最近、テレビや雑誌でも数多く取り上げられているDIY。アイデア次第で自分好みのインテリアをリーズナブルに作れると人気ですよね!そこで今回の工場タイムズは、DIYの専門家をお招きした実践編をお送りします!
今回設置するのは「キッチン棚」と「キャットウォーク」の2種類。お気に入りの棚を探すのも大変ですが、自分で作れば特別な愛着が湧くというもの。またペットで猫を飼う人に人気のキャットウォークも、プロのちょっとしたコツを知れば簡単に作れちゃうんです。
今回DIYに初挑戦する、神奈川県にお住まいの白石ご夫妻の要望は、「キッチンに使い勝手の良い棚が欲しい」「ペットの猫用にキャットウォークを設置したい」の2つ。はたして、初めてのチャレンジとなるDIYの結果はいかに!?
作りたい「キッチン棚」「キャットウォーク」のイメージは?
今回お邪魔したDIYの現場は、神奈川県にある閑静な住宅街にお住まいの白石家。結婚を機に戸建てを購入し、およそ1年。住み慣れたマイホームに「好みのインテリアを揃えたい」という思いが高まり、今回のDIYにチャレンジしようと思ったそうです。
「ちょっとしたことなら自分でやってしまう」というご主人の望さんと、「細かい作業はちょっと苦手」という奥様の友美さん。そんなお2人が「キッチン棚」と「キャットウォーク」を設置するにあたり、叶えたい条件は以下の通り。
キッチン棚の条件
・棚は2段
・2人の手が届くちょうどいい高さに設置したい
・収納とデザイン性を両立させたい
キャットウォークの条件
・リビングの角に設置
・猫が好むような、高めの位置に設置したい
・リビングに合うデザイン性
使い勝手の良さとデザイン性の両立、まさにDIYならではのワガママな要望を叶える今回の企画、いざスタート!
最強の助っ人、DIYの専門家・川上さん登場!
神奈川県・葉山でDIYアドバイザーとして活動する川上大祐(だいすけ)さん。普段は住宅だけでなく、デパートのショーウィンドウ内のディスプレイ製作や、展示会のブース設営などを手がける美術大工のエキスパート。DIYアドバイザーとしての資格も持つ最強の助っ人です。
そんな川上さんに、初心者でもわかりやすいようにアドバイスをいただきながら作業を進めていきます。
まずはキッチン棚の設置から。使用する材料と工具・道具を紹介!
▼キッチン棚の材料
1. 棚板(ポリランバー材)× 2本
2. 持ち送り金物(耐荷重量30kg)× 4個
3. ボードアンカー
4. ネジ
「一般的な家の壁に使われている石膏(せっこう)ボードは、直接ビス・ネジで締め付けることができません。そこで『ボードアンカー』の出番なんです」(川上さん)
「ボードアンカー」初耳の方もいると思いますので、のちほど詳しく説明します。続いて組立て・設置に使用する工具、道具をご紹介。
▼今回使用する工具と道具
1. 養生(マスキング)テープ
2. スケール(メジャー)
3. 水平器
4. 指矩(さしがね・曲尺とも)
5. 紙テープ
6. 金尺(直尺、直定規とも)
7. どこ太(35mm・下地探し用)
8. カッター
9. 鉛筆
10. インパクトドライバー(充電式・スタンレー製)
普段の生活では見慣れないものが多いですが、どれも今回の作業には必要な道具。中でも「今回の主役は『下地探し・どこ太』(以下「どこ太」)です。これがなければ話になりません」と川上さん。
今回のキーアイテムらしき「どこ太」は一体どのように使うのでしょうか? 道具の紹介も終え、いよいよキッチン棚の設置に取り掛かります。
キッチン棚の設置工程を詳しく解説!
ここからは作業工程順に説明します。全部で6工程のうち、まずは1〜4までを解説!
1. 棚板を取り付ける場所を決める
まずは実際に棚板を壁に当てながら、取り付け場所を決めます。ご主人の持つ棚板の位置を、奥様がキッチン全体のバランスを見るため遠目から確認する、といった協同作業も大切。
【川上ポイント!】
「棚の上段と下段の両端を揃える、もしくは位置をずらすかで、下段に背の高いものが置けるかどうかなども決まるため、見た目だけでなく使い勝手も同時に考えましょう」
場所が決まったら、後ほど棚を取り付ける位置に目印となるテープを貼ります。
2. 棚板に「持ち送り金物」を取り付ける位置を決める
続いて棚板の下面に「持ち送り金物(以下「金物」)」を取り付ける位置を決めます。この時、直角が特徴の指矩があればまっすぐ線を引けて便利!
