工場などで使われている設備や作られた製品は、大切に使っていくことで寿命を延ばすことができます。とくに、溶接でつなぎとめた部品などは、使い込んでいくうちに目に見えない傷や亀裂が入ります。しかし定期的な検査をすることで、その設備や製品が持つ性能を維持し、故障や事故を未然に防ぐことができます。
設備や製品の中身を検査するためには、それらを分解して検査する方法が一般的ですが、なかには分解できないものがあります。分解できないものを隅々まで検査するには、どのような方法があるのでしょうか。
今回は、溶接したあとでも調べたいものを壊さずに検査する大切な仕事について紹介します。
溶接検査って?
溶接検査は、溶接したあとに品質を確かめる検査
確かに、分解すると中身までしっかり検査できるようになりますが、なかには簡単に分解できなかったり壊してはいけないものがあります。そのようなものに対しては、分解しないで傷や劣化を検査する方法を用います。それが「非破壊検査」です。
非破壊検査には3つの目的があります。「製造技術の改良」「製造コストの低減」「信頼性の向上」です。非破壊検査を行えば製品の改善点を見つけられますし、検査時にかかる費用を抑えることができます。それは、工場で作られた製品や設備を安全、かつできるだけ長い期間使えるように、性能を確かめながら検査するからです。そうすれば廃棄物を減らすことができ、環境にやさしい工場にすることができます。製品や設備が持つ本来の性能を維持できるようにするために、保守検査のひとつとして、非破壊検査はとても重要な役割を担っているのです。
次に、非破壊検査が行われる製品や設備について説明します。まず、モノを壊さずに検査をするということから、比較的大きなもの、たとえば原子力発電所や橋、ビルなどでよく行われます。また、鉄道や航空機のように大型で簡単に分解することができない製品に対しても、非破壊検査がとても役に立っています。
非破壊検査をするお仕事って?
非破壊検査を行う人のことを、「非破壊検査員」と呼ぶ
主な仕事は、金属素材や機械の部品、金属の溶接部などを、壊すことなく、超音波や放射線などを使って欠陥がないかを調べることです。検査する箇所は、目に見えないところにも及びます。センサーの当て方を工夫しながら小さな欠陥を粘り強く、何度も検査して見つけ出していきます。こうすることで、安全に動くことを確かめ、大きな事故を防ぐのです。
非破壊検査員は、日本非破壊検査協会が出している検査業務に関する資格を持っています。初心者や未経験者の人は、先輩の検査員から指導を受けながら現場で経験を積み、検査の資格を目指すのがオススメです。
また、一般の人が入ることができない場所にも、検査のために立ち入ることがありますので、貴重な経験をすることができて、面白さとやりがいを感じられるでしょう。
非破壊検査の方法とは?
非破壊検査の方法について紹介します。主に3つの検査が行われます。
目視検査
表面などの目に見える部分については、目視検査を行います。目視検査は、非破壊検査の中で最も一般的に行われている検査です。表面に傷や亀裂がないか、ある場合はどの程度の大きさなのかを検査員の目で見て調べていきます。
放射線検査と超音波検査
放射線検査は、目に見えない部分を特殊な道具やセンサーによって見つける検査方法です。鋼管などの溶接部分に傷や亀裂がないかを調べるために、X線を調べたい物体に照らして検査します。
似ている検査方法に、超音波検査があります。超音波を当てて、「やまびこ」のような原理で検査します。つまり、高い山の上から「ヤッホー」と叫べば「ヤッホー」とやまびこが返ってくるように、超音波をモノに当てて、返ってきた反射波を画像にする検査です。反射波は「エコー」と呼ばれ、やまびこという意味です。
浸透検査
表面の傷を調べるには、浸透検査を行います。浸透検査には大きく2種類あります。磁気の性質を利用して傷を調べるのが「磁粉探傷(じふんたんしょう)検査」。もう一つは、検査液を使って傷を調べる「浸透探傷検査」です。浸透探傷検査は、検査物が金属でないもの、磁気の性質を利用できないものでも検査できるのが強みです。
これらのほかにも、電気ひずみ計を使ってモノのひずみを調べる「ひずみ測定」、熱の伝わり方を活用した「サーモグラフィ(赤外線カメラ)検査」などがあります。サーモグラフィ検査では、温度の異常を検出し製品の不具合を見抜きます。
非破壊検査が大きな事故を防ぎ、社会に安全に貢献する
私たちが使っている設備や製品は、使い続けていくうちに、どうしても劣化してしまいます。目に見える部分であれば、私たちでも異常に気付くことができるでしょう。しかし、目に見えない部分については非破壊検査で定期的に状態を調べ、必要に応じて修理することで大きな事故や損害を防ぐことができます。
非破壊検査員は、「自分が大きな事故を防ぎ、社会の安全に役立った」という経験を積み重ねられます。その意味では社会的意義が大きく、やりがいのある仕事と言えるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部