1台の車に10年以上乗り続ける! という方も少なくないと思いますが、車の部品の中には消耗品が多いため、定期的なメンテナンスや交換を行わないと正常に走れなくなったり、燃焼効率が悪くなってしまうことがあります。
今回は、車に搭載されている消耗品の数々の中から「インジェクター」という部品に着目し、その機能の詳細や洗浄方法、交換方法をご紹介します。
インジェクターとは?
まずは「インジェクター」という部品の基本情報について見ていきましょう。
車やバイクなどに設置される、エンジン内で燃料を噴射する装置
車やバイクに搭載されているエンジンは、燃料が安定して供給されないと正常に動きません。そのため、燃料タンクに入れたガソリンなどの燃料をただエンジンへ供給すれば良いわけではなく、エンジン内の空気量に合わせ、供給する燃料の量を調節する部品が必要となります。
インジェクターとは、このような車やバイクを動かすために必要な燃料をエンジン内に供給する働きをもつ不可欠な部品です。その働きは、主にエンジン内へ燃料を噴射することで、より安定した供給を実現するためにコンピュータによって制御されています。
かつては『キャブレーター』が使われていた
現在車やバイクに搭載されているインジェクターは、コンピュータ制御によってより正確な燃料の噴射ができるようになっていますが、このような高性能なインジェクターが開発される前は、制御機能の低い噴射装置が使われていました。この装置のことを「キャブレーター」と呼び、インジェクターはこのキャブレーターに替わる形で普及した部品でもあります。
インジェクターならではのメリットとは?
かつて使われていたキャブレーターに替わる形で普及したインジェクターは、その働きがコンピュータで制御されていることから、気温、気圧、湿度といった条件に合わせてエンジンへの燃料噴射ができるようになりました。これにより、車やバイクが天候による影響を受けにくくなったという点はインジェクターならではのメリットといえるでしょう。
また、インジェクターはコンピュータ制御されていることから複雑な構造をしているのでは? とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には非常にシンプルな構造をしており、突然の故障などの心配が少ないという点もインジェクターならではのメリットといえます。
消耗品であるためメンテナンスが欠かせない
一方、インジェクターは構造がシンプルであるとはいえ、消耗品であることには変わりはなく、長期的に使用していると徐々にその機能は低下してしまいます。よって、同じ車やバイクに乗り続ける場合は、定期的なメンテナンスが必要であるということも忘れないようにしましょう。
インジェクターの洗浄方法
インジェクターを長期的に使う上で欠かすことができないメンテナンスのひとつが「洗浄」です。続いては、インジェクターの洗浄方法と注意点をご紹介します。
専用クリーナーを使用する
インジェクターの洗浄方法の中でも最も手っ取り早いのが「専用クリーナーを使う」という方法です。インジェクターは現在使われているほとんどすべての車、バイクに搭載されていることから、その洗浄時に使う専用クリーナーは、カー用品店などでも多く販売されており簡単に入手できるようになっています。
また、インジェクターはエンジン内に搭載された部品のひとつであることから、インジェクター専用のクリーナーだけでなく、エンジン全体の洗浄に対応できるクリーナーを使っても問題ありません。
燃料タンクに添加剤を入れて洗浄する方法
インジェクターを洗浄する際に使う専用クリーナーの中でも特に多いのが、燃料タンクに注入して洗浄を行う添加剤入りのクリーナーです。このタイプのクリーナーは基本的に燃料タンクに注入するだけで洗浄が完了するため、手軽にメンテナンスが行えるという点は最も大きなメリットといえます。
ただし、このタイプのクリーナーには「四輪ガソリンエンジン専用」や「ディーゼル車専用」などのように、対応できるエンジンや車の種類が限定されているものが多いため、購入時には製品情報をよく確認する必要があります。また、特に2ストローク(2サイクルエンジンを搭載している)車のバイクには対応していないクリーナーも多いことから、不安な場合は整備店で洗浄を行ってもらうのがよいでしょう。
インジェクターを取りはずして洗浄する方法
インジェクターはシンプルな構造をしていることから、手順をしっかりと把握した上で行えば、素人でも取りはずすことができます。
取りはずしたインジェクターはクリーナーを燃料タンクに注入する場合とは異なり、ピンポイントでの洗浄ができるようになるため、よりきれいな状態にし、燃料の燃焼効率を向上させることもできます。
ただし、インジェクターを取りはずして行う洗浄方法としては「パーツクリーナー」や「超音波洗浄機」を使った方がより良いとされているため、それらを準備するために若干お金がかかるということは覚えておいたほうがよいでしょう。
インジェクターの交換方法
インジェクターは消耗品であることから、定期的に洗浄などのメンテナンスを行っていても、寿命がきてしまえば交換しなくてはなりません。続いては、インジェクターの交換目安と交換方法をご紹介します。
10万キロ、もしくは10年で交換が必要
インジェクターが消耗し始めても、初めのうちは走行時に感じられるほどの変化が生じないことがあります。しかし、走行時の機能に障害が出るほどのインジェクター消耗が始まったら、できるだけ早く交換する必要があります。交換目安は必ず覚えておかなくてはなりません。
交換目安としては、走行距離が10万キロに達したころと考えるのが最も分かりやすいでしょう。また購入から10年という目安もありますが、これには乗車頻度などにも大きく関係することから、やはり走行距離を一番の目安として考えるのがおすすめです。
交換手順
続いては、インジェクターの交換手順を確認していきましょう。
1. 燃料を抜く
燃料タンク内に燃料が残っている状態でインジェクターを取りはずしてしまうと燃料漏れを起こす可能性があり非常に危険です。そのため、インジェクター交換を行う前はしっかりと燃料を抜いておくようにしてください。
2. インジェクター周辺のパーツをはずす
燃料を抜いたら、続いてはインジェクター周辺にあるパーツを外していきます。具体的には「ヒューズ」や「バッテリーのマイナス端子」「ホース」などを取りはずす必要があります。
3. インジェクターをはずす
周辺のパーツを取りはずすとインジェクターが見える状態になるので、インジェクターに直結しているデリバリーパイプを外し、インジェクターを取りはずします。
4. 新しいインジェクターを取りつける
続いて、古いインジェクターがついていた箇所に新しいインジェクターを取りつけ、そこに直結していたデリバリーパイプも取りつけます。
5. 外したパーツをもとに戻す
取りはずしたときの順序をさかのぼる形でパーツを元の状態に戻していきます。ここではパーツの種類が多いため、不安な場合はしっかりとメモなどを残しておきましょう。
6. コンピュータ部分のリセット
インジェクターはコンピュータ制御であるため、新しく取りつけたインジェクターを正常に動かすためにはコンピュータ部分のリセットが必要です。しかし、この作業を個人で行うのは難しいことから、チューニングショップなどで依頼するのがよいでしょう。
定期的な洗浄・交換で安心・安全な運転ができる
エンジンへ燃料を噴射するインジェクターは、車を人の体に例えると心臓へ血液を送る大静脈のような重要な存在であるといえます。そのため、この部分に障害が発生してしまうと人間の体と同様に車の働きにも大きな問題が発生してしまいます。
このことから、車やバイクの所有者には、インジェクターの働きやメンテナンス方法、交換方法を知っておくことが求められます。
制作:工場タイムズ編集部