発泡スチロールといえば、スーパーの食品トレイや家電製品の包装、住宅用の建材など、多くの場所で毎日のように目にします。それにしても、なぜこれほど多くの用途で使われているのでしょうか?そして、いつ頃から使われているのでしょうか?
今回は、普段何気なく目にしている発泡スチロールの知られざる万能性や用途、工場での製造方法についてご紹介します。
発泡スチロールとは?
まず、発泡スチロールの歴史と種類についてお伝えします。
発泡スチロールの歴史
発泡スチロールはプラスチックの一種です。ドイツに本社を置く世界最大の総合化学メーカー、BASF社が1951年に開発しました。その後、1954年に日本への輸入が始まり、1959年からは国内でも生産を開始しました。当初はコルクの代替品として、主に冷凍・冷蔵用として使われていました。
種類
発泡スチロールには3つの種類があり、用途によってそれぞれ使い分けられています。・EPS(ビーズ法発泡スチロール)最初に開発されたもので、表面にビーズの模様があるのが特徴です。農水産物の容器や家電の包装材として使われています。
PSP(発泡ポリスチレンシート)
納豆の容器といえば、すぐわかるのではないでしょうか。ほかにもカップ麺の容器、肉や刺し身のトレイなど主に食品関係でおなじみです。
XPS(押出法発泡ポリスチレン)
床や壁などの断熱材など、主に建築用資材として使用されます。
発泡スチロールのつくり方
次に、発泡スチロールの製造工程について説明します。
重合
発泡スチロールは石油からつくられています。まず、石油から精製された「スチレンモノマー」と呼ばれる化学物質を水中でかき混ぜることで小さな粒を作ります。この作業を「重合」といいます。重合によってできた小さな粒に発泡剤を加えることで、発泡スチロールの元となる「原料ビーズ」ができます。
予備発泡
原料ビーズは、発泡剤を含んでいて、直径は0.3〜2mm。半透明をしています。これに蒸気を当てて加熱すると膨張し、約50倍の大きさにまで膨らみます。この工程を「予備発泡」といい、予備発泡の完了したビーズを「発泡ビーズ」といいます。
成形
金型に発泡ビーズを入れ、再度蒸気を当てて加熱することで、さらに発泡ビーズが膨らみ、ビーズ同士がくっつきます。後は金型通りの形に仕上がれば、発泡スチロールの出来上がりです。もちろん、金型の形を変えれば、出来上がりの発泡スチロールの形状も変えることができます。
特性を活かす! 発泡スチロールの幅広い用途
最後に、発泡スチロールの特徴と意外な?用途についてお伝えします。
5つの特性
発泡スチロールには大きく5つの特性があり、それぞれに用途があります。
断熱性
発泡スチロールを構成する発泡ビーズは、それぞれがとても小さな「空気の部屋」で構成されています。この部屋のおかげで、外の空気が内部に伝わりにくくなっているので、外からの熱は入れず、中の熱は逃しません。そのため温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいままの状態を保つことができます。この特性を生かし、住宅の壁・床・屋根の断熱材、クーラーボックスなどに使われます。
緩衝性(衝撃を和らげること)
発泡ビーズは衝撃を吸収することに優れています。テレビやパソコンなどの家電製品を購入すると発泡スチロールで包装されたり梱包(こんぽう)されていますが、その特性を生かして商品を守っているのです。
水に強い
発泡ビーズ同士がしっかりと密着しているため水を通しません。そのため、スーパーなどで肉や魚を販売するためのトレイや水耕栽培用の育苗ベッド、浮具・海洋フロートなどに使用されています。
軽い
原料ビーズを約50倍に膨らませているため、発泡スチロールは98%が空気でできています。そのため、とても軽いのです。緩衝性に加え、軽量という特性があることから、ヘルメットのクッション材や自動車の部品などにも使用されています。
成形性
金型の形次第でいろいろな形状の発泡スチロールをつくることができます。そのためテレビのセットや造形品、イベント関係のグッズ、模型ジオラマなどに幅広く活用されています。テレビを見ているときは豪華に見えたセットも、実は発泡スチロールを加工して着色しただけだったということはよくあります。
優れた特性をいくつも持ち、環境にやさしい
発泡スチロールには優れた特性があり、それを生かしていろいろな分野で活用されています。また、発泡スチロールを燃やしてもダイオキシンが発生しないことから、環境にやさしい製品としても見直されていて、リサイクル特性にも優れています。
日本にお目見えしてから60年以上がたち、今ではすっかりなくてはならないものになった発泡スチロール。製造工程や活用方法などを解説した動画がWebサイトにたくさんありますので、興味がある人はぜひのぞいてみてください。
制作:工場タイムズ編集部