す革製品。大切に手入れをすれば一生使い続けられるという点も魅力です。安価な大量生産品や、使い捨ての商品も便利ですが、そんな時代だからこそ、本物の革製品にこだわって選ぶ人も大勢います。自分が手掛けた製品が、誰かの生涯の相棒になるかもしれない。そんな思いが、革製品製造工のやりがいにつながっています。
制作:工場タイムズ編集部