飲料工場の仕事内容は主に「飲料の製造」「容器の製造」「出荷」「品質管理」の4つの工程から成り立っています。ひとつひとつの工程は独立してライン化されているのですが、品質管理においてはどの工程にも関係していて、飲料製造においてもっとも重要なものです。
今回の記事では、飲料工場における具体的な仕事内容や、飲料工場で働くメリット、飲料工場の仕事に向いている人などについてご紹介します。
飲料工場の主な仕事内容
飲料の製造
飲料製造の中心となる作業は、飲料の元となる原材料の調合です。使用する原材料の種類や調合比率などは飲料ごとに決まっているので、原材料をそれぞれのタンクに流し込むことによって調合します。
この過程では味の濃い原液となっているので、水を足し込むことによって濃度の調整を行います。水を流し込んで濃度の調整を行った後で、濃度を調節した飲料を殺菌します。殺菌するために機械の中には高温の配管が通っていて、その中に飲料を通すことで加熱殺菌する方法がとられています。
炭酸飲料の場合にはもう一工程あり、炭酸を飲料に溶かすために炭酸ガスを注入したタンクに飲料を入れます。このとき飲料を勢いよく噴射することで炭酸が溶けやすいようにする手法が多く取り入れられています。
容器の製造
ペットボトルもすべて飲料工場で作ります。一部では他の工場に発注して納品するといった手順を踏むところもあるようですが、一般的には品質管理の問題などからワンストップでひとつの工場で作るようになっています。
またペットボトルを廃品回収していることから、工場でも「再利用している」と誤解されている方もいるようですが、再利用のペットボトルを洗浄等でそのまま使っているわけではありません。回収しているのはあくまでも資源として再利用するためです。
飲料の容器にはペットボトルだけでなく、紙パックや瓶などもあります。それぞれ製造工程は違うのですが、ペットボトルを例にとると、原材料を加熱することによって柔らかくし、十分に柔らかくなったところで型にはめた状態で空気を注入し形を作っていきます。
ペットボトルが完成すると、続いて飲料をペットボトルに詰める工程になります。他の工程と同様、ベルトコンベアで次々とペットボトルに飲料が注入されていきます。このとき、注入量は正確かどうかを厳格に検査しています。
飲料注入の最後の工程はキャップでの密閉です。飲料の注入とキャップによる密閉についてはクリーンルームで行われます。密閉といっても空気も入るので、クリーンルーム内では手洗いのうえ、専用の帽子や服、手袋、靴、マスクを着用します。
出荷
飲料をペットボトルなどの容器に詰めたら、最終工程である出荷準備に入ります。ラベルを貼り付けるのは最終工程である出荷準備で行われます。ラベルを貼ったあと、すぐにそのまま梱包にはなりません。最終的な品質管理がこの完成状態のときに行われるからです。
品質管理をパスすると、賞味期限を印字して完成となります。後は順番に出荷ケースに詰めていくだけですが、これもすべて機械が行います。その後は倉庫へ、あるいはトラックに積み込むことになります。
品質管理
飲料の品質を均一に保つために必要なのが品質管理です。製造工程のいたるところで品質管理が行われており、品質管理の方法もさまざまです。目視によって異物の混入やラベルの貼り間違いなどを見つける場合もあれば、機械によって成分の異常を見つけることもあります。実際に試飲して味の確認をすることも少なくありません。
飲料工場で大切なことは、とにかく安全な飲料を作ること。消費者の健康を害することになれば、飲料の販売停止や回収だけでは済まされず、工場の閉鎖や会社経営の悪化・倒産などにもつながりメーカーとしては死活問題となります。
それを防ぐためには、品質管理を徹底しなおかつ最小限にとどめることが大切です。そこで働く従業員は常に清潔な状態でいることが要求され、手洗いや消毒は頻繁に行うことが求められます。やらされるのではなく自分で行う、といった意識改革も必要であり、それが飲料工場で働く際に徹底されることでもあるのです。
飲料工場で働くメリット
ここからは飲料工場で働くメリットをいくつか挙げてみます。
未経験でも働きやすい
キャリアを積んでいなくても未経験から働けるのが飲料工場の魅力といっていいでしょう。もちろん工場内でキャリアを積むことで責任のある仕事に就くことができますし、賃金も上がっていきます。特に資格が必要ということはなく、作業責任者や品質管理者などの工場で必要な資格は、最初は特になくても就業できる間口の広さが魅力といっていいでしょう。
機械のメンテナンス技術が上がる
機械の不具合がそのまま生産力ダウンにつながるので、不具合が起きたときに迅速に復旧するためのメンテナンス技術は必須です。長年の経験が試されますが、就業年数が増えるほどそういった危機管理能力などのメンテナンス技術が上がっていくことは間違いありません。
食品を扱うスキルが身に付く
人が口にする物を作っているので、衛生管理や品質管理は徹底的に厳しく行われます。必然的に自分の身に入っていくものですから、食品を扱うスキルが自然と自分のものになっていきます。日々同じルーティンをこなすことにはなりますが、同じ工程、同じ動きの中で違ったものがあれば、それが間違いの元であり、追求していかなくてはいけません。
また製造する飲料が違えば当然違うルーティンとなるので、全く同じことの繰り返しということはありません。それぞれのルーティンについて作業工程のスキルが身についていくことになります。
飲料工場の仕事に向いている人
ここで、飲料工場の仕事に向いている人の性格について考えてみましょう。
衛生面の意識が高い人
飲料工場の生産ラインのおおまかな仕事の流れは、「調合」「殺菌」「充填」です。そのそれぞれについて品質管理が徹底されていますし、出荷作業に至るまで手を抜くことはできません。飲料工場となるので、人の健康に直結するものを作っているという意識が必要で、そのためにも、衛生面の意識が高い人が飲料工場での就業に向いていると言えるでしょう。
作業にのぞむ服装、手洗いやうがいなど身体の清潔さを常に意識できる人が望まれます。そういったものづくりにかける意識がしっかりしている人が飲料工場の仕事に向いていると言えますし、企業もそういった人材を求めているのです。
地道な作業が苦にならない人
作る飲料が変われば細かな工程は変わりますが、「調合」「殺菌」「充填」といった基本的な工程に変わりはありません。そのため単調な作業が続きます。むしろ単調ではないイレギュラーが起こったときに何らかの不具合が生じているので、何も無く単調な作業が飲料工場の生命線といっていいでしょう。そのため、地道な作業、単調な作業が苦にならない人が飲料工場に向いている人といえるでしょう。
飲料工場の品質管理には危機意識や安全意識が大切
一般的に、高度にオートメーション化された工場の仕事は「見守り」が主であることが多く、簡単で単純な仕事と思われがちです。しかし、その単純で何もない(何も起こらない)ことこそが大切で、そのときは工程に沿った品質にも問題のない飲料ができあがっているのです。
そのため、品質管理には十分な配慮が必要で、目視や味見などが重視されます。単調な中で何か変わったことが起きると「おかしいのでは?」といった危機意識や安全意識を持って作業することが望まれるのです。
なお、飲料工場で働くことを希望しているのであれば、事前に工場見学できるところもあります。就業前に一度現場を見ておくこともよいかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部