2022年6月に開催された「日本ものづくりワールド」。
出展企業のひとつ、1944年創業の株式会社村田製作所(京都府)は、テレビやPC、スマートフォンなどの電子機器に使われる電子部品の生産を通じ、文化の発展に貢献している。
今回の日本ものづくりワールドでは、サイコロ型デバイス「ジグレット」を展示していたので、担当者に話を伺った。
サイコロ型デバイス「ジグレット」とは
サイコロ型デバイス「ジグレット」は、端的に言えば誰でも簡単に現場改善できるツールだ。
本来、手作業でのデータ収集は手書きやエクセル入力など、記憶に頼って行うため正確さに欠けてしまう。
しかし、ジグレットであればSIMを内蔵しているサイコロの面を変えるだけで、時間や回数のカウント、点灯や消灯を検知して計測データをクラウド上に自動でアップロードすることができる。
つまり、作業しているその場でデータの蓄積、分析を可能にするというわけだ。
直感的な使用方法
ジグレットの使い方はいたってシンプルだ。
- 1.サイコロの面に意味づけ(シナリオ設定)する
- 2.サイコロの取りたい情報が意味づけされた面を上にする
- 3.自動でクラウド上にデータが集積される
非常に簡単な操作方法なので、現場導入時の説明も容易だ。「Aという作業開始時にサイコロの1の面を上にする」だけでシナリオ設定された情報が蓄積されていく
データの入力作業もないので、製造現場にPCが苦手な人がいても問題ない。まさに現場の負担を削減できる設計となっている。
見えなかった情報を可視化
ジグレット活用のメリットは、使い方がシンプルなだけではない。
例えば、「標準作業時間」と「実際の作業時間」に差があった場合、ベテランと新人で作業時間の差があるか否かなど、既存のシステムでは集積しにくい情報をデータとして可視化できる点も、ジグレットの大きな強みだ。
「サイコロの面を変えるだけの簡単なものだからこそ、数値として見える化できる」と担当者は述べる。
IoT導入において通信環境を整える必要がなく、余分なコストをカットできる点が魅力だ。
SIM導入のメリット
工場では、通信環境が良くないことが多い。しかし、SIMを導入したジグレットであれば携帯と同じ要領でクラウド上にデータを収集することができる。
現場最優先の考え
サイコロ型デバイスの特徴を活かし「六面体以外に増やすことはできないのか」という質問を投げてみた。すると以下の回答が返ってきた。
「(ジグレットは)作業現場でサイコロを回すだけで、簡単にデータを収集できることが最大の特徴です。あまり面を多くしてしまうと複雑になってしまうので、もし6種類以上のデータを取りたい場合はサイコロを2つ使えば問題ありません」
上記の回答からは、「現場優先」の考えが伺える。あくまで、サイコロ型デバイスを使うのは現場の作業者だからこそ、ストレスなく正しく使えることを理想としているようだ。
また、ジグレットはデータの集積だけでなく、連絡用としても使うことができる。例えば、特定の面を上にすることで「エンジニアへメールを送る」というシナリオ設定しておけば、緊急時にサイコロの面を変えるだけで、現場からエンジニアへ速やかに情報を伝えることができる。
工夫次第で、様々な用途が期待できそうだ。
持続可能な社会への貢献に向けて
株式会社村田製作所のトップメッセージである「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」というメッセージは、ジグレットにも通底している。
日本の製造業における持続可能性を担保していくためには、先人たちの知恵や技術を次世代へ継承し、国際競争に打ち勝てる力を磨き続けていくことが不可欠だ。
しかし、実際の作業現場では「暗黙の了解」や「今までのルーティン」といった、現場に入らないと共有できない情報も少なくない。
課題の原因分析においても人の直感や感覚といった、いわゆるマンパワーによる改善施策を講じているケースも多い。
そのような場合において、ジグレットは作業現場の負担なく、今まで可視化することのできなかったノウハウや課題解決の情報を私たちに示してくれるだろう。
持続可能な社会の実現に向け、今後も株式会社村田製作所の「現場想いの製品」に注目していきたい。
取材先:株式会社村田製作所
URL:https://www.murata.com
制作:工場タイムズ編集部