ガテン系というのは、イメージとして肉体労働をしている人、というイメージが強いと思います。もっとも、建設現場などで働く人のみが対象というわけではないようです。ここではガテン系の意味を掘り下げ、ガテン系の仕事の特徴から、ガテン系の人の特徴まで、とにかくガテン系のことについて深く解説したいと思います。
ガテン系の意味とは?
そもそもガテン系の「ガテン」というのはどういった意味なのでしょうか。
就職情報誌のタイトルが由来
「ガテン」というのは本来、職人さんが使う「合点のいく」「合点のいかない」の合点から来ているようです。「合点のいく」の意味は、わかった、承知した、納得した、同意したという肯定の意味に使います。そうなると「合点がいかない」は、わからない、納得できない、同意できない、理解できないということになります。
「ガテン」はそういった意味だというのはわかりましたが、合点をガテンというカタカナにして「ガテン」とし、その名の通り「ガテン」という就職情報誌を発行したのがリクルートです。リクルートによると、ガテンの紹介を
「ガテンとは…土木・建築・ドライバー・調理などの現場で働く人たちに、イメージや流行ではない職業の選択、自分自身の価値観にあった”合点のいく”生き方を提案してきた仕事情報誌」(抜粋)
としています。
現在使われている「ガテン系」や「ガテン女子」、さらには「ガテン系~」という言葉のすべては、このガテンの就職情報誌が語源となっているのです。
土木・建設業で働く人、調理人、肉体労働者などを指す時に使われる
「ガテン」の就職情報誌は、土木・建設業で働く人、調理人といった現場で働く人たち、つまり肉体労働者のための情報誌として「イメージや流行ではない職業の選択、自分自身の価値観にあった”合点のいく”生き方を提案する」(抜粋)という意味が込められています。
リクルート社がとりあげた「ガテン」という言葉は、今や市民権を得ているといっていいでしょう。言葉の語源を知らなくても「ガテン系」と聞けばその意味が分かる、といった人が多いです。言葉というのは、その時々の時流に乗ってさらにマッチすることで多くの人々に使われ、それがいつのまにかスタンダードになっていきますよね。
例えは違うかもしれませんが、プロ野球の「ナイター」という言葉は英語ではありません。和製英語であり、本来は「ナイトゲーム」といいます。「ナイター」という英語はないので、米国人に「ナイター」といっても通用しません。でも「ナイター」のほうが言いやすいので日本では定着しました。英語とは関係ありませんが、ガテン系もこのようにいつの間にか定着していったのですね。いかに人の心に響くかということだと思います。
ガテン系の仕事
ガテン系の仕事はさまざまです。「建設業などの肉体労働をしている人」というイメージと比べて、実態はもっと幅広いものです。
土木・建設業、鉱業、運輸業、整備士など
ガテン系は単純な肉体労働だけではありません。体力はもちろんのこと、技術でも勝負しています。日進月歩で進化する現代の技術や環境に日々柔軟に対応しながら、人々の生活を支える縁の下の力持ちのイメージです。以下にガテン系の仕事を細かく説明します。
土木・建設業
ガテン系の代名詞として多くの人がイメージしている現場労働者です。しかし、土木・建設業といってもそれだけではなく、職種はかなり幅の広いものとなっています。
土木工事:道路や橋・トンネルなど土木工作物を建設・補修・解体
建設工事:建築物の建設工事(新築、増築、改築)
大工:木材の加工や取付
左官工事:建築物に壁土やしっくいをコテで塗り・貼り付け
とび職:建築物の足場や鉄骨の組み立て
内装工事:建築物の内装仕上げ
造園工事:庭園の築造・整備
職種や内容によっては、技能士や施工管理技士などの国家資格が必要なものもあります。工業高校卒で受験資格が取れる資格や土木建築系の学部卒で受験が可能となる国家試験もあります。
運輸業
トラック運転手がガテン系の代表選手のように見えますが、旅客機のパイロット、旅客船、バス、タクシーなどの運転手も、分類でいえばガテン系といえるのかもしれません。輸送手段は航空・海運・陸運に分けられます。
