お笑い芸人・玉袋筋太郎さんにスナックの魅力を余すところなく語っていただいた記事、『はじめてのスナック! 入門編/お作法編』がおかげさまで大好評! 癒しどころ、はたまたパワースポットとしてのスナックを訪れてみた読者の方も多いのでは?
最近はスナックに一人で通う女性、通称「スナック女子(スナ女)」も増えているとか。それならばと、スナ女の第一人者・五十嵐真由子(いがらし・まゆこ)さんに、「女性のための、スナック入門」虎の巻をご紹介いただくことにしました。オジサンの聖地で女性が楽しむためにはどうするべきか⁉ インタビュー場所はもちろん、スナックです!
それぞれの個性を楽しむのが「スナ女」スタイル
はじめまして! スナック女子、通称「スナ女(すなじょ)」の五十嵐真由子です。今回は、女性ならではのスナックの楽しみ方をご紹介しますね!
スナックはママやマスターがカウンター越しに接客をし、客同士が交流をして一体となれるアットホームな空間ですが、一言で言えば“ママの部屋”。チェーン店との大きな違いは、“その店のママを好きな常連さんが集まっている場所”で、お店ごとに個性が分かれているところです。それぞれの個性を堪能するのが、スナ女スタイルです。
女性でも安心して入れるスナックとは?
スナック初心者の女性は、「怖くない」ことが大事なので、事前情報も多く、間口の広いお店をオススメします。今回の企画で撮影にご協力いただいたスナック「るり」さんは、グルメサイトに掲載されていたり、人の出入りが多い通路脇にあるなど、安心材料がそろっています。
今回訪れたスナック「るり」さんは、通路を挟んだお寿司屋さん「次郎長寿司」と背中合わせになっているんですよ。このスナック「るり」と「次郎長寿司」を、ご家族で経営されていることもあって、お寿司を楽しんだ後にスナックに移動するお客様も多いんです。だからこそ、女性でも緊張することなく入店できるし、気軽に飲めるんです。
さて、スナ女になるための極意。こちらで(お茶を)飲みながらお答えしますので、なんでも聞いてくださいね!
男性の憩いの場所に、女子が入っていっても大丈夫ですか?
最近は20~30代の若い男女で逆転現象が起きてて、自分からスナックに行こう、と思う男性が減ってますよね。女性のほうが『この店なんだろう』『おもしろそう』と、探求心旺盛!勢いで入ってくるパターンも多いようです。昭和レトロな雰囲気や看板が写真映えするのかSNSにアップしている女性も多い、そんな気軽な感覚でお店を見つけて入ってみるのもいいですね。
また、スナックはただお酒を飲むというよりは、他のお客さんと会話を楽しんだり、おじさまがたにかわいがってもらったり、ママが話し相手になってくれるという“コミュニケーション体験”が豊富な場所。そういった点も参加型イベントなどが好きな女子の間で人気を呼んでいるんです。
スナックの形態も様々。扉を開けたら「女ひとり? うちはダメだよ!」なんて言われたこともありました(笑)。こういう店は男性オンリーのお店だったりすることも。扉を開けて違和感を感じたら入店を避けるという意識も大切です。
それから入店の際、始めは扉を5センチほどそっと開けて中の様子をうかがって、入店できそうだったら扉を開いて、ママと目が合うまで待つこともポイント。たとえ常連のお客さんが「お、女の子だ! 入りなよ」と言ってきたとしても、そこはあくまで“ママの部屋”。 主の許可なくして入ってはいけません。
最初はやっぱり、男性と一緒に行った方がいいですか?
初心者であるほど、女性同士、もしくは一人で行くことをオススメします。「初めてだからわからないんです」と言えば、ママやお節介好きなおじさまが「どうした?」と話のきっかけを作ってくれますから。職場では“いい年”扱いされる女性であっても、スナックでは まだまだ“若い女の子”。80代90代の大先輩もざらにいますので、歓迎されますよ。
「楽しそうな声が聞こえてきたので、勇気を出して入ってみました」と言えば「そうかそうか。ママ、この子に一杯おごってあげて!」なんていうことも(笑)。お店の常連であるおじさまとの会話中、リスペクトの意味も込めて“先輩” と呼んでおけば間違いないでしょう。もし困ったおじさんがいても、ママやチーママが助けてくれるから安心です。
女子だから気になる「お金」のこと。教えて!五十嵐さん!
最近、多くのスナックは“セット料金”を導入しています。一般的な内容は、「席料+飲み放題、突き出し、カラオケ歌い放題」という場合が多いです。女性の場合は男性より安価に設定しているところも多く、3〜5千円が相場です。時間制の場合もありますが、女の子がいると盛り上がるので、ママやほかのお客さまから「もうちょっと飲んでいきなよ」と言ってもらえることも。その場合はほかのお客さんが払ってくれる、なんていうこともあります。
お店によっては、ビールや氷、カラオケ(1曲200円など)、おつまみのおかわりなど別料金が発生する場合もあるので、必ず入店時に料金を確認しましょう。予算が限られているときは、「◯◯円で大丈夫ですか?」と、正直に相談を。大体は、二次会でカラオケに行くよりも安く収まると思いますよ!
カラオケが苦手なんですが、どうすれば良いですか?
