東京ビッグサイトで開催された日本ものづくりワールドにおいて、日本を代表する総合化学メーカーである三井化学グループの3Dプリンタ関連事業について担当者にお話を伺った。
三井化学は、石炭化学事業から始まり、1958年には日本で初めて石油化学コンビナートを築き、今に至るまで100年を超える歴史を有する。現在の事業ポートフォリオは、ライフ&ヘルスケア、モビリティ、ICT、ベーシック&グリーン・マテリアルズ分野と多岐に亘り、世界30か国以上にグローバル展開をしている先端化学のリーディングカンパニーである。
→今回の日本ものづくりワールドでは3Dプリンタ事業に参入している企業の展示も多いですが、どの業界をメインターゲットとして次世代3Dプリンタ展に出展しておられるのでしょうか
三井化学担当者:特定の業界を見据えた開発ではなく、技術力、素材を活かして新しいビジネスそのものを創出していきたいと考えています。
弊社は、エラストマーからエンジアリングプラスチックまで幅広い材料を保有しておりますが、現在、我々の開発チームは幅広い用途で活躍が期待できるポリプロピレン(PP)系コンパウンドに着目しています。強度の高さ、自由なデザインを実現できることを分かりやすくお伝えするために3Dプリンタで造形した椅子と机を展示しております。よろしければ、座ってみてください
→ こちらの椅子はユニークな形状をしていますが、とても座り心地が良いですね。カラーバリエーションも豊富で今までに見たことのないデザインの椅子だと思います。
それに非常に軽く持ち運びにも便利そうですね
三井化学担当者:ありがとうございます。
金型では製造が難しい薄型で中空の球体に近い形状の家具です。自由に造形できる3Dプリンタだからこそ、いままでにないデザインの家具を作ることもできます。
また、重さは4Kg程度と椅子としては非常に軽いですが、ベースとなる材料は三井化学グループで開発したPP系コンパウンドで作っており、とても強度が高く簡単には壊れません。
→一般的な製品ではどういったところで使う想定でしょうか
三井化学担当者:現在検討しているのは家具、自動車部品などを想定しています。
これまで試作品の作成に使われてきた3Dプリンタですが、
弊社の開発した素材でより3Dプリンタの強みを活かした造形も可能だと考えています。
→3Dプリンタにより様々なものが作れるようになっていますが、今後は市場において今後はなにが求められていくとお考えでしょうか?
三井化学担当者:造形するだけでなく、実際に使っていくために、製品としての品質面の保証や後加工で形を整えることも必要ですが、使用後に回収しリサイクルすることも重要と考えております。役割を終えた製品を3Dプリンタの材料として蘇らせることができれば、より自由自在なものづくりを実現することができます。
最終的にはお客様の要望に対して、材料設計、技術提供、さらには製品として開発するトータルソリューションを提供したいと思います。
こういった製品が普及すれば将来、家や街中で3Dプリンタで作られた様々な製品を見ることができるようになるかもしれない。
注1:ABS 3Dプリンタ用材料として広く普及している素材。耐久性や耐熱性に優れ、粘り強い性質を持っている
注2:ポリ乳酸 3Dプリンタ用材料でABSの反対の物性を持つ材料。地球に優しい植物由来の素材として注目されている
注3:PP系コンパウンド 自動車、家電製品、雑貨などの工業製品で一般的に使われている素材で耐久性に富む
取材先:三井化学株式会社
URL:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/index.htm
制作:工場タイムズ編集部