ドライバーとなると、車の運転免許証が必要になります。バス、タクシー、大型トラックなど、希望する運転免許を取得しなくてはいけません。特にバスやタクシーなどは2種免許が必要となります。
パイロットは、定期運送用操縦士、事業用操縦士、自家用操縦士の3つの資格があり、いずれも国家資格に合格しなくてはいけません。
海技士については、海技士免許が必要です。これも国家資格となります。
整備士
整備士といってもその種類は多彩です。舶用機関整備士、電車整備士、航空整備士、自動車整備士など、機械や乗り物の整備・点検などを行う技術職です。専門的な知識のほかに判断力、理解力、適切な作業を実践する能力が求められます。
整備士ですから、各分野について、国家資格や整備士に必要な資格を取得しなくてはいけません。工業高校の機械科や電気科を卒業して受験資格を得られるものが多いです。中には大卒の資格と必要な単位取得で受験資格を得られるものもあります。
ガテン系に興味がある人におすすめの「期間工」とは
以上のようにガテン系の仕事について興味を持たれた方におすすめしたいのが「期間工」という契約形態です。
期間工とは、期間限定で工場と直接雇用契約を結んだ従業員のこと
多くは工場内で製造ラインのなかの一工程を受け持ち、その中で責任を果たすことが求められるケースがみられます。ラインのなかの一工程のため、繰り返しの作業を求められます。
たとえば、車の部品の製造ラインにはロール状の鉄板を切断機やプレス機に入れて車のパーツを製造したり、塗装を終えて完成したボディに組み込むためのパーツを運んだりといった、さまざまな仕事があります。
特に期間限定で工場と直接契約を結んだ場合は、それまでにはなかった、あるいは急遽必要になった工程を担当することが想定されます。言い換えれば、工場の中でも、最前線のモノづくりの現場を担当することになります。これはガテン系仕事のなかでも、特にやりがいのある仕事といえるでしょう。
工場の稼働が活発な時期に、多く期間工の募集がかけられる
現代のモノづくりの現場では、コストダウンが徹底されています。製造ラインは極力オートメーション化されていますし、必要となる人数しか配置されていません。つまり、最低限の人数のみ正社員として雇われるということです。
しかし、モノづくりの最先端である工場には、繁忙期と閑散期があり、繁忙期には人手が足りなくなります。そこで、繁忙期には、期間限定的にガテン系の仕事が発生するのです。もちろん繁忙期はある程度の期間に限られているため、繁忙期が終わり、閑散期に入るとガテン系の仕事は契約終了となります。
このような繁忙期は、工場が生産している製品の業界によって異なります。たとえば、自動車の製造工場は2月から3月にかけて繁忙期といわれています。クリーニング工場は、冬物をクリーニングに出す4月から6月くらい、家具などは引越しが多くなる前の2月から4月くらい、清涼飲料水の工場であれば、ピークの夏を前にする6月から9月くらいにかけてといわれています。
ガテン系の強みをもっている人は魅力的
職人としての技術力の高さや手先の器用さ、体力が必要かつ職種や現場によっては筋力も求められる身体の強さ、そして危険が伴いながらも自らの責任を果たす精神の強さ、といういわば「人としての強さ」を兼ね揃えているといえるガテン系の生き方は、変化の激しいこの時代において、サバイバル能力の高い魅力的な人物像であるといえそうです。
技術に自信がある、体力に自信がある、精神的な強さに自信があるという人は、自身の強みを活かし、さらなる強みを獲得して伸ばしていけるガテン系の仕事を選ぶのはいかがでしょうか。
一方で技術力、体力、精神力のいずれにおいて自信のない人でも、様々な種類の期間工の仕事がありますので、仕事をしながら自らを鍛え高めていく、そんな仕事選びもできるのが、ガテン系の仕事の魅力といえるかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部