スナックにはカラオケがつきものですが、苦手という人も多いと思います。でも、歌に自信がないのはスナ女的にはむしろ有利。スナックの常連さんは歌好きな人が多いので、出だしだけ歌って「あ〜ん、うまく歌えないです。誰か助けてくれませんか」と、わざとマイクを通して言うと、おじさんたちが続々と集まってきます(笑)
選曲に迷ったら、デンモクの“履歴”をチェック。そのスナックに通うお客さんが選曲傾向がつかめますので、その中から知っている曲を選びましょう。みんなが知っている曲なら一緒に盛り上げてくれるし、一緒に歌ってくれます。途中で乗っ取られることも(笑)。これが一体感を生み出します。
お酒が飲めない女子でも、スナックで楽しめますか?
スナックでの楽しみは、お酒以外にも常連さんとの一体感や、カラオケなどさまざま。人生経験が豊富な方が多いので、ママや常連さんとのトークから学ぶことも多いものです。ふだん自分の生活では会わない人たちと交わることができるのがスナックの魅力でもあるので、それを楽しむだけでも多いに収穫はあるでしょう。ほとんどの店にはソフトドリンクもあります。出前が頼めるスナックでラーメンを頼んでコーラで楽しんだり、ママの手料理がおいしくて毎日夕食を食べにきている常連さんも見かけますよ。
ぶっちゃけ、飲まないと損ですか?
「お酒は飲めないんですが、ママのお話が聞きたくて」というスタンスは大いにアリだと思います。ただ、お店側も利益がでないと経営になりません。たとえ飲まなくても、セット料金ぶんなどはお支払いする必要がある場合も。それでも、スナックが体験型の場である以上、決して高くはないはず。ただし、こちらもママ次第なので、まずは相談してみましょう。
女子でも、仕事やプライベートのストレスを発散できますか?
悩みをこんこんと相談するより、みんなで一緒に歌ったり、盛り上がったりでストレス発散している方が多いですね。しがらみと関係ない人間関係だからこそ、恥じることなく自分をさらけ出せるのもスナックの魅力。女性だったら、「会社員」「妻」「嫁」「娘」「母」などの役割から解放される場所なので、そういう点ではストレス解消効果は大! 知らない人といきなりカラオケで一緒に歌うなんて、日常生活ではまずないじゃないですか。でも、スナックではみんなで肩をくんで歌ったりするわけですよ。『サライ』とか『we are the world』とか。また、それを「長い!」とママに途中で消されたりするのも、オツなものです
スナックでは、男性を見る目を養うことはできますか?
聞き上手になれるのは間違いありませんね。また、ママや先輩たちから「お前ね、そうやって自分の話ばっかりしてちゃダメだろう!」と愛のある指導をしていただくこともしばしば。常連のおじさま達がいうことは、男性の本音だったり、くせのある男性をも導いてきたママの言葉から多くを学ぶことができます。合コンに通うよりよっぽど勉強になるかもしれませんよ!
[まとめ] これだけは押さえておくべき、心得を教えて!
これまで、「スナック女子」の魅力を存分に語ってきましたが、これらを踏まえて私が提唱しているのが、以下の「スナック心得 八ヶ条」。まずはこれらをしかと心に刻み、いざ“スナ女道”へ。
あの扉を開けるのは、あなたです!
スナック心得 八ヶ条
その壱 「ママの許可なく入店すべからず」
スナックはあくまで「ママの部屋」。初めてのお店では勝手に上がり込まず、ママ(お店
の人)の許可を得てから入店しましょう。
その弐 「入店時はお邪魔します」
入店時、カラオケの画面を遮ったり、歌の邪魔となる会話はNG! 「お邪魔します」という気持ちを大切に、先に居るお客さんに心を配るようにしましょう。
その参 「根ほり葉ほり客はNG」
ママや常連さんに、いきなりプライバシーに関わるような質問を浴びせるのはマナー違反。打ち解ければ自然と話してくれますよ。
その四 「カラオケで注意するポイント」
歌っている人の邪魔になるような大声での会話はもってのほか。また、どのお客さんであろうと、歌が終わったら拍手を! 一体感への近道です。
その伍 「カラオケ独占禁止法」
スナックの常連さんはカラオケ好きな人がほとんど。自分ばかり曲を入れて、独り占めする「マイク独占女」になるのは禁止。1曲入れたら1巡するまで待つつもりで。
その六 「困ったベロ客になるな!」
居心地がいいのはスナックの魅力ですが、泥酔するまで飲んではいけません。女の子を外に放り出すわけにもいかないので、ママを困らせてしまいます。「からみ女」も嫌われますよ。
その七 「自分勝手な困った客」
人が歌っている途中で帰るなど、場の空気を壊すような自分勝手な行動は、嫌われます。和を乱す人は、当然ながら和には入れませんよ!
その八 「粋な客を目指せ」
こぢんまりしたお店が多いスナック。長時間クダを巻くより、団体さんや他のお客さんたちが入ってきたらさっと席を譲るなど、引き際を心得て! お尻に根が生えた「地蔵女」は迷惑です。
五十嵐真由子
PRコンサルタント。国立音楽大学卒。CM音楽制作会社で数多くのCMソングを手掛けたのち、楽天に入社。「楽天トラベル」にてPR組織をゼロから立ち上げる。イベント企画や、データ分析を生かしたプロモーションにより、多くの取材獲得に成功。2015年独立、「Story」をキーワードとし、多くの企業や、人、街の発信力を強化する新しいPRコンサルティング手法を提案・提供している。
プライベートでは全国のスナックを巡り歩くスナ女として、連載記事の執筆やテレビ、ラジオなどメディアを通したスナック女子認知拡大普及活動にも取り組んでいる。
取材/吉田知未(リヴァーライズ)
文/志野順子(リヴァーライズ)
写真/原田圭介