半導体製造装置と計測機器の製造・販売を行う株式会社東京精密は、クライアントとの「WIN-WINの協力関係」をモットーに、世界トップ水準の製品開発を行っている。
日本ものづくりワールドにて「航空機部品の計測ソリューションのご紹介」というテーマのもと、航空機部品の計測ソリューションについてお話を伺った。
航空部品の「エンジン部品」を計測するうえでの課題
エンジン部品はさまざまな部品から構成されている。その中でも代表的なのは「CASE(ケース)」「BLADE(ブレード)」「SHAFT(シャフト)」「BLISK(ブリスク)」と呼ばれる部品だ。これらの部品には、それぞれ計測するうえでの課題がある。
CASEの計測にコストがかかる
たとえば、エンジンの外側を覆う部品である「CASE」は非常にサイズが大きい。3次元座標測定機を用いる場合、一般的には外側からセンサを侵入させて、CASEの周りをぐるっと1周する必要がある。
そのため、一回り大きいサイズの測定機を導入しなければならず、コストがかかる。CASEの内部にはさまざまな部品がとりつけられているため検査項目が多く、手間や時間がかかるのもネックだ。
BLADEは正確な測定が難しい
「BLADE」は、航空機のエンジン内部にある翼のような形をした単体部品だ。先端部分が尖っており、翼面は3次元的にねじれている。製品によっては、内部に空洞があるものもあるという。
測定の際には断面を計測するが、エッジ部分は非常に尖っているため、正確な測定・評価が難しい。曲率がなめらかな背腹部に関しては接触式センサでの検査が可能だが、急激に曲率が変わるエッジ部分に関しては、スタイラスの直径や速度設定が複雑になりやすいのだ。
また、狙っている位置と異なる部分が接触し、目的とする部分の高さのデータが取れないという不具合が起きる場合がある。内部の空洞にいたっては、そもそも測定自体ができないという課題もあり、測定が難しい理由となっている。
株式会社東京精密が提案する「課題を解決する測定方法」
株式会社東京精密は、エンジン部品の計測時の課題を解決する方法として、回転テーブルの使用と非接触の白色光距離センサの使用を推奨している。
回転テーブルでCASEの測定にかかる時間やコストを軽減
回転テーブルは、CASEの測定に使用する。回転テーブルを用いることで、センサではなくワーク(測定の対象)を回転させることができる。センサ自体を動かさずにすむため、移動時の誤差要因も小さくなる。全周を測定するために、角度の異なる複数のスタイラスを交換しながら測定する手間も省け、短い測定時間で高精度な検査が可能になる。 また、測定機の設置面積が小さくなり、コストも抑えられる点も、大きなメリットといえるだろう。
非接触のセンサでBLADE測定の精度を高める
エッジ部分の測定・検査が難しいBLADEに対しては、非接触のセンサが提案された。ここで紹介されたのは、株式会社東京精密の非接触白色光距離センサ「Dotscan(ドットスキャン)」だ。Dotscanと回転テーブルを組み合わせることで、簡単かつ精度の高いBLADE測定が可能となった。
BLADEの形状に合わせて回転テーブルが動き、XYZの駆動と回転テーブルの4軸が連動して測定を行う。白色光距離センサの光軸に対し、ワーク面が直角になるように測定が行われるため、高精度に測定できる。
専用ソフトウェアでより迅速かつ精度の高い測定が可能に
株式会社東京精密の「XYZAX Opt-BLISK」は、難しいイメージのあるBLISKの測定が簡単かつ精密に行える製品だ。測定したい断面の位置を設定するだけで、しっかりとデータを取ることができる。
測定に必要な動きやプローブヘッドの角度などの設定はすべてCADモデルに基づきソフトウェアが判断するため、手間がかからない。もちろん、事前の干渉チェックも可能であり、自動で衝突しない測定プログラムを作成できる。
新開発の非接触センサは、ブレード形状に合わせプローブ回転、測定光入射角を最適化し、高精度かつ高速に翼面やエッジ部の測定を可能としている。これにより、従来の接触式測定に対し約60%の測定時間短縮が可能になった。
「XYZAX Opt-BLISK」では、断面プロファイル、設計偏差値プロファイル、各種パラメータ出力、許容値比較(OK / NG)などの出力が可能だ。測定データは専用ソフト「Blade Pro」に転送し、解析を行える。
進化し続ける精密機器の計測ソリューション
今回は株式会社東京精密の「航空機部品の計測ソリューション」について、詳しくお話を伺った。
WIN-WINの協力関係をモットーに「高レベルな技術革新が行われている環境でどう発展していくか?」を考え、さまざまな製品を製造し続けている株式会社東京精密。今後も革新的な技術で、ものづくりの世界を支えてくれるだろう。
取材先:株式会社東京精密
URL:https://www.accretech.jp/
制作:工場タイムズ編集部