世の中には「計量士」という仕事があります。
計量といっても、家庭で料理の食材や調味料をはかるのではなく、主に騒音や振動、有害物質などの測定に従事します。
では、計量士はどんな職場で働き、なぜ必要とされているのでしょうか?また、どうすれば計量士になれるのでしょうか?
今回は、計量士の具体的な仕事内容や計量士の資格の取得方法についてご紹介します。
計量士って何?
まずは計量士の仕事内容と特徴についてお伝えします。
計量士とは?
計量士は国家資格です。工場などに設置されている計量器の検査を行うとともに、正確な計量の実施・管理、計量方法の改善などに従事します。企業同士の商取引では、正しい計量が行われることが大前提ですから、正確な計量を担保する計量士の存在は欠かせません。
計量士の仕事の特徴
計量士の仕事の特徴は、まず働き場所が幅広いという点が挙げられます。資格の種類(下記参照)によって違いますが、働き場所の多くは工場をはじめ、百貨店やスーパー、工事現場などです。正確な計量が求められる場所は、すべて計量士の仕事場であると言え、それだけ貴重な存在として活躍が期待されているということです。また、環境問題に対する社会的な関心が高まっているため、騒音、振動、有害物質に関する計量管理の重要性が増しています。近年、計量の技術が進化するとともに、計量の内容が多様化しているため、計量士の活躍場所はさらに広がっています。
計量士のお仕事とは?
計量士の資格は3つに分けられます。それぞれの仕事内容と合わせてお伝えします。
環境計量士(濃度関係)
環境計量士は環境調査を専門に行う計量士のことで、「濃度関係」と「騒音・振動関係」の2種類があります。環境計量士(濃度関係)は、工場から排出される排水や煤煙(ばいえん)、大気中の有害物質、工場跡地の土壌内の有害物質などを測定するとともに、その計量管理に関する業務を行います。
環境計量士(騒音・振動関係)
名前の通り、騒音と振動を専門に測定する環境計量士です。具体的にはプレス機や鍛造機、送風機といった騒音源を有する工場、建設現場で騒音と振動の測定を行い、人体への影響を調査します。同様に道路、鉄道、航空機といった一般環境での騒音と振動を測定し、計量管理を行います。
一般計量士
工場、百貨店、スーパーなどに設置されている「長さ計」や「温度計」「体積計」「質量計」といった計量器の精度管理を含む計量管理を行います。簡単に言うと、環境計量士が行う以外の計量に関する業務を一般計量士が担当するということです。
計量士に登録するためには?
計量士の資格を取得し、計量士として登録するためには、2つのコースがあります。
国家試験コース
計量士の国家試験に合格して取得を目指すコースです。
受験資格
受験資格の制限は特にないので、学歴や年齢に関係なく受験することができます。
試験会場
北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡、沖縄の9会場
試験内容
5肢択一式の筆記試験で、計量管理の職務を遂行するにあたって必要とされる知識や技能が問われます。試験内容はそれぞれ次の通りです。
【環境計量士(濃度関係)】
環境計量に関する基礎知識
化学分析論及び濃度の計量
計量関係法規(環境・一般共通)
計量管理概論(環境・一般共通)
【環境計量士(騒音・振動関係)】
環境計量に関する基礎知識
音響、振動概論並びに温圧レベル及び振動加速度レベルの計量
計量関係法規(環境・一般共通)
計量管理概論(環境・一般共通)
【一般計量士】
計量に関する基礎知識
計量器概論及び質量の計量
計量関係法規(環境・一般共通)
計量管理概論(環境・一般共通)
受験手数料
8,500円の収入印紙(受験願書に貼付)
合格率と難易度
合格率はいずれの資格も15~17%程度です。一般計量士のほうがやや合格率が高い傾向がありますが、それでも決して簡単に合格できる資格とは言えないでしょう。国家試験に合格をした上で、計量に関する実務に1年以上従事していれば、資格を取得する権利が得られるようになります。
さらに詳しい内容を知りたい場合は、「一般社団法人 日本計量振興協会」のWebサイトから問い合わせるのが良いでしょう。
http://www.nikkeishin.or.jp/
資格認定コース
「国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量研修センター」が実施する所定の教習を修了し、一般計量士であれば5年以上、環境計量士であれば2年以上の実務経験を積んだ上で「計量行政審議会」の認定を受けるコースです。
上記2つのコースのいずれかをクリアすると資格が取得でき、計量士として国から正式に登録されます。
活躍の場を広げる計量士のお仕事
試験の難易度がやや高い分、計量士の資格を取得していると、会社から重宝されますし、転職でも有利に働くでしょう。環境問題への関心は世界的に高まっています。専門学校や大学でも環境を専門に扱う学科が誕生していますし、環境ビジネスも注目されています。それだけに、大気や水質の汚染状況、騒音などを正確に測定し分析する計量士は今後さらに活躍の場を広げていくことでしょう。計量士に興味がある人は、日本計量振興協会のWebサイトを見たり、同会が発行する書籍やDVD、機関誌などをチェックしてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部