デザインや設計図などのデータをもとに、立体物が製造できる「3Dプリンター」。人間の臓器や自動車、銃などが製造できるとして、その技術力と将来性の高さが驚きをもって世界中に伝えられています。
この3Dプリンターの技術を活かしたのが「フード3Dプリンター」です。「これさえあれば、料理人もレシピ本もいらない」というのですが、実際にはどのようなものなのでしょうか?
今回は、「フード3Dプリンターとは何か?」についてご紹介します。
フード3Dプリンターってなに?
まず、普通の3Dプリンターについて説明します。3Dプリンターとは、コンピューターが設計図や仕様書のデータを読み込んで、金属や樹脂などの材料から、データ通りの立体物を作成するプリンターのことです。データと材料があれば、フィギュアやアクセサリー、工具や部品など、いろいろな立体物を作り出すことができます。それは人体にも及んでいて、最近ではオーストラリアで3Dプリンターで作られた脊椎骨の移植手術が世界で初めて成功し話題になりました。
3Dプリンターは食品の製造にも対応でき、すでに複数の企業が食品用の3Dプリンターを開発しています。それがフード3Dプリンターです。フード3Dプリンターとは、ペースト状にした材料を食材用のカートリッジの中に詰め込むだけで、あらかじめ入力しておいたレシピのデータ通りに調理してくれるという製品です。対応できるレシピにはまだ限りがあり、現状ではクッキーやピザの生地、スコーン、和菓子などにとどまっています。しかし、手作業で作る場合、形や大きさ、厚みに多少のバラつきが出てしまいますが、フードプリンターならデータ通りに製造できるため、動物の形のように手間がかかる複雑な形であっても、同じものを均一かつ大量に作ることができます。
これがさらに発展すれば、高級フレンチや料亭の料理などを料理人なしに家庭で作ることができるようになるでしょう。そうなったとき、レストランなどの外食産業の営業形態が大きな変化に見舞われるだろうと言われています。
食べ物に印刷できるプリンターとは?
3Dとは言えませんが、食べ物に文字や絵柄をプリントする「フードプリンター」もあります。こちらのほうが「プリンター」という概念により近いでしょう。ケーキやクッキー、マシュマロ、どらやきなどの表面に、ロゴやイラスト、写真などが印字されているのを見たことがある人はいますか?それがフードプリンターです。
それまで食品にロゴやイラストを印字するには、専用の焼き印やハンコを使う方法が取られてきました。しかし、焼き印の場合、型を作るのに数万円の費用がかかったり、色が単色しか使えなかったり、食品が焦げ付いてしまうといった問題がありました。食品に直接文字や絵柄をプリントできるフードプリンターは、食べられるインク「可食インク」を使用したインクジェット方式になっているため、通常の紙へ印刷するのと同じように、食べ物に印刷することができるのです。そのため、細かい絵柄や、複数色のデザインなども印刷することができます。また、機械で印刷を行うため、焼き印やハンコを使用するよりも、印刷速度が短時間で済み、かかる費用も抑えることができます。また、PCで取り込んだイラストや写真の印刷もできます。
たとえば、2人の思い出の写真を菓子などに印刷し、結婚式の引き出物として使用するカップルや、菓子に企業のロゴやイメージキャラクターを印刷して、イベント時などのPR配布用に使用している企業もあります。
フードプリンターの進化
フード3Dプリンターの研究が進んでいます。フード3Dプリンターを使えば、同じメニューでも高齢者や幼児向けに柔らかさや栄養バランスなどを自由に変えて提供することができます。また、飛行機の機内食、宇宙飛行士が食べる宇宙食についても、フード3Dプリンターを活用する研究が進められています。フード3Dプリンターを導入すれば、機内食も宇宙食もバリエーションが増え、味も各段に上がるでしょう。材料の保存技術が上がれば、長期間の宇宙生活にも対応できるようになります。
食糧難の解決へ向けた取り組みにもフード3Dプリンターが役に立ちそうです。その中の一つに、「藻」や「昆虫」などの代替原料を生かすアイデアがあります。これらの代替原料でペーストを作り、フード3Dプリンターに入れれば、普通の食品と同じ見た目のメニューが出来上がります。「味は変わらない」「悪くない」「美味しい」といった評判が広がれば、代替原料を使用することへの抵抗感が低くなり、食材の幅が広がっていくでしょう。
フードプリンターが、食生活に革命を起こす!?
現在は菓子製造業など一部の間で使用されているフード3Dプリンターですが、作られるメニューのバリエーションが広がれば、私たちの食生活の在り方に大きな変化をもたらす可能性があります。自宅で手軽にレストランや料亭の味を低予算で再現できるようになれば、「わざわざ外食しなくてもいい」と考える人が増えるのは確実でしょう。実際にそんな時代が訪れたときには、飲食店は「自宅では味わえない上質なサービスの提供」「機械とは違う、人の手で作る味の良さ」を打ち出していくことになるだろうと予想されています。技術の進歩が私たちの食生活をどう変えるのか、楽しみですね!
制作:工場タイムズ編集部