日常生活でよく目に入り、当たり前に使っているものでも、意外に名前を知らないものってありませんか? 中には「え?正式名称があったの?」なんてものも。
今回の記事では身近にあるけれど、意外に知らないものの名前をご紹介します。
①車のタイヤのヒゲ
車のタイヤに見られるあのヒゲのようなものに見覚えはないでしょうか?
「そういえば確かにあったな・・・」くらい薄い印象の、あのヒゲ。実はちゃんと名前があります。
名称:「スピュー」
走っているうちに自然になくなってしまい、主に新品タイヤだけに見られるこちらのスピュー。何かの目的で意図的に付けられているのではないようです。
その秘密はタイヤの製造過程の終盤。型に入れて成形する際に、圧力加熱をしタイヤ内に空気が残らないようにしますが、その際に空気抜きの穴から空気と一緒に押し出されたゴムがスピューの正体。
タイヤ内の圧力を均一に保つためにとても大切な工程を踏んだ結果にできたのが、スピューだったのです。これを知ると「この子たちのおかげで安全なタイヤができたんだな」と愛おしくなりますね。
新品の間だけの短いお付き合いかもしれませんが、自然になくなってしまうまであたたかく見守っていきましょう。
②本のカバーの内側に折り返された部分
普段何気なく手に取っている本。本のカバーや帯の内側に折り曲げた部分に名前があったことをご存知でしたか?
名称:「そで」
そでの部分には著者のプロフィールやコメント、コミックなら前号までのあらすじが載っていたりします。
最近では、そでの部分に凝ったデザインの本も増えてきました。ここを綺麗に織り込むのも技術が必要なんだそう。
③本についているしおり
ハードカバーの本や、文庫本についている紐状のしおり。電車でつり革につかまって片手で読んでいても落とすことがなく便利ですよね。しおりで伝わりますが、あれにも名称があるんです!
名称:「スピン」
本の背表紙の上部に糊付けされ、本の対角線より5 cmほど長いものが主流のスピン。
現在は、糊付けと本からはみ出さないようページの中に織り込まれるまでの工程が機械で自動的に行われています。確かに店頭に並んでいる本は、スピンはページの中に織り込まれていて本の外出ていることはないですよね。
現在ではコストダウン化が進み、文庫本ではスピンを付けない出版社が増えたそう。反対に、デザイン性を求めカラフルなスピンを何本もつけるという試みをする本も。デザインの違いを観察するのも、書店での楽しみのひとつになるかもしれませんね。
④夏の風物詩、豚の蚊取り線香入れ
夏になったことを感じさせる豚の蚊取り線香入れ。丸いフォルムと、どこかとぼけた顔がかわいいですよね。これにも名称があったことをご存知でしょうか?
名称:「蚊遣豚(かやりぶた)」
ちなみに、豚の形をしていない蚊取り線香入れ全般を蚊遣器(かやりき)といいます。それにしてもなぜ豚の形が主流なのでしょうか…?諸説あり、理由ははっきりとはしていません。
ひとつめの説は、土管に蚊取り線香を入れて使っていた養豚業者が、煙が散らないように口をすぼめてみたところその形状が豚に似ていたという説。
ふたつめは、大きめの徳利を横にして蚊取り線香入れとして使っていて、それが豚に似ていると気づき、お土産品として広まったのではないかという説。そのほか、豚は蚊に刺されにくいという伝承があったという説があります。
いずれにせよ、後世にも残していきたい古き良き伝統ですね。
⑤うちわの骨
暑い夏には欠かせないうちわ。うちわの骨の部分を何というかご存知でしょうか?
名称:「扇骨(せんこつ)、穂骨(ほこつ)」
扇骨・穂骨は、うちわづくりの工程で最も重要で、製造に携わる方々のこだわりの出る部分。あおいだ時に起きる風の強さはこの骨のしなり具合などによって決まります。
竹製のものが主流でしたが、近年はほとんどがプラスチック製。季節問わず、アイドルの応援グッズとしても販売されたりしていますね。
⑥食パンなどの袋の留め具
普段何気なく使っている、食パンの袋の留め具。じっと見ていると愛らしく見えてくる不思議な形です。
名称:「バッグ・クロージャー」
バッグ・クロージャーが生まれたのは1950年代のアメリカ。アメリカではパンの袋のためではなく、りんごの袋のために生産されたのが始まりです。日本では、ほとんどがパンに使われているといいます。
バッグ・クロージャーは、実は家庭で使える便利グッズとしても知られているそう。マスキングテープなどの先端につけて、テープの始まりを探す不便さを解消してくれたり、折り曲げて箸置きとして使うという強者も…!自分なりの使い道を編み出してみては?
⑦ものを送るときに使うプチプチ
ものを送る際や、引越しなどものを梱包する際に大活躍するプチプチ。幼いころ、誰もが潰して遊んだあれです。
名称:「気泡緩衝材(きほうかんしょうざい)」
元々は1950年代にアメリカで壁紙として製造された際に、偶然できた失敗作といわれています。
「掃除しやすい壁紙を」と、当時の主流だった紙の壁紙の上にビニールをかぶせたものを製造したところ、紙とビニールの間に気泡ができてしまったのが始まりといわれています。
まさかこの失敗が世界中で重宝される発明につながるとは、人生わからないものですね。
⑧野球選手が使う白い袋に入った粉
毎日熱戦が繰り広げられる甲子園。ピッチャーがマウンドで使っているあの白い袋に入った粉って、何?
名称:「ロジンバック(ロージンバック)」
白い粉の正体は炭酸マグネシウムなど主成分とした粉末。その粉末を布製の袋に入れたものがロジンバックで、叩いたり振ったりして自分の好きな量を出すことができ、滑り止めとして使います。
選手間で使用量の個性が出るのも面白いところ。頻繁かつ大量に使用することで有名な選手もいれば、ほとんど使わない選手も。ロジンバックに注目してスポーツ観戦をしても楽しいですね。
⑨アイスクリーム店で見るアイスを丸く盛り付ける器具
アイスが美味しい季節です。アイスクリーム店で店員さんが盛り付ける際に使っている半円状の器具の名前ご存知でしょうか?
名称:「アイスクリームディッシャー」
アイスクリームディッシャーはアメリカで誕生。アイスクリームを盛り付ける道具にはスクープもありますが、やはり見栄えの良い丸いアイスを盛り付けるならアイスクリームディッシャー!
最近では100円ショップなどでも購入できるので、ご自宅でも気軽に取り入れることができますよ。
⑩靴下を留める金具
靴下の口とつま先の2ヶ所をペアで離れないようにとめている、あの銀色の金具。「言われてみれば確かにあるな」くらいの薄い存在感のものですが、実は名称があるんですよ!
名称:「ソッパス(ソクパス)」
ソッパスは靴下専用の金具。この金具がソッパスと名付けられたのは、コンパスのような形をしているところから。
地域によって形状が異なり、東日本は丸、西日本は四角のものが多いのだそう。
これから靴下購入の際に、自分の地域はどちらが販売されているのか気にしてみると楽しいですね。
ソッパスは、靴下の検品後に手作業で付けられているとか。靴下売り場が美しく秩序を保っていられるのは、製造に携わる人の努力があるからなのですね。
まとめ
普段何気なく目に入って入るものの、意外に正式名称が知られていないものを10個ご紹介しました。
ご紹介したものは生活の主役にはなれないものばかりかもしれません。でも、製造業の方々や職人さんの想いが詰まっているんだなぁと思うと愛着が湧いてきますね。
みなさんもぜひ、意外に知らない身近なものの名前を他にもあれこれ調べてみてはいかがでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部