日本には「水が合わない」という慣用句があります。周りの環境に合わない、馴染めないという状態を「水」を使って表現したものです。それほど昔から、人と飲み水との関係は深かったということになります。
ひと昔に比べて、水道の水がおいしくなったと思いませんか?実は、これは浄水場のおかげです。
今回は人にとって大切な飲み水と、それを支えている浄水場の仕組みをご紹介します。
何のためにある? 浄水場の役割
浄水場は河川や湖沼、ダムから取り入れた水を浄化・消毒するための施設で、私たちに安全な飲み水を届けてくれています。その浄水場には、大きく3つの役割があります。
安全な水を供給する
浄水場の大きな役割は、消費者に安心で安全な水を確実に供給するということです。私たちの日常生活に欠かせない水は、飲み水としてはもちろんのこと、毎日の調理やお風呂など、それ以外の用途でも安心して使える水でなければなりません。水の品質は、人の健康にも直結する問題ですから、安全性は重要視されます。
有害物質を取り除く
安全な水を供給するためには、その水に含まれている有害物質を取り除かなければなりません。浄水場で浄化・消毒する前の水の中には、ヒ素やカドミウムなどの危険な物質や、農薬、塩素、大腸菌といった不要な物質が含まれていることがあります。それらを取り除くために、浄水場で浄化・消毒が行われています。また浄水場は、有害物質が安全基準値を超えないように監視するための役割も果たしています。
水道水の安全性
日本では、安全な水を守るために、「水質基準」が定められています。日本の水質基準は世界の中でも特に厳しく定められた基準の一つです。浄水場では水中に含まれる有毒物質を検出するだけでなく、基準値以下の水をさらに処理することで、常に水の安全性を確保しています。
浄水場の仕組みとは?
安全で安心な飲み水を供給するために、浄水場にはいろいろな仕組みが施されています。その仕組みについてお伝えします。
着水井(ちゃくすいせい)
着水井とは、浄水場の中で原水が最初に到達する場所のことで、原水の量を調節するところでもあります。まず河川や湖沼、ダムなどの水源から取水設備を使って原水を取り入れ、その中に混じった土や砂利を沈めて取り除くために「沈砂池(ちんさち)」という所に運びます。その後、導水管を通って浄水場内の着水井に原水が運ばれます。
沈でん池
着水井から沈でん池に運ばれた原水に、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)を注入します。この凝集剤には、原水に含まれる細かい土や石をくっつけて、大きな塊にする働きがあります。この大きな塊が沈でん池の底に沈むことで、原水が浄化されていきます。
急速ろ過池
原水は、沈でん池を流れて急速ろ過池に運ばれます。急速ろ過池では、沈でん池で取り除くことができなかった微細な浮遊物を、砂と砂利の層を通して取り除いていきます。
消毒設備
急速ろ過池を通った原水は、消毒設備に運ばれます。ここで、原水に次亜塩素酸ナトリウムを加えます。この作業によって、水を安心して飲める状態にします。
配水池
消毒設備を通って安心して飲める状態になった水は、配水池に運ばれます。ここは、水道水を貯蔵する倉庫のような役割があり、水の使用量に応じて水量を調節します。また貯水池は、地震などの災害が発生した際の飲み水を確保する場所でもあります。
ポンプ場
配水池から運ばれた水道水は、私たちの世帯へ行き渡るように、このポンプ場から送り出されます。地形によって、起伏のある地域には、ポンプで一定以上の水圧をかけて送ります。
水道水をもっと美味しく!
最近では、本来の浄水処理に高度な技術が加えられた「高度浄水処理」という処理方法で、よりおいしい水が供給されるようになりました。
高度浄水処理とは?
従来の浄水処理方法では、水道水に有機物や臭いが微量ながら残っていました。いわゆる「カルキ臭」と呼ばれる臭いがその一つです。そこで、今までの浄水処理をさらに発展させたのが、高度浄水処理です。オゾン処理による有機物の分解と、生物活性炭による自然に近い吸着機能で浄化され、微量に残った有機物をほぼ除去させることに成功しました。この高度浄水処理によって、より一層安全でおいしい水道水を提供することができるようになったのです。
給水方式
高度浄水処理には、水道水を供給する方式として「直接給水方式」と「貯水槽水道方式」の2つの方法があります。直接給水方式は、給水管に増圧ポンプを設置し、水圧をかけてビルやマンションなどの中層階まで直接給水する方式です。もう1つの貯水槽水道方式は、水道水を一度、受水槽に貯めてから、ポンプを使ってビルやマンションなどの屋上にある高置水槽に汲み上げて、各世帯に自然流下によって給水する方式です。
おいしい水道水は浄水場のおかげ!
ひと昔前まで水道水は、「カルキ臭い」と敬遠する人がいて、それを取り除くために一度沸騰させてから飲む人もいました。しかし現在では、技術の発展によって、蛇口をひねるだけでおいしくて安全な水を飲むことができるようになりました。飲料水としてはもちろんのこと、調理用にも安心して使用することができるのは、浄水場のおかげなのです。「水はいつも市販のものを購入している」という人も、たまには水道水を飲んでみてはどうでしょうか?「案外いけるかも」と思うかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部