棚板の長さによりますが、金物の位置決めは、棚の強度と見た目を決める大切な工程。白石ご夫妻は、好みのデザインに仕上げるため棚板の端から2cmの位置に取り付けることにしました。
【川上ポイント!】
「2枚ある棚板の1枚の端にもう1枚を垂直に当て、直角の状態を作ります。こうすることで金物が板からはみ出さずフラットな状態(面一・つらいち)ができ、そのまま養生テープで金物を仮止めします(クランプ(万力)で固定する方法も)。仮止めできたら、ネジ穴から鉛筆で板に印を付けましょう」
3. 棚板に金物を取り付ける
先ほど養生テープで仮止めした金物を、付属のビスで棚板に固定します。ビスを打ち込む素材が硬い物だったり割れやすい物の時は、あらかじめ下穴をあけておく必要があります。
【川上ポイント!】
「ビスを締めている間に金物が動いてしまう可能性があるため、一箇所のビスを完全に締め切らず、それぞれを締めて最後にバランスを見ながら固定しましょう」
1枚の棚板に2つの金物を取り付け、これで2枚の金物付き棚板が準備できました。
4. 棚板を取り付ける位置の間柱(まばしら)の有無を確認
「マンションや戸建てなど一般的な住居の壁には石膏ボードが使われています。その内側には間柱(まばしら)が一定間隔で配置されていて、間柱にはネジ・ビスを効かせる(打ち込む)ことができます。
しかし間柱と間柱の間となる『石膏ボード単体』のみの場所にはネジ・ビスが効きません。そこで、打ち込むと中で広がって固定されるボードアンカーを使い、ネジ・ビスが効くようにします」(川上さん)
ここで下地探しツール「どこ太」が登場!「どこ太」は、ペン先を壁に押し当て、出てくる長い針を壁に刺して下地の位置を調べる道具。最後までスッと入れば、壁の内側に下地がない(=石膏ボード)ことがわかります。
「どこ太」がスムーズに刺さらない場合、そこには下地(間柱)があり、ビス・ネジが効きます。先端に内蔵された磁石に反応して「どこ太」が壁に吸い付く場合は、下地の材質が金属、または石膏ボードを固定しているビスがある可能性も。
【川上ポイント!】
「取り付け場所にネジが効く・効かないを『どこ太』を使って念入りに調べ、効かない場所であればボードアンカーを使いましょう」
いよいよ残すところ2工程。一気に仕上げていきましょう!
5. 壁にボードアンカーを埋め込む
今回は取り付け位置に「どこ太」がすんなり刺さったので、下地なし(=石膏ボード)と判明。ボードアンカーを使います。下地に間柱があった場合はネジを直接打ち込みます。
石膏ボードに穴を開ける際、どうしても石膏の削りカスが下に落ちるので、あらかじめ養生テープとビニールシートで落下ゴミ対策をしておくと良いでしょう。
写真右側がボードアンカー。その左隣にある長いネジは、ボードアンカーを埋め込む壁に下穴を開けるためのもの。ボードアンカーはいきなり壁に施工することができないので、使う前にあらかじめ下穴をあけておく必要があります。
埋め込まれたボードアンカーは石膏ボードを突き抜け、中で先端を広げてガッチリと固定されます。これでビス・ネジが効くようになりました。
【川上ポイント!】
「ボードアンカーを1箇所埋め込んだら、1本のビスだけで棚を壁に仮止めします。そして棚板の上に『水平器』という、棚が水平になっているかを調べる道具を載せ水平状態に。そのまま金物のすべてのネジ穴から鉛筆で印をつけましょう」
ネジ穴に印をつけたら、仮止めした棚を一旦壁から外します。これで残りのボードアンカーを埋め込む準備が整いました。
「水平器」を使ってしっかりと水平状態を作り、棚を外してからボードアンカーを埋め込むことで、棚を斜めに取り付けてしまうミスを防ぐのですね!
6. 壁に棚を取り付ける
いよいよ最終工程となる棚の取り付けです。「水平器」で棚の水平状態を確認しながら、1本ずつ確実にビスで固定していきます。埋め込んだボードアンカーのおかげでしっかりビスが締まりますね。
ここまでの所要時間は45分!一段目の取り付け完了です。
続いて二段目となる上段を、一段目と同じ要領で位置決めから行い、作業を進めます。
およそ90分で二段目の取り付けも完了!川上さんいわく「慣れてくれば、二段の棚を取り付けるのにかかる時間は1時間ほど」だそうです。
とってもいい感じ!
続いて、キッチン棚と同じ要領でキャットウォークを取り付けていきます。材料は以下の通り。
▼キャットウォークの材料
1. 棚板(四角形・ポリランバー合板)
2. 棚板(三角形・ポリランバー合板)
3. 持ち送り金物(耐荷重量30kg)× 2個
4. L型金物 × 3個
5. ネジ
6. ボードアンカー
白石ご夫妻は、愛猫・ナナちゃんが気に入ってくれそうな位置を話し合いながら決めます。上段となる三角形の棚板は3カ所のL型金物で止め、リビングの角に設置します。
こうして合計2時間半でキッチン棚、キャットウォークの取り付けが無事完了しました。
完成したキッチン棚を見て「小さくてかわいい!」と奥様の友美さん。ご主人の望さんは、「こんなに立派な棚になるとは思わなかった」と驚きの表情。愛猫のナナちゃんも、オリジナルのキャットウォークをすっかり気に入ってくれたようです。
最後に川上さんから、DIYをやる上で大切な心構えを教えていただきました。
「DIYで大切なのは、とにかく『急がないこと』『面倒くさがらないこと』。例えば、下地探しツール「どこ太」を使って壁に間柱があるかどうかを確認することや、棚を固定する前に「水平器」を載せ、きちんと水平になっているかを見ながら作業を進めることなどです。
一つ一つの工程は一見地味ですが、それをやらないとかえって回り道になることが多いです。それぞれのポイントを忘れずに確実に工程をこなしていけば、初心者でも必ずうまく設置できます!」
いかがだったでしょうか。DIY初心者の皆さん、この記事を参考にしながら、オリジナルの棚やキャットウォークの設置にぜひ挑戦してみてくださいね!
取材・文:松宮史佳/写真:工場タイムズ編集部
撮影協力:スタンレー・ブラック&デッカー・コーポレーション( http://stanleytools.jp/ )