2022年6月に開催された「日本ものづくりワールド」。 出展企業のひとつ富士高周波工業株式会社は、2009年より他社に先駆けレーザー焼入れの受託加工を開始した。リーディングカンパニーとしての、技術と歩みについて代表取締役の後藤氏に伺った。
-レーザー焼入れとは具体的にどのような技術なのでしょうか?
後藤氏:
もともと昔からある高周波焼入れという技術があります。その高周波焼入れより、さらに精密に焼き入れができる技術がレーザー焼入れとなります。当社は2009年から開始しておりましたが、当時の日本でやっている企業はありませんでした。おそらく当社が日本で最初にこの手法を取り入れていることになると思います。 焼き入れとは、昔の刀鍛冶が、炭の中に刀を入れて真っ赤にした後に、水で冷やすことで金属が硬くなる原理と同じです。金属を硬くするために、レーザーの光を使って温度を上げ、冷えるスピードを使って鉄を硬くしています。この加熱し冷却して硬くすることを総じて焼入れといいます。
-技術的に難しいポイントや課題はどんなところでしょうか?
後藤氏:
熱処理業界において、最大の課題は熱処理における歪みとなります。熱を入れたら曲がってしまうという現象がおきます。私達は創業以来60年以上、長きにわたりこの歪みという課題と向き合ってきました。
しかし、レーザー焼入れを導入し、ピンポイントで加熱することができるようになったため、歪みという課題を解決することができたのです。また同時に工数が削減されコストダウンが実現できました。レーザ焼入れ事業をスタートさせて、11年。今では、売上げの40%を占めるまでに成長してきました。しかし、まだまだものづくり業界では知られていない技術なので、ものづくり業界の方に知って頂く事でまだまだ伸びていく市場と予想しており、期待しています。
また、カーボンニュートラルやSDGsなどが注目されていますが、レーザー焼入れは、冷却時に水や油などを使わないため、とてもエコな技術です。このエコな熱処理として大手の自動車メーカーからも注目されており、共同で開発を実施しております。5年後、10年後の車に入る部品を、一案件ずつ試行錯誤し、開発してゆくことに面白みを感じるような人材が私達の職場にはフィットしやすいと思います。 何かを新たに生み出したいという人向きで、時間内に決められたルーチン業務とは対称的な仕事内容だと考えられます。
-超精密肉盛りの技術導入までの経緯についてお聞かせいただけますか?
後藤氏:
肉盛り技術を使い文字を作ることは、日本ではほぼできないと言ってよいと思います。当社は、大阪大学が中心となり、産官学の連携で国プロで開発された設備を購入し、技術導入に至りました。
この設備は日本にはまだ数台しかないものとなります。また、超精密肉盛りができるのは現在日本に2箇所しかありません。そのうちの1箇所が当社となります。肉盛りや焼入れというと、どうしても3Kのイメージがつきまといます。しかし、当社は最先端の技術を導入しておりイメージに違いがでると思います。
-今後の展望などについて教えてください
後藤氏:
会社の拠点となっている堺市には、包丁のメーカーが数多くあります。現在、そちらの業界の方と協業し摩耗しにくい包丁を作っております。
また、現在の取引先は、自動車や工作機械や設備関連が多いのですが、宝飾業界など今まで関わりあいが全くない業界とのコラボレーショもできると考えております。あとは、レアメタルなど極めて良い金属を利用し、自分好みの指輪を1日程で作れるように技術応用ができます。CADを使い、簡単に自分好みのデザインをすることができます。
普段関わりがない業態との取り組みは、私達もトライしたことがない領域なので、どこまでできるのか分かりません。しかし、試行錯誤を重ね、新たな領域に挑戦してゆきたいと考えております。
取材先:富士高周波工業株式会社
URL:https://www.fuji-koushuha.co.jp/
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制作:工場タイムズ編集部